著者
千田 有紀 中西 祐子
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究プロジェクトでは、デートDVへの取り組み、とくにキャンパスでどのように取り組んでいるのかを調査することによって、日米の取り組みと暴力観を比較することが目的としていた。調査の結果、(1)アメリカのキャンパスの取り組みの中心を占めるのが学生寮であること、(2)これは学生寮があるという必要に迫られているからでもあるが、またさまざまな取り組みを浸透させやすくもしていること、(3)ただ啓蒙をおこなうのではなく、学生とセンターやNPOを結ぶ「リーダー」を育成し、学生の主体性を作り出すことが必要であること、(40プログラムは具体的であり、ただ一方的に「加害者」を批判したり、「被害者」の心がけを求めたりするものではなく、大部分の「傍観者」を暴力防止に巻き込んでいくのかに焦点があてられていること、(5)たんに暴力を防止するだけではなく、「正しい男性性」などの定義を変容させ、暴力を取り巻くメディア環境を含め、文化に多くの注意を払っていること、などが明らかになった。
著者
石川 由香里 杉原 名穂子 喜多 加実代 中西 祐子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部・生活学科編 (ISSN:13482572)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.79-107, 2004-03-31

The purpose of this study is to clarify the effects of parenting during child socialization on the following three points. First, describing the transformation of parents' educational awareness and their behavior toward their children as the child grows. Second, whether parents' educational awareness varies according to locality. Third, how gender problems occur. In this paper, we report in four parts : parents-child relationship, parents' educational behavior, parents' thinking of desirous character for their child's future, and parents' educational experience. We relate these themes with children's degree, their locality and gender. Concerning gender, we analyze differences in parents' educational consciousness or educational behavior according to the child's sex. Further, we show that the mother's consciousness of gender is itself prescribed by her social class and educational qualifications, moreover there are correlations between the mother's educational career and her type of work. In different social classes, if people show variation in their awareness of children's education, whether it will be connected to the reproduction of social class.
著者
中西 祐子
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

戦後日本のアメリカ移住女性たちが、移住後、日系ネットワークをどのように活用しているかを考察するために、サンフランシスコ・ベイエリア内における各種日系ネットワーク関係者へのインタビューと、アメリカ移民全体の傾向を把握するためにThe New Immigrant Surveyの公開データの二次的分析を行った。日本人女性たちの間には起業を支援するようなエスニックな経済資本は見られなかったが、日常生活を支えるエスニックな社会関係資本の利用が見られた。彼女たちの互助的ネットワークは、日本では家族・親族が担ってきた育児期の相互支援や高齢者介護に至るまで「強い紐帯」的な役割を果たしていた。
著者
中西 祐子
出版者
武蔵大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では「doing gender(ジェンダーをする)」という概念に着目し、学校・職場内において、人々が自らのジェンダー/セクシュアリティを、自ら意図的に、あるいは他者から意思に反して構築する/されることがどのようなメカニズムで起きているのかを検討した。本研究では、人々のジェンダー/セクシュアリティというものが、アプリオリに存在しているのではなく、ある場面で行為者間の間で持ち出されることによって作り出されているのではないか、という理論的立場をとっている。たとえば、セクシュアル・ハラスメントに代表されるような学校・職場のトラブルは、文脈を無視して突然「ジェンダーをする」ことが持ち出される現象の典型例である、と考える。本年度行ったのは次の4点である。(1)国内外の先行研究の収集、(2)アメリカ社会学会参加と「ジェンダーの構築」に関連する最先端の研究動向の把握、(3)大学生を対象にアルバイト先でのハラスメント経験についての質問紙調査、(4)大学生を対象にアルバイト先でのハラスメント経験についてのインタビュー調査(継続実施中)。なお、平成20年度中に、これまでの研究をまとめた成果を論文として発表する予定である。ここまでの知見を簡単にまとめると、(1)アルバイト先でのハラスメント経験者は量的にはごく少数であるが、お客や上司からのハラスメントを経験しているものは存在している。(2)経験者の中で、その場で表立って文句をいったものは皆無であり、(3)「相手がお客さんだからはっきりと拒否するわけにはいかない」「相手が上司だからあまり強くいえない」という理由から、何とかその場をうまく「やり過ごす」/「取り繕う」ことにむしろ力点が置かれていることがわかった。これは、突然構築された「ジェンダー/セクシュアリティ」が、「客と販売員」「上司と部下」という別な文脈で消去されようとするプロセスといえるのではないだろうか。