著者
榊原 巌
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.265-269, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
12
被引用文献数
4 6

漢方製剤が薬価に収載されてすでに30年以上が過ぎ,医療の現場においても漢方製剤が治療アイテムとして定着してきている.また,15改正日本薬局方において初めて6処方の漢方エキスが収載され,医療用医薬品の地位を固めつつある中,その品質保証の面で,科学の進歩に合わせたより高度な分析評価が望まれるようになってきている.一方,欧米においては補完代替医療(CAM)の考え方が定着し,多くのサプリメントが普及されるようになってきている.その中,アリストロキア酸含有生薬が配合された製品が引き起こした腎障害事例,エフェドラによる脳出血の事例など,ハーブによる様々な問題も表面化されるようになり,植物薬の品質管理面での社会的な要望が高まりつつある.米国FDAならびに欧州EMEAでは植物薬の品質評価として“フィンガープリント”を提唱している.この流れを汲み,漢方製剤の国際化も考慮し,“漢方製剤の3Dフィンガープリント評価法”を確立した.本評価法は原料となる生薬および製品である漢方製剤の双方の品質評価に有用であり,特に配合する生薬の品質が最終製品である漢方製剤の品質を左右することから,より均一な漢方製剤を提供するためには原料生薬レベルでの品質の安定化を図る取り組みが重要となる.またフィンガープリントによる同等性評価としての新たな試みとして,統計学的な手法を用いたパターン認識法による同等性の解析評価法を開発した.漢方製剤を高次なレベルで評価する取り組みが今後,益々重要視されてくる.
著者
木庭 慧 竹内 啓恵 上原 巌
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

内閣府の調査(2011)によると、森林へ行く目的は「優れた風景、景観を楽しむ」との回答が最も多く、人がどのような森林景観を好むかを把握することは重要である。 そこで本研究では、森林において快適さを感じさせる要素のひとつであり、林相によって異なる色彩を切り口に、人がどのような色彩の森林を好むのか考察した。 調査は林相の異なる6プロットと、対照区(東京農業大学構内、和泉多摩川河川敷)において、写真撮影とアンケートを実施した。撮影した画像は代表色を抽出し、RGB値の三次元グラフ内での分布から色の豊かさを考察した。アンケート調査では、回答からプロット毎に全体の好感度と色の好感度を算出した。 その結果、林内では色の好感度と全体の好感度とで正の相関関係が認められたほか、対照区に比べ林内のプロットの方が、色の好感度が全体の好感度に影響を与えていた。 林相では、常緑樹林と対照的に落葉広葉樹林の好感度、色の豊かさが高く、より好まれることがわかった。一方の常緑樹林は、好感度と色の豊かさが共に低かったが、落葉広葉樹林を引き立てる重要な役割があり、両者のバランスが快適な林内景観を造る鍵になると示唆された。
著者
渡邊 裕太 上原 巌 田中 恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.226, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

一般に樹木菌根は土壌中で菌が根に感染することで形成され、養分の受け渡しをするなどの役割が知られている。これらの働きは実生の生残や成長にも重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、実生への菌根菌感染はいつ行われ、どのような菌根菌相を持つのか明らかにするために、有用広葉樹であるミズナラ実生を対象として調査を行った。東京農業大学奥多摩演習林と山梨県小菅村鶴峠付近のミズナラ林で2015年2月からミズナラ実生を採取した。採取した実生の根から菌根の特徴ごとに形態的分類を行いその後DNA解析による菌根菌の種推定を行った。実生1本あたりの菌根数は100~200個程度が多く見られた。一方感染していなかった個体は1本のみで他はすべて感染が確認された。これにより自然下ではほぼ確実に菌根菌に感染すると考えられる。未感染の個体も発芽後あまり時間がたっていなかったためであると思われる。今回確認された菌種は、Tomentella、Russula、Sebacina、Cenococcum geophilm、Laccaria、Lactarius、Inocybe、Amanita 等に属していた。
著者
上原 巌
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.49-53, 2019-06-01 (Released:2019-07-09)
参考文献数
7
著者
上原 巌
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p> 米国ミシガン州立大学(Michigan State University : MSU)は、1855年の創立で、アメリカ初の州立農学校が前身である。MSUの林学科(Department of Forestry)は1902年の創設され、全米の森林・林学関係学科の中でも古い歴史を有している。そのMSU林学科において、2017年8月~10月までの2か月間、講義、実習を担当する機会があったので、その内容を報告するとともに、日米における森林アメニティ、森林療法に対する学生の意識の差異なども考察し、報告する。 担当した講義名は、「FOR491 Forest amenities and forest therapy」であり、2017年の新設科目である。履修単位(credit)は3単位。FOR491は、履修番号を表し、学部高学年での履修が望ましいことを示す。講義は、月、水、金の3回あり、1回の講義時間は、50分であった。また、講義の時間および、時間外にMSU学内の研究林や緑地においてフィールド実習も行った。 履修生は、林学科の他、教育学部(特殊教育)、社会福祉学部の学生であった。森林療法はアメリカにおいて大きな可能性を持っているということが、学生の共通した感想であった。</p>
著者
遠藤 秀紀 小原 巌 吉田 智洋 九郎丸 正道 林 良博 鈴木 直樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.531-538, 1997-07-25
被引用文献数
8 17

国立科学博物館に収蔵されているニホンオオカミ (Canis hodophilax TEMMINCK 1839)の頭骨3例を用いて骨計測学的検討を行い, 秋田犬との比較を試みた. また, CTスキャンを用いてニホンオオカミの頭蓋骨, 特に前頭骨領域の内部形態を非破壊的に観察したので報告する. 骨計測の結果, ニホンオオカミと秋田犬では最大頭蓋長に有意差はなく, 同サイズの集団間比較を行っていることが確認された. 一方, 最小前頭幅と両眼窩間最小距離の最大頭蓋長に対する割合は, ニホンオオカミで有意に小さく, 同種の前頭骨の発達が悪いことが示唆され, 前頭骨の平面観と側面観からも同様の結果が得られた. しかし, ニホンオオカミにおいてこれまで注目されてきた下顎第一後臼歯長の最大頭蓋長に対する比率には, 二者間で有意差は見られなかった. CTスキャンによる傍正中断像では, ニホンオオカミの前頭洞は, 発達の悪い前頭骨に応じて狭く, 特に背腹方向ヘ圧縮されていることが明らかになった. また, 三次元腹構の結果, 複雑な櫛板の構造が確認された. ニホンオオカミは, 1905年以来捕獲例のない絶滅種である. 今後, 残された標本をCT観察し, 同種の呼吸および嗅覚機能に関する検討を進めることが期待される.
著者
榊原 巌
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:13478397)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.265-269, 2008-11-01
参考文献数
12
被引用文献数
6

漢方製剤が薬価に収載されてすでに30年以上が過ぎ,医療の現場においても漢方製剤が治療アイテムとして定着してきている.また,15改正日本薬局方において初めて6処方の漢方エキスが収載され,医療用医薬品の地位を固めつつある中,その品質保証の面で,科学の進歩に合わせたより高度な分析評価が望まれるようになってきている.一方,欧米においては補完代替医療(CAM)の考え方が定着し,多くのサプリメントが普及されるようになってきている.その中,アリストロキア酸含有生薬が配合された製品が引き起こした腎障害事例,エフェドラによる脳出血の事例など,ハーブによる様々な問題も表面化されるようになり,植物薬の品質管理面での社会的な要望が高まりつつある.米国FDAならびに欧州EMEAでは植物薬の品質評価として"フィンガープリント"を提唱している.この流れを汲み,漢方製剤の国際化も考慮し,"漢方製剤の3Dフィンガープリント評価法"を確立した.本評価法は原料となる生薬および製品である漢方製剤の双方の品質評価に有用であり,特に配合する生薬の品質が最終製品である漢方製剤の品質を左右することから,より均一な漢方製剤を提供するためには原料生薬レベルでの品質の安定化を図る取り組みが重要となる.またフィンガープリントによる同等性評価としての新たな試みとして,統計学的な手法を用いたパターン認識法による同等性の解析評価法を開発した.漢方製剤を高次なレベルで評価する取り組みが今後,益々重要視されてくる.<br>
著者
浜口 博 黒田 六郎 清水 恒雄 杉下 竜一郎 束原 巌 山本 隆一
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.3, no.10, pp.800-805, 1961
被引用文献数
5

The simultaneous determination of microgram to submicrogram amounts of molybdenum, tin, tantalum and tungsten in silicate rocks was arrived at using the Japanese neutron reactor JRR-1. A sample and comparative standard were irradiated simultaneously with a neutron flux of about 3·10<sup>11</sup>n·cm<sup>-2</sup>·sec<sup>-1</sup> for 3 days (intermittently, 5 hr each day).<br>After cooling for a day, the sample was decomposed with sulfuric and hydrofluoric acids in the presence of carriers and lanthanum hold-back carrier. Following the removal of lanthanide activities as fluorides, the fluoride complex of tantalum was extracted by isopropylacetone. Tin and molybdenum was precipitated with hydrogen sulfide from the remaining activities in the aqueous phase, to which boric and tartaric acids were added to mask hydrofluoric acid and tungstate ions, respectively. The α-benzoinoxime precipitation method was then applied for the recovery of bulk of tungsten in the filtrate from the sulfides. Further decontamination chemistry was carried out for each element.<br>The amount of the elements was estimated by comparing <sup>99</sup>Mo(67 hr), <sup>121</sup>Sn(27.5 hr), <sup>182</sup>Ta(111d) and <sup>187</sup>W(23.9 hr) β-activities isolated from the sample with those from the comparative standard. Sensitivities of the method were 1 ppm for Mo and Sn, 0.1 ppm for Ta and 0.01 ppm for W.
著者
小野 晃一 勝又 達也 菅原 泉 上原 巌 佐藤 明 Kouichi Ono Katsumata Tatsuya Sugawara Izumi UEHARA Iwao Sato Akira
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.60-67, 2011-06

森林施業に関わる野ネズミ類の役割を明らかにする一環として,林相の異なる針葉樹人工林と広葉樹二次林を跨ぐ形で林内に生息する野ネズミ類を捕獲・放獣する方法により2006年から2009年まで個体群の変動を調査した。その結果,調査対象としたアカネズミ(Apodemus speciosus),ヒメネズミ(Apodemus argenteus)の捕獲個体数は2006年9月には延べワナ数675個で157個体,422回と最高の高密度状態を記録したが,11月から急激な減少が認められ,その後は1年以上ひと月の捕獲個体が数頭という低密度で推移したことから,野ネズミ類個体群にクラッシュが生じたものと判断した。アカネズミとヒメネズミの捕獲個体数の変動を比較すると,それぞれの生息特性を反映して急減の時期に3か月の時間的差異が見られた。しかし,全体的な変動の傾向は両種とも同様の推移を示した。針葉樹林と広葉樹林での生息状況を見ると,アカネズミでは広葉樹林の利用頻度が高く,秋季から冬季にかけて針葉樹林の依存度が増す傾向にあった。ヒメネズミでは針葉樹林のみの利用個体が多いものの,年によっては夏季に広葉樹林のみ利用する個体が増加した。また,いずれの種とも両方の林分を同時に利用している個体は少ないという傾向を得た。行動範囲に関しては,高密度下では大きく,ランダムに分布し,低密度下では小さく,限定的になる傾向が見られた。