著者
浦 達也 長谷部 真 吉崎 真司 北村 亘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1925, (Released:2021-04-20)
参考文献数
34

風力発電の導入が進むにつれ、日本でも風力発電施設の存在がバードストライクや生息地放棄など鳥類へ影響を与えることが注目されている。欧州では風力発電施設の建設により影響を受ける鳥類の生息地が示された脆弱性マップが自然保護団体を中心に作成され、その活用により計画段階において影響が回避されるようになってきた。日本では風力発電施設の建設が集中する地域があらかじめ分かっているため、まずはそういった場所で地域的な脆弱性マップの作成が試みられるべきである。そこで(公財)日本野鳥の会は、風力発電の建設計画が集中し、かつ希少鳥類の生息地や渡り鳥が多い北海道の宗谷振興局西部地域で脆弱性マップの作成を試みた。脆弱性マップの作成方法について、まずは国内外の情報を収集し、次いで検討会を開催して作成方法等を決定し、検討会での決定事項に現地鳥類調査の結果を当てはめる形で作成した。脆弱性マップの作成開始時点では国内情報はなかったが、海外事例ではイングランド、スコットランド、アイルランド、ギリシャ、スロベニアのものを参考にして、作成方法を検討した。検討会では、脆弱性マップのあり方、衝突確率・回避率の取り扱い、鳥獣保護区等の取り扱い、渡り経路の取り扱い、作成対象となる鳥の種の選定方法、マップ上での脆弱性の表現、バッファーゾーンの取り扱い、脆弱性マップの更新などについて議論した。脆弱性マップ作成の対象となった鳥類は種脆弱性指標が高い種や地域重要種を中心に 23種となった。脆弱性マップは 84個の 5 kmメッシュ(面積約 2100 km2)で表現することとなり、対象鳥類の分布と一つのメッシュ上での重なり具合を考慮して脆弱性を 10段階に分け、それを 4色で表現した。その結果、希少な鳥類の生息地およびガン・ハクチョウ類の渡りが多い対象地域の西部、ハクチョウ類や海ワシ類の渡りが多い対象地域の北部が、風力発電施設による鳥類への脆弱性の高い場所であることが分かった。
著者
鄭 矩 藤井 義晴 吉崎 真司 小堀 洋美
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.475-479, 2010 (Released:2011-12-07)
参考文献数
20

オニグルミのアレロパシー活性がニセアカシアの初期生長に及ぼす効果を明らかにするために,混植実験と根圏土壌法による検定を行った。混植実験において,オニグルミとニセアカシアを混植した区では,対照区に比べて,ニセアカシアの乾物重量が約50% に低下した。また, 混植区の土壌は,1.2%×10-6g g-1 のユグロンが含まれ,ニセアカシアの初期生長を50% 阻害するユグロンの量とほぼ一致した。根圏土壌法による検定では,ニセアカシアの初期生長は根域土壌よりも根圏土壌で阻害される傾向を示し,根に近い土壌ほど生長が低下することから,根から出るユグロンが作用していることが強く示唆された。以上のことから,オニグルミが生育する土壌では,オニグルミの根のアレロパシー活性により,ニセアカシアの初期生長を阻害する可能性があることがわかった。
著者
岡 浩平 吉崎 真司 小堀 洋美
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.119-128, 2009-12-31 (Released:2012-05-28)
参考文献数
35
被引用文献数
7 5

本研究では湘南海岸沿岸域を事例として,砂丘の開発による海浜幅の縮小と生育地の孤立化が海浜植生の種組成や構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.対象地の海浜の面積と分布の変遷を把握するために,地形図を用いて3時期の土地利用図を作成した.また,砂丘の開発が海浜植生に及ぼす影響を把握するために,辻堂砂丘の開発前後の植生を比較した.その結果,対象地の海浜の面積および幅は,1921年から2006年にかけて1/3以下に減少していた.海浜の縮小は,海岸侵食の影響よりも,海浜の市街地化や針葉樹林化といった土地利用の変化の影響が大きいことがわかった.開発以前の辻堂砂丘は不安定帯→半安定帯→安定帯と変化する海浜植生の成帯構造が成立していたが,開発後は成帯構造から半安定帯が消失していた.半安定帯の消失は,砂丘の開発による海浜幅の縮小が主な要因として考えられた.また,砂丘の開発によって,砂防林よりも内陸側で海浜植生の孤立化が生じていた.このような立地では,砂防林の防風効果によって,開発後にビロードテンツキ以外の海浜植物が消失し,帰化植物や内陸植物が優占する植生へと種組成が変化したと考えられた.以上のことから,砂丘の開発は,海浜幅の縮小による海浜植生の成帯構造の破壊,生育地の孤立化による内陸植物や帰化植物の侵入を引き起こすと考えられた.
著者
吉崎 真司
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

我が国の海岸防災林は松枯れにより衰退しており、防風、防砂、防潮などの機能を十分果たすことが出来なくなっている。松枯れ後に再生すべき林相として広葉樹の海岸林を成立させることの可能性を検討した。愛知県では伊勢湾台風後に再生した広葉樹海岸林があり、静岡県遠州灘海岸林では松枯れ後に広葉樹林へと遷移する様子が観察されたが、遷移の過程は立地条件に左右されることがわかった。また、沿岸域に生育する広葉樹の塩分に対する耐性は樹種によって異なっていた。
著者
中島 勇喜 林田 光祐 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

2004年12月に発生したインド洋大津波および2007年4月に発生したソロモン諸島での津波による被害地を調査し、津波に対する海岸林の被害軽減効果を検証した。その結果、海岸林による漂流物の移動の阻止、津波の波力の減殺、よじ登り・すがりつき効果が確認できた。さらに、被害軽減効果と海岸林の組成や構造は海岸地形に大きく依存していることから、地形を考慮した海岸林の保全が津波被害軽減に有効であることがわかった。