著者
佐藤 治美 馬場 宏俊 下岡 正八
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.384-395, 2010
参考文献数
30

スケーリングでは各種スケーラーを用いるが,スケーラーやペリオドンタルキュレットは使用目的や部位に合わせて,刃部や頸部形態が異なる.歯科衛生士は,スケーリングを行うために部位に合わせたスケーラーを選択し,安全で効率のよい処置を行うことが求められる.本研究では,歯科衛生士学生がグレーシー型キュレットを選択する際に,キュレットの構成部の確認箇所と選択について眼球運動の測定を行い,人の認知活動について調べた.研究対象者は,日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科でスケーリングについて基礎実習のみを終了した第1学年45名(1年次生)と,基礎実習を終了し臨床実習中の第2学年43名(2年次生)の学生である.その結果,グレーシー型キュレットを選ぶ際は,1,2年次生ともにスケーラーの刃部および頸部と番号を見ていた.1年次生では刃部および頸部よりも番号を,2年次生では番号よりも刃部および頸部を多く見ており,臨床実習の経験によって注目点は異なった.正解者と不正解者との間では,刃部および頸部と番号を見るということは同じであった.正解者は早い段階で選択を決断できていた.不正解者は注目点にばらつきがあり,さまざまなスケーラーを見た結果,正解を判断できないという傾向がみられた.教育で視覚素材を用いる際には,学習者が視覚素材を教育者と同等に認知していないことに留意し,視覚素材の構成や説明に配慮の必要なことが示唆された.
著者
芳野 素子 荻原 勝 遠藤 敏哉 小林 義樹 下岡 正八
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.417-424, 2005-06-25
被引用文献数
2

日本歯科大学新潟歯学部では,平成15年4月の大学機構改革により,講座と診療科別専任の二元化を導入した.これに伴い従来の小児歯科学と歯科矯正学を一つにまとめ,顎顔面口腔形態機能育成学として新しい歯科医学教育改革に対応している.さらに,小児歯科と矯正歯科は統合され,一診療科として知識,技能および態度の共有を図っている.歯科大学・歯学部附属病院は,歯科医療の変化に対応した診療体制を構築する必要がある.<BR>そこで,小児・矯正歯科に来院した矯正患者を対象として,診療日時に関するアンケートを実施し,以下の結論を得た.<BR>1.来院動機は,平日,土曜日とも患者の休みが大きく関与していた.<BR>2.平日来院患者の来院曜日,予約曜日はそれぞれ火曜日,水曜日が最も多かった.土曜日来院患者は,土曜日以外に日曜日を希望した.<BR>3.患者が最も多い来院時間と予約時間は,平日が16時から16時59分まで,土曜日が14時から14時59分までであった.患者が最も多い来院時間帯と予約時問帯は平日が夕方,土曜日が午前であった.<BR>4.耐えられる待ち時間,診療時間は,それぞれ15分から30分未満,30分から1時間未満が最も多かった.本学附属病院の来院曜日および来院時間は患者の希望に必ずしも即しているものではなかった.診療時間は一概に短縮するのではなく,患者の満足度に対応する必要があると示唆された.
著者
大野 裕美 下岡 正八 田中 聖至 本間 裕章 馬場 宏俊
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.33-41, 2008-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25
被引用文献数
2

今回著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるかどうかを知るために,小児の性格を心理検査の一つであるTS式幼児・児童性格診断検査を用いて,依存群,標準群,自立群に分類し,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を測定した。移動角速度秒速5度未満を停留点,5度以上をサッケードとして分析し,以下の結論を得た。1.小児の顔の見方には性格が影響していることが示唆された。2.停留回数,停留時間とも依存群,標準群,自立群の順に増加した。部位別では諸部分を中心とした顔への停留が最も多く,特に自立群において増加した。3.停留点,サッケードの分布は各群とも諸部分を中心とした顔への分布が多く認められた。4.視線の走査方向には4つのタイプが認められ,自立群では繰り返し,「みる」Lookなどの規則性のある走査が増加する傾向にあった。5.依存群の顔の見方は従来の小児の顔の見方に類似し,自立群の顔の見方は成人の顔の見方に類似していることが認められた。しかし,依存群と従来の小児の見方は間違っているわけではなく,発達の一過程であることが示唆された。従って小児が何故そのような見方をしたのかを知ることは,小児一人ひとりの発達のプロセスを理解する上で重要と考える。
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.