著者
荻原 文弘 両角 達男
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.11-24, 2016-08-30 (Released:2019-01-17)
参考文献数
17

The purpose of this research is to consider students’ mathematical ideas of how the mensuration formula is deduced and how these ideas are applied in the process of first revising how to deduce the area of a circle and then trying to deduce the volume of a sphere through the teaching unit of integral calculus.  In this unit students express the process of finding the volume of a sphere mathematically and interpret it by reviewing the process of obtaining the area of a circle.  Therefore we design and practice the unit of integral calculus in order to deduct mensuration formula for circle and sphere.  We consider typical student’s activities by the qualitative method in the teaching unit of integral calculus.  Then we clarify students’ mathematical ideas and how the students apply these ideas effectively. Students’ activities through classes can be summarized into four points.  First, they expressed the description of the arithmetic textbook mathematically, which helped them interpret the area formula of a circle more deeply and give new ideas for deducing the volume formula of a sphere.  Secondly, students interpreted the process of deducing the volume formula of a sphere by connecting mathematical ideas in reproducing the area formula of a circle with transition between two dimensions and three dimensions.  Third, an encounter with a circular argument made the students recognize that they should always bear precondition in mind.  At the same time, it gave them a good opportunity to explain about their ideas to others.  Finally, students attempted to apply the ideas of the area formula of a circle and the volume formula of a sphere which were produced in the previous stage by modifying and improving their ideas.
著者
両角 達男 荻原 文弘
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,スパイラルを重視した数学的活動による学校代数の単元を開発するとともに,その単元における学習過程を質的に分析することから,代数学習の深化について考察した.開発した単元は,平方根,式と証明,数列,数列の極限,球の体積・表面積であり,学校代数の系統性と単元どうしのつながりをふまえている.これらの単元を通して,無理数に関する理解が深まるなど,代数学習の深化と学習方法の改善がみられた.
著者
宮崎 樹夫 伊藤 武廣 岩永 恭雄 両角 達男 小口 祐一 茅野 公穂
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

I 教師・子供用ホームページの作成教師用ホームページで,教師がディジタルコンテンツを,3次元動的幾何ソフトを利用したカリキュラムに基づく授業用として閲覧できるとともに,単元「空間図形」の授業に応じダウンロードできる。また,子供用ページでは,3次元動的幾何ソフトのファイルと,ソフトの利用の仕方が示された動画が教師用のページとは別の構成で位置づけられている。これは,子供が授業や家庭などで空間図形を自ら学習することを支援するとともに,学校の授業では扱いきれない発展的な内容にふれる機会を提供し,空間図形に関する興味・関心を一層高めるためでもある。なお,ディジタルコンテンツは次の4種類である:単元『空間図形』(全14時間)の展開(HTMLファイル),3次元動的幾何ソフトを利用する授業(計6時間)の指導展開(HTMLファイル),授業で利用される3次元動的幾何ソフトのファイル,3次元動的幾何ソフトの利用の仕方が示されたフラッシュムービーホームページのアドレス:www.schoolmath3d.org/index.htmII 小・中学校・高等学校における"授業レシピ"の作成3次元動的幾何ソフトは,空間図形が関わる学習内容に広く利用できるものである。そこで,小・中学校及び高等学校において,このソフトをいかすことができる学習内容を特定し,その内容に関して,授業をどのように展開すればよいのか,また,その授業のなかで3次元動的幾何ソフトをどのようにいかしていけばよいのかを"授業レシピ"のホームページとして提供している。このページでは,授業のアイデアや具体的な進め方とともに,教師が利用するとよい3次元動的幾何ソフトのファイルや,そのファイルの使い方を示した動画なども配置されている。
著者
両角 達男
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、次の2つのことがらについて、考察を進めた。(1)範例を形づくるよりどころとしての「何を志向し、何に価値をおき、何を培うのか」を具体的に明らかにしていくこと。(2)「問いの連鎖」を促す対話や協働的な活動には何があり、その諸活動が「問いの連鎖」を促進するために具体的にどのような機能をもつのかを明らかにすること。(1)については、授業実践者としての授業の反省的分析、単元に着目した「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出、代数領域に焦点をあてた「何を志向し、何を培うのか」の可能性の検討の3つの側面からの分析を行った。第一に、両角自身が筑波大学附属中学校にて行っていた10年間の授業実践記録より、範例的教授・学習の視点から浮かび上がる「範例」や「範例的なもの」の抽出と分析を行った。1組の三角定規を活用して15°の角をつくること、折り紙から1組の三角定規をつくること、地図との関連を意識した座標の学習、式を読むことを重視した文字式の学習などの事例である。第二に、小学校1年から高校1年までの必修過程に焦点をあてて、単元ごとに2〜3ずつ「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出を行った。これは、範例から「範例的なもの」を抽出していくことを意識している。第三に、式を読むことを重視した文字式の学習活動に密接に関わりのあるシンボルセンスの育成に関して、フロイデンタール研究所のDrijversの学位論文(2003)やArcabiなど、最近の代数の研究動向を分析した。DrijversはCAS (Computer Algebra System)を活用した中等教育段階の代数学習の理論的枠組みを、4つの観点の融合により形成している。その一つとして「CAS-メンタルシェマ-範例」による連続的な学習過程の形成がある。学習者が範例と出逢い、範例的なものを意識化・顕在化、了解、内的同化していく過程に迫ろうとしている。CASの活用などを通して、代数領域でどのような教授・学習が可能になり、何を培うことができるのか。範例的教授・学習理論、学習カリキュラムの形成の視座から、継続的に考察を行っているところである。連続的な研究として、平成17年度からの研究テーマとする。(2)については、浜松市立村櫛小学校の教育実践に焦点をあて、単元レベルで考察を行った。子どもたちに問いが育まれるために、単元の前半ではどのような範例が形成され、範例を起点とした学習活動が変容していくか。村櫛小の先生方との継続的な研究協議、継続的な授業参観、単元の前半部と後半部に記述する「子どもたちのはてな」の変容の分析などを通して、(2)の考察を具体例に基づき実証的に行った。