著者
金居 督之 井澤 和大 久保 宏紀 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.91-103, 2019-09-30 (Released:2019-12-21)
参考文献数
73

本稿では,先ず海外の脳卒中患者における身体活動量研究の動向を病期別に紹介した。次に,我が国における身体活動量研究について現状と今後の課題について概説した。 脳卒中を発症しやすい集団は,発症前から不活動になりやすい。また,発症後のあらゆる病期においても同様に不活動に陥りやすい。更に,身体活動量や活動強度の目標値が示されているものの,脳卒中患者の多くはこれらを満たしていない。これらの対策として,身体活動促進や座位行動減少に焦点を当てたさまざまな介入研究が実施されている。主な介入方策としては,セルフ・モニタリングの指導,目標設定,言語的説得・奨励などの行動変容技法が用いられている。また,近年では,ウェアラブル端末等を利用した遠隔指導も注目されている。 我が国における脳卒中患者の身体活動量研究は,増加傾向にある。しかし,介入研究や長期的なフォローアップに関する研究は極めて少ない。したがって,今後は,脳卒中治療ガイドラインにおいても身体活動の重要性が提示されるべく,より質の高い介入研究が待たれる。
著者
山本 実穂 野添 匡史 大西 晶 桝矢 璃央 大澤 摩純 久保 宏紀 山崎 允 間瀬 教史 島田 眞一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11639, (Released:2019-11-27)
参考文献数
34

【目的】慢性腎臓病(以下,CKD)を合併した心不全カヘキシア症例に対して,分岐鎖アミノ酸(以下,BCAA)を含むたんぱく質摂取を中心とした栄養療法と運動療法によって身体機能の大幅な改善が得られたので報告する。【症例紹介】心不全(CKD stage3b 合併)を発症後1 ヵ月間の中心静脈栄養管理となり20 kg の体重減少を招いた。身体機能の改善を目的に理学療法が処方されたが,第76 病日時点で疲労感が強く,運動耐容能(6 分間歩行距離150 m)も低下していることからカヘキシアの状態と考えられた。【経過】BCAA を含むたんぱく質の摂取量を1.2 g/kg/ 日まで漸増し,運動療法はレジスタンストレーニングを中心に行った。約3ヵ月間で体重は8.4 kg 増加し6 分間歩行距離は557 m まで改善した。【結論】CKD を合併した心不全カヘキシア例であっても,たんぱく質摂取量を増やした栄養療法と運動療法の併用は有効と考えられた。
著者
三枝 信吾 加茂 亜里沙 稲本 あさみ 久保 宏紀 山崎 允 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12208, (Released:2022-02-21)
参考文献数
43

【目的】二次性サルコペニアを呈したTrousseau 症候群患者に対する理学療法について報告する。【対象と方法】卵巣癌の精査中に小脳梗塞を発症した50 代女性である。初期評価では,握力は右8.5 kg/左11.5 kg,快適歩行速度は0.73 m/ 秒,Skeletal Muscle mass Index(以下,SMI)は4.4 kg/m2 であり,重症サルコペニアを呈していた。分岐鎖アミノ酸を含む栄養療法でタンパク質の摂取量を漸増させ,運動療法は低負荷高頻度Resistance Training と有酸素運動を中心に実施した。【結果】最終評価では,握力は右18.9 kg/ 左19.3 kg,快適歩行速度は1.17 m/ 秒,SMI は5.6 kg/m2 と各指標で改善を認め,歩行自立で自宅退院となった。【結論】二次性サルコペニアを合併したTrousseau 症候群に対して,適切な栄養管理下の運動療法は効果的である可能性が示唆された。
著者
久保 宏紀 金居 督之 北村 友花 古市 あさみ 山本 実穂 小林 実希 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.222-229, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
37

【目的】脳内出血患者における急性期病院退院時の機能予後およびその要因を検討すること。【方法】2013年4月~2015年3月に入院となった脳内出血患者88例(男性76%,平均年齢65.2 ± 11.2 歳)を対象に,退院時modified Rankin Scale を用い予後良好群と予後不良群に群分けし,機能予後に影響を及ぼす因子およびそのカットオフ値を検討した。【結果】Cox 比例ハザード分析の結果,退院時機能予後に影響を与える因子として年齢(p = 0.008),入院時NIH Stroke Scale(p = 0.001)および離床開始日(p < 0.001)が抽出され,各カットオフ値はそれぞれ66 歳(感度:0.758,特異度:0.582),7 点(感度:0.970,特異度:0.818),2病日(感度:0.788,特異度:0.836)であった。【結論】脳内出血患者の急性期病院退院時の機能予後は年齢,重症度,離床開始日が関連している。
著者
山城 正一郎 金城 政樹 金城 忠克 仲宗根 素子 大久保 宏貴 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.111-114, 2021

<p>【はじめに】母指ボタンホール変形は,関節リウマチ(RA),外傷などに起因することが多い.両側長母指伸筋(EPL)腱,短母指伸筋(EPB)腱の脱臼から生じた特発例を報告する.【症例】59歳女性,主婦.誘因なく10年前より両母指変形を自覚し,徐々に進行した.1年前から両母指MP関節の自動伸展が困難となった.外傷歴なく,RA検査は陰性であった.両母指MP関節屈曲時にEPL腱とEPB腱が尺側へ脱臼し,左側はMP関節屈曲位からの自動伸展は不可で,左母指からwide awake surgeryで行った.関節包を縫縮して亜脱臼を整復.EPB腱を停止部で切離し,術中MP関節伸展0°屈曲45°が可能な緊張で再縫着,EPL腱と側々縫合し橈側伸筋腱帽を縫縮した.術後MP関節鋼線・ギプス固定後,術後5週で自動運動,8週から他動運動開始した.9か月後に右側の手術を行った.左側術後3年,右側術後2年3か月で両側MP関節自動伸展可能であり,変形の再発は認めていない.</p>
著者
仲宗根 素子 金城 政樹 大中 敬子 大久保 宏貴 西田 康太郎
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.8-11, 2020

外傷歴の無い内反肘変形に伴う後外側回旋不安定症(PLRI)の治療報告は少ない.両側の非外傷性内反肘で右側にPLRIを認める症例に対し,上腕骨矯正骨切りと靭帯再建術を行った.【症例】14歳男性.外傷歴なく両肘内反変形が出現.肘関節の亜脱臼,自己整復を繰り返していた.左側の亜脱臼は12歳ごろ自然に消失したが,右側は持続し,痛みを認めたため手術を予定した.肘内反角は右14 &deg; 左5&deg; ,Humerus-Elbow-Wrist angleは右-13&deg; ,左-5&deg; であった.手術では右上腕骨に対し14&deg; の外反矯正骨切り術を行い,長掌筋腱を用いて外側尺側側副靭帯を再建した.術後6か月で不安定性を認めなかった.【考察】本症例は先天性の内反変形が外側支持機構の弛緩を生じPLRIを生じたと考えられた.本症例では靭帯再建術だけでなく上腕骨矯正骨切り術を併用したことで関節不安定性が改善されたと思われた.
著者
水田 康平 大久保 宏貴 大中 敬子 仲宗根 素子 金城 政樹 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.508-511, 2020

<p>15歳女性.1年程前からバレーボール後に左手関節痛を自覚したが,安静にて症状が改善したため医療機関を受診しなかった.4か月前グランドゴルフで地面を強打した後から疼痛が増悪し,近医を受診した.単純X線像で骨傷を認めず,装具療法・安静を指示された.2か月後に疼痛の改善なく再診した.単純X線像で月状骨の圧潰を認め,ギプス固定を行うも,圧潰が進行し当院を紹介された.初診時,左手関節背側に圧痛を認め,握力は4kg(健側比22%)と低下,手関節可動域は背屈40°/掌屈10°と制限を認めた.単純X線像で月状骨の扁平化と分節化を認め,ulna varianceは-2.4mmで橈骨遠位骨端線は閉鎖していた.MRIではT1,T2強調像ともに月状骨が低輝度を呈し,Lichtman分類stageⅢ-Aのキーンベック病と診断した.圧潰の進行を認めたため橈骨短縮骨切り術を行った.術後13か月で疼痛は著明に改善.握力:22㎏(健側比117%),手関節可動域:背屈80°/掌屈80°と改善し,MRIで月状骨のrevascularizationを認めた.</p>
著者
久保 宏紀 金居 督之 北村 友花 古市 あさみ 山本 実穂 小林 実希 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11130, (Released:2016-03-29)
参考文献数
37

【目的】脳内出血患者における急性期病院退院時の機能予後およびその要因を検討すること。【方法】2013年4月~2015年3月に入院となった脳内出血患者88例(男性76%,平均年齢65.2 ± 11.2 歳)を対象に,退院時modified Rankin Scale を用い予後良好群と予後不良群に群分けし,機能予後に影響を及ぼす因子およびそのカットオフ値を検討した。【結果】Cox 比例ハザード分析の結果,退院時機能予後に影響を与える因子として年齢(p = 0.008),入院時NIH Stroke Scale(p = 0.001)および離床開始日(p < 0.001)が抽出され,各カットオフ値はそれぞれ66 歳(感度:0.758,特異度:0.582),7 点(感度:0.970,特異度:0.818),2病日(感度:0.788,特異度:0.836)であった。【結論】脳内出血患者の急性期病院退院時の機能予後は年齢,重症度,離床開始日が関連している。
著者
勝木 亮 大久保 宏貴 金城 政樹 普天間 朝上 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.376-380, 2020

<p>30歳,男性,アフリカ系アメリカ人,米軍の消防士.5か月前,バスケットボール中に転倒し,右手をついて受傷した.同日,右第2中手骨骨折の診断で,2か月間前腕ギプス固定を行われた.右手関節痛が持続し,手背部の骨性隆起を認めたため,当院を紹介された.第2中手骨基部及び手関節背側に圧痛を認めた.手関節背屈は可能だったが,抵抗を加えると疼痛が誘発された.握力は右10 kg,左42 kgと低下していた.単純X線像及びCTにて第2中手骨基部橈側の骨欠損と手関節背側に小骨片を認め,MRIで骨片に長橈側手根伸筋(ECRL)が連続し,陳旧性ECRL裂離骨折後偽関節と診断した.ECRL腱が付着した骨片を原位置に戻して骨移植を行い,tension band wiringによる偽関節手術を行った.術後4週間の前腕ギプス固定後に,関節可動域訓練を開始した.術後4か月で骨癒合が得られた.術後8か月で手関節可動域は制限なく,握力は47 kg(健側40 kg)に改善した.手関節掌背屈時痛や圧痛はなく,原職に復帰した.</p>
著者
大中 敬子 普天間 朝上 金城 政樹 大久保 宏貴 仲宗根 素子 金谷 文則
出版者
日本マイクロサージャリー学会
雑誌
日本マイクロサージャリー学会会誌 (ISSN:09164936)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.19-23, 2020

<p>Traumatic toe amputation has been rarely reported because of the limited number of cases, difficulty of the operative procedure and fewer problems with the absence of toes than fingers. We report toe amputation in 2 children. Case 1: A 15-year-old girl with crush type, Ishikawa classification subzoneⅡ, incomplete amputation of the first toe underwent revascularization with a vein graft. Skin necrosis was observed at the crush zone, and skin grafting was required after debridement and artificial dermis transplant. Case 2: A 7-year-old girl with crush type, Ishikawa classification subzoneⅡ, incomplete amputation of the fifth toe underwent revascularization. Skin necrosis was observed at the tip of the toe and the distal phalanx was resorbed partially, but the toe survived.</p>
著者
田村 淳二 世永 茂 松村 喜治 久保 宏
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.1129-1130, 2002-10-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

Recently the wind power generation has attracted special interest and many wind power stations are being in service in the world. In the wind power stations, induction machines are mostly used as a generator. Since induction machines can become unstable during a fault in power system, like a step-out of synchronous machines, it is important to analyze the stability of power system including wind generators. This paper presents a consideration on the stability of induction generators from a point of view of voltage stability.
著者
與那嶺 隆則 大久保 宏貴 金城 政樹 普天間 朝上 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.92-95, 2019

<p>39歳,男性,医学生.1年前から右示指の腫脹を,2か月前から同部位の疼痛を自覚し当院を受診した.中節レベルに腫脹・圧痛を認め,単純X線像上,中節に菲薄膨隆化を伴う骨透亮像を認めた.MRIではT1強調像で低輝度,T2強調像で内部の液面形成を伴う高輝度の腫瘍性病変を認めた.その後,腫脹と圧痛は急速に増悪し,手術直前(初診後6週)の単純X線像では中節皮質骨の菲薄化は著明に進行,一部途絶していた.創外固定器装着,腫瘍搔爬,人工骨・自家骨(β-TCP)移植術を施行した.病理診断は骨巨細胞腫による二次性動脈瘤様骨嚢腫であった.移植骨の良好なリモデリングを認めたが,術後12か月で中節基部掌側に腫瘍が再発した.再手術で腫瘍搔爬,フェノール処理,人工骨(α-TCP)充填を行い,術後はデノスマブ皮下注を行った.再手術後7か月,腫瘍の再々発はなく,可動域制限は軽度残存するが趣味のチェロ演奏も可能で,日常生活に支障はない.</p>
著者
蛯子 隼 大久保 宏貴 仲宗根 素子 川越 得弘 金城 政樹 普天間 朝上 赤嶺 良幸 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.799-803, 2018

<p>Ollier病による上腕骨変形に対する治療はMultiaxial correction systemを用いた報告が多い.これは創外固定器装着後に変形矯正が可能だが,衣服の着脱が困難で女性への適応は躊躇することが多い.単支柱型創外固定器を用いて変形を矯正し得た症例を報告する.14歳,女児.進行する左上腕変形のため,外観が気になるようになった.単純X線像で上腕骨近位約80%は内軟骨腫に占拠され,3D-CTでは健側と比較して外反65°伸展37°,内旋22°変形し,45 mm短縮していた.手術は3D-CTシミュレーション通りに骨切りを行い,変形を矯正した後,単支柱型創外固定器を装着した.仮骨延長を行い,延長量は43 mmでhealing indexは45 days/cmであった.創外固定器装着中も衣服の着脱は容易で,愁訴はなかった.最終観察時,変形は矯正され外観に満足している.</p>
著者
安倍 隆二 岳本 秀人 久保 宏 平尾 利文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
舗装工学論文集
巻号頁・発行日
vol.10, pp.119-126, 2005

本論文では, ブリスタリング現象が発生した新千歳空港の現場条件から, 室内試験によるブリスタリング現象を再現し, その現象が発生する要因を検討した. 検討結果として, ブリスタリング現象はアスファルト舗装の空隙率や試験温度に影響されることが検証できた. また, 対策工法として実施した表層に改質II型のアスファルトを適用したことや1層の施工厚を増す対策工法の効果等も併せて報告するものである.
著者
押領司 将人 大久保 宏貴 川越 得弘 金城 政樹 普天間 朝上 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.134-137, 2018

<p>50歳男性,ゴルフ場整備員.芝刈り機のエンジン部に約1時間,右前腕を挟まれて受傷した.右前腕熱圧挫傷・コンパートメント症候群の診断で,他院にてデブリドマン・筋膜切開術を施行された.受傷11日で,前腕近位の皮膚が壊死し尺骨が露出したため治療目的に当院を紹介された.2回のデブリドマン後,受傷1か月で露出した尺骨を腕橈骨筋弁で被覆し,植皮術を施行したが,感染が持続し筋弁は壊死した.受傷後2か月,尺骨の病的骨折を来したため露出した尺骨(7cm)を切除し創外固定器を装着した.感染が沈静化した受傷後5か月で遊離血管柄付き腓骨皮弁移植術を施行した.皮弁は完全生着し,骨癒合が得られた.術後1年10か月,肘関節伸展-15°屈曲135°,前腕回外55°回内60°,手関節伸展40°屈曲60°,full grip可能で原職に復帰し趣味のゴルフやバスケットボールを楽しんでいる.</p>