著者
大田垣 洋子 米澤 治文 志和 資朗 斎藤 浩 中村 研
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.225-231, 2005
参考文献数
22
被引用文献数
1

摂食障害患者103例について自尊感情と摂食態度,感情状態,罹病期間,BMIとの関連をローゼンバーグの自尊感情尺度,EAT,BITE,POMSを用いて検討し,さらに病型間の自尊感情の比較を行った.摂食障害患者の自尊感情は,摂食態度や感情状態との関連を認めたが,罹病期間やBMIとの関連は認めなかった.また重回帰分析において,自尊感情と摂食態度との関連が確認された.病型間の比較では,ANではむちゃ食い/排出行動のある群,BNでは排出行動のない群で自尊感情が低かった.摂食障害の本質として自己同一性の確立を巡る葛藤があり,この葛藤をうまく解決できないため自立が困難となり自己評価が低下し,その無力感や絶望感を体重のコンロトールによって処理し達成感を得ようとしていることはよく知られている.自己評価の基準は一般的な社会の中でコンセンサスが得られている価値よりも,むしろ自分自身がもっている価値ないし理想とされる.
著者
中村 研一 本田 宏 清水 敏行 佐々木 隆生 遠藤 乾 松浦 正孝 川島 真 宮脇 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、地球市民社会に関する共同研究である。研究の実施過程で、ロンドン大、ケンブリッジ大、ダッカ大、韓国高麗大など各国研究者と研究打合せを実施し、地球市民社会に関する理論枠組をテーマとした研究会を行った。また、地球市民社会研究の基本資料として、市民社会、地球市民社会の二次文献を体系的に収集した。近代史を顧みると、政治的意志を持ち、それを表現する市民/個人、およびそのネットワークと運動体は、国家や地域、そしてそれらの境界を超えた国際的な舞台においても、政治的変革と規範形成の役割を果たしてきた。さらに民主主義が普遍化した今日、市民/個人は、国家や自治体においてのみならず、世界においても、決定的な重要性をもつものである。なぜなら、およそ人間行動に必要とされる統一的な決定や価値配分を正統化しうる主体は、市民あるいは個人の集合としての民衆以外にはないからである。ただし、一九七〇年代頃までは、世界政治は国家政府機構を主体とし、世界経済は営利企業が支配してきた。しかるにこうした趨勢は、二〇世紀末の世界において転換を示し、非国家組織(NGO)および市民運動・社会運動が、政府組織、営利企業に対比し、「第三の力」(アン・フロリーニ)と呼ばれている。さらには、世界政治において、国家アクターからNGOへの「パワーシフトが生じている」(ジェシカ・マシューズ)という大胆な議論まで、現れるにいたった。もはや地球市民社会が無視し得ないことは明瞭である。二一世紀初頭の世界において、市民とその地球的ネットワークが、現実政治のなかでどれほど政治的役割を果たしているのか。また、どれほどの政治的役割を担うことが可能であるのか。さらにどこまで、どのような役割を演じるのが適切なのであろうか。これらの問いに答えることが、本研究の課題となった。また本研究では、韓国、台湾、バングラデシュ、日本など、アジアにおける市民とNGOの考察が、重要な一本の柱となっている。市民という概念が生まれ、また地球市民社会が最初に興隆した西欧と対比して、アジアの政治経済風土においては、市民や個人、そしてNGOの果たす役割は、どこまで類似し、どのように異なっているのであろうか。このような課題に取り組んだ成果の一部である論文と収集資料のリストを報告書にまとめた。
著者
長田 敏行 渡辺 昭 岡田 吉美 中村 研三 三上 哲夫 内宮 博文 岩淵 雅樹
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

体勢上レンガ積み構造に例えられる植物体に発達された内・外的刺激に独特の応答反応を示す現象の分子機構の解明を目的として立案された本研究組織において、研究期間終了にあたって次のような成果が得られた。まず、植物ホルモンのうち作用が最も広範かつ劇的ゆえ重要とされるオーキシンについて発現制御をする遺伝子を探索して得られた遺伝子は、グルタチオンS-トランスフェラーゼをその翻訳産物と同定したが、これはオーキシン制御の遺伝子で機能の同定された最初であった。また、やはりオーキシン制御の遺伝子で細胞増殖に関っていると推定されるGタンパク質のβ-サブユニット様の遺伝子も同定したが、これは植物で初めてのGタンパク質関連遺伝子であり、タンパク質Cキナーゼを介する新しい信号伝達経路の展開を予測させたが、同様な展開は蔗糖により誘導されるβ-アミラーゼでも、Ca依存タンパク質キナーゼの介在を予測させ、斯界に本邦発の情報として貢献できたといえる。また、植物ホルモンが形態形成に果たす役割についても遺伝子の同定がなされた。一方、植物への病原菌の感染に伴う応答機構については、エリシターに対応する受容体の同定、中間で作用するホスホイノチド代謝経路の推定もなされ、病原菌抵抗性植物の再生も試みられた。さらに、植物ウイルスであるタバコモザイクウイルスの感染に関しては、ウイルスの複製酵素領域が抵抗性を支配していること、またウイルスの細胞間移行に関する30kDaタンパク質のリン酸化が抵抗性に関与していることも示された。なお、本研究グループで広く用いられたタバコ培養細胞株BY-2は、高度な同調化が可能ということで世界18ヶ国で使われるにようなったが、その流布にあたっていは本研究グループが大いに貢献してた。