著者
中野 賢
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

分子通信とは、化学信号や化学反応を利用したバイオナノマシンのための通信方式であり、近年、情報通信分野において、新しい通信技術として注目を集めている。本研究では、様々な分子通信方式の設計や性能評価、および、応用設計や概念実証を行い、分子通信を通信の技術として確立することを目標としている。また、IEEEのワーキンググループと協力をして、分子通信方式の国際標準を策定することも目指している。この目標にむけて、初年度となる平成29年度には、以下の研究を実施した。・分子通信の医療応用の検討:細胞等で実装するバイオナノマシンが分子通信を介して協調的に動作し、標的となる腫瘍細胞の検出や治療を行う協調型ドラッグデリバリ方式について検討した。このような協調型ドラッグデリバリ方式の数理モデルを構築し、数値シミュレーションによって、提案方式の性能を調査した。また、概念実証のための実験系の設計、顕微鏡観察のための実験環境の構築、生細胞を利用した予備的な実験を行った。・分子通信方式の設計と評価:分子信号の時間変化(波形)を利用して情報を伝播する、新しい分子通信方式を提案した。従来の通信方式のように搬送波の振幅や周波数を利用して情報を伝播するが、化学反応の結果に生じる複雑な形状の信号波形を利用することで、一つの波形に複数の振幅や周波数を載せて情報を伝播できる通信方式を考えた。また、分子信号が伝播する方向を制御するためのチャネルスイッチの設計や計算機シミュレーションによる性能評価も行った。
著者
中野 賢英 福成 信博 坂上 聡志 西川 徹 相田 貞継
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.148-153, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
15

医療の技術革新が進む中で,甲状腺濾胞性腫瘍はいまだその診断が非常に難しい疾患の一つである。病理学的診断方法の特殊性もあり,確立した術前診断方法は得られていない。一方で,新しい技術の開発や様々な評価法の検討が,正診率の向上に寄与していることも事実である。画像診断はその中でも重きを置かれる分野であり,超音波検査を筆頭に多くの知見が得られているが,現状では,画像所見だけではなく,臨床経過,細胞診結果,サイログロブリン値などの臨床検査結果を踏まえて総合的に検討し,治療方針を判断する必要がある。今後より正確な診断が可能となるよう,さらなる知見の積み重ねが期待される。
著者
中野 賢太郎
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:若手研究(B)2010-2011
著者
中野 賢太郎
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多くの細胞の機能発現においては、細胞の極性情報が重要である。例えば、神経軸索では方向性を伴った細胞の極性成長が、その活動に不可欠である。また細胞極性情報をもとに上皮細胞は組織を形成することができる。本研究では、細胞形態が最もシンプルでよく調べられている分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを研究対象に用いて、細胞極性情報の発信と、その下流での細胞形態の形成機構について研究を行った。これまでに私たちは分裂酵母の低分子量Gタンパク質Rhoとその活性制御因子について解析してきた。それらのうち、Rga4がCdc42のGTP加水分解活性を促進することに着目した。米国カルフォルニア大学の塩崎研究室の建部恒博士らとの共同研究により、Cdc42は極性成長をしている細胞端に強く集積することが確かめられた。同時に、Rga4は細胞の胴体部分に集積し、細胞端への局在性が排除されていることが観察された。このRga4の局在様式にはPom1キナーゼが関わる可能性が示唆されている。以前から、pom1遺伝子変異株では分裂酵母の両極性の成長が単極生成長に置き換わることが知られていたが、この原因は不明であった。興味深いことに、今回の建部博士との研究により、pom1遺伝子変異株においてRga4の活性を抑制するとCdc42の局在が単極性から両極性に回復することが判明した。つまり、Pom1はRga4の局在性を制御することでCdc42の細胞端への局在様式を調節していたと考えられた。Pom1は微小管細胞骨格系の支配下でその局在様式が決定されること、Cdc42はアクチン細胞骨格の形成制御に中心的な役割を果たすことを併せると、本研究成果は微小管からアクチン細胞骨格へ、細胞内の空間的構造を配置化する分子機構の一端を解明した点で重要である。