著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 梅村 孝司 藤田 正一 前出 吉光 中里 幸和 高田 礼人 岡崎 克則 板倉 智敏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏胚の奨尿膜を超音波破砕し、その可溶性画分をニワトリの静脈内に注射した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって抑制されたことから、本因子は血液凝固に関与する物質と推定された。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーおよび塩析法によって病原性細胞因子を濃縮精製する系を確立し、粗精製致死因子をマウスに免疫して、モノクローナル抗体11クローンを作出した。ニワトリの鼻腔内にインフルエンザウイルス強毒株と弱毒株を実験感染させ、経過を追及した。強毒株はウイルス血症を起こしたが、弱毒株はウイルス血症を起こさなかった。すなわち、強毒株を接種したニワトリでは全身臓器の血管内皮細胞でウイルス増殖が起こり、血管炎を招来した。強毒株の標的が血管内皮細胞であることが明らかになった。損傷した血管内皮細胞から血液凝固因子ならびにサイトカインが放出された結果、汎発性血管内血液凝固を起こし、ニワトリを死に至らしめるものと結論した。この成績はインフルエンザウイルス感染鶏胚奨尿膜から抽出した細胞因子がニワトリに血管内凝固を起す事実と一致する。汎発性血管内血液凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たすものと考えられる。ウイルス感染症の治療法を確立するため、本致死因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。
著者
Syakalima Michelo CHOONGO Kennedy 中里 幸和 小沼 操 杉本 千尋 坪田 敏男 福士 秀人 吉田 光敏 板垣 匡 安田 準
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.315-318, 2001-03-25
被引用文献数
9

ザンビア国カフエ川湿原で, 銅鉱山排液が混入するロッキンバー及びブルーラグーン国立公園に生息する野生生物, 重金属被爆がもたらす環境危険因子について食物連鎖解析を行った.ここでみられる食物連鎖因子は, 水, 魚, 植物(草).カフエレチュエ(Kobus Leche Kafuensis)であり, 重金属は, 銅, 亜鉛, マンガン, 鉄である.銅は水:0.03-0.04, 魚3.0-6.0, 草11.0-44.0, レチュエ肝臓:痕跡-199.0であった.亜鉛は水:0.01, 魚32.0-82.0, 草:15.0-21.0.レチュエ肝臓:52.0-138.0であった.マンガンは水:0.15-0.16, 魚:7.0-18.0, 草:51.0-1450, レチュエ肝臓:40.0-53.0であった.鉄は水:0.13-0.14, 魚:26.0-134.0, 草:1766.0-1797.0, レチュエ肝臓:131.0-856.0であった.濃度単位は水がmg/l, その他の試料はmg/kgである.水以外の全ての因子で重金属濃度が高かったが, 毒性は裏づけられなかった.