著者
下坂 智恵 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-131, 1996-05-20
被引用文献数
1

近年わが国の生活環境は大きく変化し、家庭内の衣・食生活は多様化し、さらに高齢化が急速に進む中で、高齢者をめぐる家庭生活の状況も以前とは異なってきている。そこで本調査では女性の家事行動の実態と意識について多面的に把握しようとした。女性は、食料品よりも衣料品を買いに行くことが好きとした者が多かった。また、食料品の買物、料理作りなどの食生活に関する行動よりも、衣料品の買物、手芸など衣生活に関する行動をすることで、ストレスの解消になるとした者が多かった。実際の行動としては、生活の技術といわれる食生活関連の行動の方が衣生活関連の行動よりも頻度が高かった。女性の25〜34歳では、クリスマスや子供の誕生日に特別な料理を作るとした者が多く、パンや菓子作りをする割合も高かった。25〜64歳では、年齢が高くなるにつれて食器やおしゃれに関心をもち生活を楽しもうとする傾向がみられ、買物をすることは楽しくストレスの解消になるとした者が多かった。とくに衣料品の買物でストレスの解消になるとした者が高率であった。65歳以上の女性は、他の年齢と比べて惣菜や半調理品を購入する頻度が高く、外食頻度は低かった。そして、漬物や煮豆、行事食などを作ることが多く、夕食作りや夕食の後片付けなどを楽しむ傾向がみられた。すなわち、惣菜を購入する率は高く、その一方、料理を楽しいと意識し、伝統食の手作りなどを楽しむ傾向がみられ、これらは家事の簡便化指向と同時に、余暇として楽しむという二極分化現象とみることができる。女性で年齢の高い者は低い者よりも、みそ汁や漬物作り、夕食作りを楽しいとし、食卓を飾る、盛り付けに配慮するなど食生活を楽しむ傾向がみられた。本調査から作り慣れている料理は、高齢になったときに、容易に行うことができ、楽しみとして作ることができるのではないかと考えられる。
著者
中里 トシ子 下坂 智恵 松井 能子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.216-221, 1991-08-20
被引用文献数
4

ライ麦粉添加食パンに,クエン酸カルシウムおよびレモン汁を添加したときの,パンの品質や性状について検討を行った。1.官能検査において,クエン酸カルシウムを添加したパンは,弾力の点で好まれず,硬く,ぱさついたパンであり,香りの点では対照のパンよりも好まれた。レモン汁を1%添加したパンは香りがよく,弾力の点で好まれ,やわらかく,ぱさつかないパンという評価であった。2.クリープメータによるパンの硬さでは,対照パンに比ベクエン酸カルシウムおよびレモン汁0.5%添加したパンは硬い傾向を示し,レモン汁添加量を1,2,3%と増加させるに従ってやわらかくなる傾向がみられた。凝集性では,レモン汁1%以上添加したパンは,対照より高い値を示した。硬さと凝集性の間に負の相関が認められた。3.混捏直後,1次発酵後,2次発酵後のpHを測定したところ,いずれの生地も発酵時間が進むにつれてpHは低下し,レモン汁を添加した生地のpHは,レモン汁の添加量が増加するにつれて低下した。4.ライ麦粉添加食パンの生地の膨化率を測定した結果,ライ麦粉40%添加した生地の方が50%添加したものよりも膨化がよかった。レモン汁を添加すると,生地の膨化はよくなる傾向にあるが,レモン汁を3%添加した生地は,対照とほぼ同じ値であった。5.パンの比容積は,ライ麦粉40%添加食パンの方が50%添加食パンよりも大きく,レモン汁を1%添加したパンが最も大きかった。
著者
下坂 智恵 村木 路子 江原 貴子 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.963-970, 1997-11-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

骨つきのマアジをから揚げにしてマリネ処理するときの温度の違いによる魚の物性とくに骨の硬さと成分の変化について調べ, 以下の結果を得た.(1) 官能検査において, 浸漬時間による硬さの差は, 魚肉ではみられなかったが, 骨ではマリネ処理の時間の長い方がやわらかいと評価された.(2) マリネ処理した魚の骨の硬さは, 揚げた魚を高温で食酢に浸漬した方が低温にしてから食酢に浸漬したものよりも低下の程度が大きかった, (3) 高温浸漬による酢漬魚は, 低温浸漬によるものよりも重量増加が大きく, pHの低下, 食酢の浸透が速やかで浸透量が多いことが認められた.(4) 骨つきのマアジを油で揚げて後マリネにすると, カルシウムなどの無機成分が溶出して骨が軟化していることが示された.
著者
下坂 智恵 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.135-142, 2005-04-20
被引用文献数
3

Rice flour was used instead of tapioca (starch) in pao de queijo with, cheese, milk and egg. By the use of rice flour it was expected to prepare a more desirable product with greater softness and smoothness. The preparation method and puffing behavior were investigated. The use of non-glutinous rice flour and glutinous rice flour milled in water, the ratio of the latter being up to 50%, resulted in a well-puffed product with softness and smoothness. Preparation without any powdered cheese resulted in practically no swelling, suggesting that air was entrained in the powdered cheese and participated in the puffing effect. A water content higher than 50% in the dough of pao de queijo did not allow products round in shape to be obtained. A homogeneous blend of powdered cheese and handmade dough of suitable puffability required 44-49% water in the dough. Heating milk added to the rice flour up to 90℃ allowed a larger amount of milk to be added to prepare well puffed pao de queijo.
著者
下坂 智恵 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した. 基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肱植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした. その結果,次のことが明らかになった. 1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された. 植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した. 鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた. 2物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した. 一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった. クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された. すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した. しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった. また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった. 3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさが異なっていた. 乳脂肪クリームでは,脂肪球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた. 植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた. 小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した.
著者
下坂 智恵 村木 路子 江原 貴子 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.963-970, 1997

骨つきのマアジをから揚げにしてマリネ処理するときの温度の違いによる魚の物性とくに骨の硬さと成分の変化について調べ, 以下の結果を得た.<BR>(1) 官能検査において, 浸漬時間による硬さの差は, 魚肉ではみられなかったが, 骨ではマリネ処理の時間の長い方がやわらかいと評価された.<BR>(2) マリネ処理した魚の骨の硬さは, 揚げた魚を高温で食酢に浸漬した方が低温にしてから食酢に浸漬したものよりも低下の程度が大きかった, <BR>(3) 高温浸漬による酢漬魚は, 低温浸漬によるものよりも重量増加が大きく, pHの低下, 食酢の浸透が速やかで浸透量が多いことが認められた.<BR>(4) 骨つきのマアジを油で揚げて後マリネにすると, カルシウムなどの無機成分が溶出して骨が軟化していることが示された.
著者
下坂 智恵 下村 道子 寺井 稔
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1213-1218, 1996

近年, 日本では, 骨粗鬆症の原因ともなるカルシウムの摂取量の不足が問題となっている.日本人は, 昔から魚を多く摂取しており, 骨ごと食べられる小魚は, 重要なカルシウム供給源の一つといえる.そこで本研究では, 魚の骨を利用するための基礎的な研究として, 魚の骨を水中で加熱したときの物性および成分の変化について調べようとした.マアジの骨を, 水中で数時間加熱し, レオメーターを用いて破断強度を測定した.魚骨の無機成分は, 高周波誘導結合プラズマ (ICP) 発光分析法により測定した.マアジの骨の厚さの80%まで圧縮するのに要する最大荷重は, 30分間で急激に低下し, その後も加熱時間が長くなるにつれて徐々に低下した.加熱時間が長くなるとともに, 魚骨のタンパク質は減少し, 加熱液中のタンパク質は増加した.マアジの骨は, 加熱時間が長くなるとともに軟化したが, カルシウムの大部分は, 魚骨に残っていた.水中で加熱したマアジの骨が軟化したのは, 骨のタンパク質の一部が加熱液中に溶出し, 骨の構造が変化したことによるのではないかと考えられる.
著者
下坂 智恵 下村 道子 近藤 四郎
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1103-1114, 1994-12-15
被引用文献数
12

A questionnaire survey was conducted in 1991 on 339 female college students to reveal the relationship between dietary consciousness of young women and their attitude to housekeeping. Data were analyzed by a correlation analysis and Hayashi's quantification II method. Those respondents who have not regularly prepared daily meals, but done light work expressed their desire to make cakes, bread, cushions, etc. by themselves. Many of them have learned food preparation and serving from their mothers, and making cakes from cookery books or magazines. The respondents who feel happy to dine together with their family usually attend to daily household duties and make traditional dishes at home. It is concluded that the inclination toward dining with family, which is important factor in the family bond, has been encouraged by the preparation of special dishes for the year's events at home or for the celebrations of family birthday.