- 著者
-
並木 美喜雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.19-26, 1989-01-05 (Released:2008-04-14)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
2
1987年4月から10月までの僅か半年の間に量子力学の基礎についての国際会議が5回もあった. この年はシュレーディンガー(E. Schrodinger)の生誕百年に当たっていたこともあって, それを記念しての集会が多かった. ちなみに, シュレーディンガーは1887年8月12日に生まれている. 1987年以前にも, 1983年からの4年間に10回ほど会議が開かれていたのである. 量子力学の発足を1925年とすれば, 1985年は量子力学還暦の年であるし, 同時に先達ボーア(N. Bohr)の生誕百年記念の年でもあった. これら以外にも, いくつかの記念集会があった. たしかに, 量子力学はこの数年間に記念碑的な折り目節目を通過してきたわけだ. しかし, それだけでこれほど多くの会議は開けない. 理論的展開とともに, いやそれ以上に, 技術革新による原理的実験の発展があり, 観測問題自身が全く新しい時代を迎えつつあるからである. ここでは会議の一部を紹介すると同時に, 量子力学の原理的諸問題に関する最近の話題について語りたい. ただ, 私もすべての会議に出席したわけではないし, 話の内容も私自身の興味に偏るであろうことをお断りしておく.