著者
国吉 和子 名城 嗣明 中村 完 島袋 恒男
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学紀要 (ISSN:03884198)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-89, 1985-03-31

本研究では飲酒行動に関する心理学的研究として飲酒の実態や動機、飲酒習慣、飲酒行動に対する認知、評価の側面から質問紙調査が作成され、沖縄県内在住成人男性740人と、大学生71人計811人を対象として1983年2月〜5月に調査が実施された。その結果に基づいて本報告では職業間比較を中心に分析が行なわれた。その主な結果は次のとおりである。1)飲酒の実態 (1)全体的に好まれている酒として「泡盛」、「ビール」、「ウイスキー」に集中しているが、「泡盛」はとくに農業に、「ビール」は商業に、「ウイスキー」はサービス業に好む者が多い。「飲む機会の多い酒」や「量的に多く飲んでいる酒」に関してもほぼ類似の傾向を示している。(2)自宅外での飲酒頻度はどの職業も「月に1・2回」の回答が量も多いが全般的に職業上人間関係を重視する建設業やサービス業においては自宅外での飲酒頻度がやヽ高くなっている。(3)一方、自宅での飲酒頻度に関しては「月に1・2回」と「月に10回以上」の回答が高率になっているが、農業と会社員は後者の回答に、それ以外の職業は前者の回答に傾斜している。(4)飲酒場所としてはどの職業も「知人・友人宅」が選択されることが多いが、とりわけ農業と建設業にその傾向が強い。他の職業ではその他に「大衆酒場」や「バー・キャバレー」等にまで広く及んでいる。(5)飲酒時はどの職業においても集団飲酒の形態をとっているが、公務員と大学生を除く他の職業では比較的少人数で飲む傾向があり、なかでも農業がその傾向を強く示している。(6)飲酒時のコミュニケーションの内容はどの職業でも自分の仕事を中心にした身辺的な話題をとりあげる傾向が強い。(7)飲酒時に選択される料理には全体的に「琉球料理」と「和食」があげられるが、農業と建設業の場合とくに「琉球料理」に傾斜している。(8)飲酒時に適した音楽としては大学生を除いてどの職業も「演歌」や「琉球民謡」を選択する傾向が強い。なかでも農業の「琉球民謡」の選択率の高さが目につく。2)飲酒動機と飲酒習慣(1)初飲時の飲酒理由としては、対人的理由が顕著であるが、建設業、会社員では「つき会いで仕方なく」という消極的理由を、公務員、サービス業は、「人間関係をより良くするため」という積極的理由を選択している。(2)現在の飲酒理由としては、対人的理由の選択が減少し、「ストレス解消」という個人的飲酒理由が増加している。特に公務員、建設業において高率で選択されている。また農業において、「健康によい」という飲酒理由の選択が見られる。しかし、商業、建設業、農業、現在でも「つき会いで仕方なく」という理由を選択している。(3)農業、建設業、公務員、会社員は、「PM7:00 〜PM10:00」の飲酒時間帯を有し、商業、大学生、サービス業は、10時以後の飲酒時間帯を特徴としている。(4)飲酒時間幅では、公務員、大学生、建設業において、「3時間以上」の選択率が高く、農業は、自宅で酒を飲むことが多いということから、「1時間〜2時間」の幅を選択している。(5)農業、建設業、公務員は、軽い酒を「食前に飲む」、強い酒は「食後に飲む」という適切な飲酒習慣を示している。(6)外出飲酒では、職業柄、公務員、会社員は、「職場から直行することが多く」、肉体的労働を主とする農業、建設業は「帰宅後出直す」と回答している。(7)「宴会や会合での飲酒機会」は、公務員、会社員、サービス業などのサラリーマンに多く、建設業や大学生において少ない。まに「職場の集まり」であることを示している。(8)や会合の席においても、公務員、会社員、大学生は、「酔うぐらい飲む」と回答しており、「友人との親睦会」で久々に飲む、商業、建設業、サービス業は「酔わないようにさしひかえる」と回答している。(9)飲酒のもたらす個人的結果として、飲酒量の多いと思われる公務員、建設業、サービス業、会社員は「2日酔い」が多いと回答している。(10)酒によるトラブルは、2日酔いで仕事まで気軽に休める農業、建設業は「家族とのトラブル」を挙げ、職場の集まりでよく飲む会社員、サービス業、公務員は「仕事仲間とのトラブル」と回答している。3)飲酒行動に対する認知及び評価(1)すべての職業の人々と大学生は、日常生活において酒の必要性を「ある方がよい」と積極的に認知している。その中で、サービス業、公務員、商業等は他の職業に比べ酒の必要性の認知が相対的に強い。また、公務員、サービス業は他の職業に比べ、酒は生活に役立つと若干強く認知している。(2)気楽に酒の飲める場所として、農業は「自宅・親戚宅」、「友人宅」の私的場所を挙げている。また、商業やサービス業は他の職業に比べ、「バー・キャバレー」や「大衆酒場」等の共有的な場所を挙げる傾向が見られる。(3)酒の持つ最大の利点として、サービス業、建設業、農業は他の職業に比べ「つき合いをよくする」と認知している。反面、商業、会社員、公務員は他の職業に比べ「ストレス解消に役立つ」と若干強く認知している。(4)飲酒人口は増加傾向にあると認知され、特に会社員、サービス業はその傾向が高い。(5)認知された飲酒人口の増加に呼応して、飲酒にともなうトラブルも増加してきていると認知されている。商業や建設業は「かなり増加している」と回答し、サービス業、公務員は「いくらか増加している」と答えている。(6)飲酒者に対する社会の評価の予測として、飲酒量の多い公務員、建設業は「大目に見ている」と回答し、大学生、サービス業は「ルーズである」ときびしい評価を下している。
著者
大城 宜武 中村 完
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.4, pp.25-30, 2008-02

2002年に沖縄県在住者を対象にアンケート調査を実施、2,041人からの回答が得られた。本稿では基地と経済に関する問題を中心に分析した。数量化理論第3類による分析の結果「経済重視-基地反対」の因子、意思決定の「留保-明確」の因子を抽出した。「経済重視-基地反対」因子については、女性は20歳代、30歳代では経済重視であるが40歳代以後経済重視から基地反対に変化している。男性では20歳代から50歳代までは経済重視であるが60歳代以後は基地反対に変化している。1972年からの変化を見ると、基地と経済問題に対する意見・態度が明確でなくなっている。この30年間、基地経済を志向するよりは、反基地の志向が大勢を占めてきた。In 2002, 2,041 residents of Okinawa responded to a survey of their attitudes about the presence of US military bases and their economic benefits to the local economy. In light of the survey results, this article mainly analyzes the problems that concern the presence of these bases and the economy. We based our analyses on Hayashi's Type 3 Qualification Theory and extracted the "military-economy oriented and anti-base" factor. From our surveys, we were also able to extract the "clear and ambiguous" factor from the respondents' decision-making process. In terms of the "military-economy oriented and anti-base" factor, a certain shift in attitudes was observed: Women in their 20s and 30s were found to be "military-economy oriented," but women in their 40s and older tended to be "anti-base." Similarly, men in their 20s to 50s were found to be "military-economy oriented" while men in their 60s and older were found to be "antibase oriented." As we look at the changes from 1972, we noticed that the opinions and attitudes among people about the base and the economic issues become less and less clear. During the past 30 years, anti-base trends have come to dominate opinions favorable to the military-supported economy.
著者
大城 宜武 中村 完 芳澤 毅
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.1, pp.31-45, 2005-02

本研究は、日本復帰30年目の沖縄における住民意識について検討することを目的とする。2002年に実施されたアンケート調査で得られた2,100人分のデータについて検討したものである。戦争、自治、人権について復帰前後の変化の有無、戦争、自治、人権に対する態度と年齢との連関を中心に検討した。主な結果は以下の通りである。1.米軍基地の存在が、平和の危機、自治権侵害、人権侵害の主因であると考えるものが多い。2.沖縄に駐留する日本の自衛隊については、やや寛容な意見が多い。3.日本政府の沖縄の民生の安定に関する施策については好意的な評価がなされている。4.年齢と戦争、自治、人権の間の連関は有意であり、高年齢層は明白な態度を示し、若年層は消極的な態度である。5.日本復帰への評価は「どちらともいえない」が一番多く、積極的な肯定または否定は避けられていた。Based on a questionnaire survey conducted in September 2002 for 2,100 Okinawan subjects of five age groups (ranging from 17 to 60 years old or over), the study aims to examine their social awareness. It mainly reviewed the correlation between their attitudes toward the war, autonomy, the human rights in Okinawa and the age groups. The main results were as follows: 1. Many of them thought that the presence of the U.S. military bases in Okinawa is the primary cause of crises such as disturbance of peace, suppression of local autonomy, and violation of human rights. 2. Many of them are rather tolerant of the Japanese Self-Defense Forces stationed in Okinawa. 3. Many of them gave a favorable evaluation for the Japanese government's policies on Okinawa's social welfare. 4. The correlations among the age and the attitudes towards the war, autonomy, and the human rights are statistically significant: the higher-age bracket had explicit opinions; contrary, the youngerage layer showed less concern. 5. Many of them avoided to comment strongly on the issue of re-annexation of Okinawa by Japan: most of them answered; "it was neither good nor bad."
著者
大橋 英寿 安保 英勇 吉原 直樹 大渕 憲一 石井 宏典 中村 完
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.ボリビアのオキナワ移住地出身者が組織する関東ボリビア親睦会の参与観察、および会員の追跡調査を実施し、移民労働者の移民コミュニティの形成過程、日本と南米を結ぶインフォーマルなネットワークについて分析した。2.日系外国人労働者の人口比率が全国-高い群馬県大泉町において、日系外国人労働者の子弟教育をめぐる問題、とくに学校不適応や非行行動についてフィールド調査を行い、外国人労働者の定住化傾向が子弟に与えている影響について検討した。3.宮城県多賀城市に在住する-日系人家族について一年余にわたるインテンシブな事例研究を継続し、労働観、子弟教育問題について、家族ダイナミクスの観点から分析した。4.1990年代初頭から岡山県総社市で働く日系出稼ぎ青年の事例研究を行い、日本国内で形成された互助ネットワークとそこから析出される生活戦略について検討した。5.沖縄県において1950年代から1960年代のボリビア移民送出に関する資料を収集した。また若干名のボリビアから沖縄県への帰郷者の事例研究を実施した。6.ボリビアからアルゼンチンへ転住した沖縄系移民の独立自営過程を互助集団「講」に焦点をあてて調査研究し、その組織原理がエスニシティよりも対面関係にもとづく信頼性であることを明らかにした。7.オキナワ移住地内および周辺ボリビア人の保健行動とヘルスケアシステムを把握するために実施したアンケート調査結果の集計・分析を行った。
著者
中村 完
出版者
早稲田大学国文学会
雑誌
国文学研究 (ISSN:03898636)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.219-226, 1962-03-25