著者
吉原 直樹
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.35-47, 2014

福島第一原発が立地する大熊町では,全住民の96パーセントが「帰還困難区域」に指定され,故郷を追われている.加えて,新自由主義的な復興政策の下ですさまじい勢いで「難民化」=「棄民化」がすすんでいる.にもかかわらず,東京に拠点を置く主流メディアは真実を報道することを避け,人びとの目をフクシマからそらすことに躍起になっている.避難民は,「忘却」という暴力にさらされたうえで,「絶望の共有」(shared despair)を余儀なくされている.しかしながら決してあきらめず,自らの生存と人権をかけた復興への道を模索している.<br> 本稿では,たえず組み合わせを変えながら横に広がっていく「関係としての相互作用」を通して,剥奪された場所を回復しようとする避難民の姿を,サロンを事例にして,「創発するコミュニティ」の展開をフォローアップしながら追う.そして旧来のガバメント(統治)によるトップダウンの「統制」(control)にも,市場を介して私化された関係による「調整」(coordination)にも回収されないコミニュニティの可能性について論じる.併せて,「コミュニティ・オン・ザ・ムーブ」を契機とするコミュニティ・パラダイム・シフトの方向性について検討する.
著者
水内 俊雄 吉原 直樹 高木 彰彦 山野 正彦 野澤 秀樹 竹内 啓一 久武 哲也 水岡 不二雄
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究グループのテーマは次の3つに設定されていた。(1)地理思想、(2)地政学、(3)最近の地理学の理論的動向のキャッチアップであり、こうした成果を直ちに公刊するという課題を掲げていた。この、成果の公刊という点では、3年間の研究助成を通じ、『空間・社会・地理思想』を1号から3号まで刊行し、論説3本、フォーラム5本、翻訳22本を掲載したことを指摘しておきたい。本雑誌が人文地理学会に与えた影響は大きく、良書、良論文の翻訳が根づかないといわれた中で、欧米の地理学会を代表するハ-ヴェイ、ソジャ、グレゴリーを始め、多くの地理学者の近年の成果を翻訳し、他の諸学問において空間論へのまなざしが強くなっている中、地理学での理論的議論を深める基礎を提供したと考えている。特に、2号ではハ-ヴェイ特集、3号ではジェンダー地理学特集を組んだ。こうした翻訳のみならず、政治地理学と唯物論の関係、批判的地理学とは、社会問題に対する地理学の貢献、フ-コ-の空間論の地理学への影響、地政学研究の課題といった理論的研究動向が整理された。日本の地理思想での貢献として、福沢諭吉の地理的研究の書誌学的系譜が明らかにされ、日本の経済地理学の思想的動向と批判的地理学との関係も学史的に明らかにされた。海外に関してもIGUの地理思想史研究委員会の活動も学史的に明らかにされた。こうした本研究グループの活動を通じて、研究分担者によって『ドイツ景観論の生成』、『空間から場所へ』という2つの著書が公刊されたことも、その貢献として強調しておきたい。
著者
大橋 英寿 安保 英勇 吉原 直樹 大渕 憲一 石井 宏典 中村 完
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.ボリビアのオキナワ移住地出身者が組織する関東ボリビア親睦会の参与観察、および会員の追跡調査を実施し、移民労働者の移民コミュニティの形成過程、日本と南米を結ぶインフォーマルなネットワークについて分析した。2.日系外国人労働者の人口比率が全国-高い群馬県大泉町において、日系外国人労働者の子弟教育をめぐる問題、とくに学校不適応や非行行動についてフィールド調査を行い、外国人労働者の定住化傾向が子弟に与えている影響について検討した。3.宮城県多賀城市に在住する-日系人家族について一年余にわたるインテンシブな事例研究を継続し、労働観、子弟教育問題について、家族ダイナミクスの観点から分析した。4.1990年代初頭から岡山県総社市で働く日系出稼ぎ青年の事例研究を行い、日本国内で形成された互助ネットワークとそこから析出される生活戦略について検討した。5.沖縄県において1950年代から1960年代のボリビア移民送出に関する資料を収集した。また若干名のボリビアから沖縄県への帰郷者の事例研究を実施した。6.ボリビアからアルゼンチンへ転住した沖縄系移民の独立自営過程を互助集団「講」に焦点をあてて調査研究し、その組織原理がエスニシティよりも対面関係にもとづく信頼性であることを明らかにした。7.オキナワ移住地内および周辺ボリビア人の保健行動とヘルスケアシステムを把握するために実施したアンケート調査結果の集計・分析を行った。
著者
吉原 直樹
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_52-1_57, 2015-01-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
8
著者
長谷川 公一 吉原 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9・10年度は、おもに地球温暖化問題、エネルギー問題への取り組み、とくにCOP3以降の、環境NGOおよび地方自治体の役割を中心に、主要政令指定都市で調査を行った。ただしゴミ問題やリサイクル問題などと比較して、自治体とNGOのコラボレーション(対等な協働関係)の本格的な展開は今後の課題である。生協のような消費者団体、とくに生活クラブ北海道が中心となって1999年度から電気料金の5%相当分をグリーン料金として拠出しあい、その資金を風力発電事業に投資しようとする「グリーン電力料金」の運動は、消費者として電力会社および自治体に対して「意思表示」を行い、電力多消費的な自分たち自身のライフスタイルを見直し、節電の経済的動機づけをはかろうという新しいスタイルの運動として注目される。平成11年度は、主に東北・北海道の町村レベルでの風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギー開発を中山間地域での地域おこしと結びつけようとする先進的な取り組みについて関係者への聴取調査、資料収集を行った。原子力開発のメッカだった東海村では、99年9月のJCO臨界事故を契機に、行政・住民の原子力に関する不安感、国や県の原子力行政に関する不信感が高まっており、人口1万人規模の東北の中山間地域の内発的な地域おこしをモデルとした地域づくりへの転換が模索されている。以上をもとに環境問題における市民的公共性の新しい担い手として、環境NGOを位置づけなおし、その新しい存在意義を考察し、論文にまとめた