著者
山本 雅史 福田 麻由子 古賀 孝徳 久保 達也 冨永 茂人
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-12, 2010 (Released:2010-01-26)
参考文献数
28
被引用文献数
8 9

奄美大島の東側に位置する喜界島特産の在来カンキツであるケラジミカン(C. keraji hort. ex Tanaka)の来歴について検討した.Inter Simple Sequence Repeat(ISSR)分析において,多型が認められたバンドを用いて共有バンド率を算出した.ケラジミカンはクネンボ(C. nobilis Lour.)と最も共有バンド率が高く(0.823),次いでキカイミカン(C. keraji hort. ex Tanaka)との共有バンド率が高かった(0.688).ケラジミカンに認められた16本のバンドはすべてキカイミカンまたはクネンボにも出現した.この3者間でケラジミカンのみに出現する独自のバンドは無かった.この結果から,ケラジミカンがクネンボとキカイミカンとの交雑種である可能性は否定できなかった.葉緑体DNA分析においてはケラジミカン,クネンボおよびキカイミカンは常に同一のバンドパターンを示し,識別できなかった.いずれも自家不和合性であるケラジミカン,キカイミカンおよびクネンボ間の交雑では,ケラジミカンとキカイミカンの正逆交雑において不和合関係が認められ,両者の不和合性に関する遺伝子型が一致することが確認できた.この両者はクネンボとは交雑和合性であった.クネンボとキカイミカンがケラジミカンの親であると仮定した場合,キカイミカンが花粉親の場合に,ケラジミカンはキカイミカンと不和合性になる.以上から,ケラジミカンはクネンボを種子親,キカイミカンを花粉親として発生した可能性があることがわかった.
著者
楊 学虎 冨永 茂人 平井 孝宜 久保 達也 山本 雅史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.227-234, 2009-04-15
参考文献数
18

タンカン果実の連年安定生産技術改善のための基礎的知見を得るために、'垂水1号'を供試して、果実発育、着色、果汁成分、砂じょうの発育および呼吸活性の時期別変化を調査した。果実は7〜12月にかけて旺盛に肥大し、それには7〜11月にかけての砂じょう重の増加が大きく寄与していた。12月以降、果実肥大は低下した。じょうのう当たりの砂じょう数は7月には収穫時とほぼ同数であった。砂じょう長は8〜2月まで緩やかに増加した。砂じょうの呼吸活性は7〜11月にかけて急速に減少し、11月以降はほぼ一定であった。果皮の着色は10月から始まったが、果肉の着色より遅れた。糖度(Brix)は10月から増加し、それは主要糖であるスクロースの増加によるものであった。グルコースとフルクトースの含量は低かったが、収穫直前にわずかに増加した。滴定酸含量は8月に最高値を示した後、12月まで急激に減少した。12月以降は1%前後で推移した。滴定酸含量は果汁中で90%以上を占めるクエン酸の変化と一致した。クエン酸以外にリンゴ酸が検出されたが、リンゴ酸含量は終始低かった。
著者
大内田 弘太朗 服部 太一朗 寺島 義文 大久保 達也 菊池 康紀
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.113-122, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
44
被引用文献数
2 7

九州南端以南の南西諸島地域は,互いに電力系統が寸断されたマイクログリッドを形成しているが,その立地条件から,火力発電を行うコストや資源セキュリティの面で不利な立場に置かれている.一方,これらの島の多くに存在する製糖工場は,余剰に電力や熱を供給できる動力プラントを有しており,電力系統と連系させることで発電コストの低減やセキュリティの向上を達成できる可能性があるものの,製糖期間の短さや余剰バガスの絶対量の不足などが原因で,現状は売電を行っていない.サトウキビの品種を繊維分と反収の高い高バイオマス量品種に変更することで,製糖期間を伸ばしつつ,余剰バガスも増やせる可能があるが,これまで製糖のみを目的として設計されてきた動力プラントの再設計が必要となる.本研究では,品種と動力プラントの変更を通して,離島の電力系統と連系したバガス発電の導入効果を分析した.まず,品種や動力プラントのオプションに応じて,製糖工場のマス・エネルギーバランスを推算可能なシミュレータを開発した.現行のまま余剰電力を売電するCase A,高バイオマス量品種への品種変更と背圧式から抽気復水式への蒸気タービンの変更を同時に行い,製糖期の余剰電力を売電するCase B1,および同条件で製糖期に余剰バガスを蓄え,非製糖期にも売電するCase B2の3ケースを設定し,開発したシミュレータを用いて,原料糖,糖蜜,バガス発生量,工場のエネルギーバランス,売電ポテンシャル,および最大火力発電代替可能割合を比較した.対象とした全ての島において,Case B1, B2の場合,現状よりも原料糖生産量,売電期間,売電ポテンシャルを同時に拡大でき,南大東島では島内火力発電を最大で9.48%代替できる可能性が示された.余剰熱の有効利用や,バガスと島内の他のバイオマスの混焼,製糖工場の省エネルギー化などにより,バガス発電の導入効果は更に高まり得る.
著者
山本 雅史 久保 達也 冨永 茂人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.476-478, 2005-11-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

わが国における主要中晩生および香酸カンキツ染色体のクロモマイシンA_3(CMA)染色を行った.染色体はCMA(+)バンドの有無および位置から5種類に区分できた.すなわち, CMA(+)をA: 両端および動原体近傍に有する, B: 一方の端部と動原体近傍に有する, C: 両端に有する, D: 一方の端部に有する, E: CMA(+)がない, である.各種はこれらのうち4, 5種類の染色体を有し, 独自のCMAバンドパターンを示した.ハッサクでは1A+1C+8D+8E, ヒュウガナツでは2A+2C+5D+9E, '川野なつだいだい'では1A+2C+7D+8E, '宮内伊予柑'では1A+1B+1C+8D+7E, タンカン'垂水1号'では1A+1B+1C+8D+7E, カボスでは3B+2C+5D+8E, スダチでは1B+2C+9D+6Eおよびユズ'山根'では2B+1C+11D+4Eであった.以上の結果, 本研究においても近縁の種間では似通ったCMAバンドパターンが観察された.
著者
楊 学虎 冨永 茂人 平井 孝宜 久保 達也 山本 雅史
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.227-234, 2009
被引用文献数
2

タンカン果実の連年安定生産技術改善のための基礎的知見を得るために,'垂水1号'を供試して,果実発育,着色,果汁成分,砂じょうの発育および呼吸活性の時期別変化を調査した.果実は7~12月にかけて旺盛に肥大し,それには7~11月にかけての砂じょう重の増加が大きく寄与していた.12月以降,果実肥大は低下した.じょうのう当たりの砂じょう数は7月には収穫時とほぼ同数であった.砂じょう長は8~2月まで緩やかに増加した.砂じょうの呼吸活性は7~11月にかけて急速に減少し,11月以降はほぼ一定であった.果皮の着色は10月から始まったが,果肉の着色より遅れた.糖度(Brix)は10月から増加し,それは主要糖であるスクロースの増加によるものであった.グルコースとフルクトースの含量は低かったが,収穫直前にわずかに増加した.滴定酸含量は8月に最高値を示した後,12月まで急激に減少した.12月以降は1%前後で推移した.滴定酸含量は果汁中で90%以上を占めるクエン酸の変化と一致した.クエン酸以外にリンゴ酸が検出されたが,リンゴ酸含量は終始低かった.<br>
著者
冨永 茂人 山本 雅史 久保 達也
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

(1) 南九州~奄美大島のタンカンでは、植え付け後数年間は樹体発育を主体にするカラタチ台苗木と若木から結実させるシトレンジおよびシトルメロ台苗木を組み合わせた植栽が望ましい。(2)(1)摘果技術によって、葉数 4~5 枚の有葉果の適正結果で高品質果実の安定生産が可能である。(2)直径 5mm 程度の中根のデンプン含量を適正着果の指標として用いることが可能である(3)(1)奄美大島では、高品質果実の安定生産のための最終摘果時期は10 月中下旬であり、それ以前では果実が大きく、品質がやや低下すること、それ以降では翌年の着花が不良になる。
著者
大久保 達也 下嶋 敦 鳴瀧 彩絵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々は以前、50nm以下のサイズ領域で粒子径の制御が可能な単分散球状シリカナノ粒子をグラムオーダーで合成する手法を確立した。この粒子はコロイド分散液として得られ、ボトムアッププロセスによる材料開発における優れたナノビルディングユニット(NBU)となり得る。本研究では、単分散球状シリカナノ粒子のさらに簡便な合成法を開発するとともに、粒子の組成、形状、内部構造などを多様化し、種々のNBUを得ることに成功した。さらに、液相中でNBU間に働く相互作用を制御し、NBUを一次元から三次元の各種次元へと自己集合させる方法を確立した。
著者
久保 達也 木原 武士 平林 利郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.305-310, 2002-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
11

ヒ酸鉛処理がナツダイダイ(Citrus natsudaidai Hayata)砂じょうのクエン酸シンターゼ(CS), NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NAD-IDH)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)活性に及ぼす影響について調査した.6月4日および7月2日の2回, 樹全体にヒ酸鉛処理を行うことによって, 9月上旬から1月にかけて明らかに砂じょうにおけるクエン酸蓄積が抑制された.ヒ酸鉛処理によって, CS活性は7月下旬から11月にかけて増大し, またNAD-IDH活性は8月上旬以降増大した.しかしヒ酸鉛はPEPC活性には影響しなかった.これらのことから, ヒ酸鉛処理によってTCAサイクルの回転は促進されるが, TCAサイクルへの基質補充量は変化しないために.結果としてミトコンドリアから液胞へのクエン酸輸送量が低下し, クエン酸蓄積が抑制されると考えられた.
著者
山本 雅史 久保 達也 冨永 茂人
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.372-378, 2006 (Released:2006-09-25)
参考文献数
32
被引用文献数
14 52

カンキツにおける自家不和合性は結実不良の原因となることもあるが,単為結果性が備わった場合には無核果の生産につながる重要な形質である.そのため,本研究では主としてわが国原産のカンキツ類65種・品種(以下,品種と略)を供試して,その自家不和合性について解明するとともに,血縁関係のある自家不和合性品種間の交雑不和合性についても検定した.なお,不和合性は花柱内の花粉管伸長によって検定した.レモンは自家和合性であった.ブンタンでは 6 品種すべて,ブンタン類縁種では11品種中 7 品種,ダイダイおよびその類縁種では 6 品種中 2 品種,スイートオレンジおよびその類縁種では 5 品種中‘ありあけ’のみの 1 品種,ユズおよびその類縁種では 5 品種中ヒュウガナツのみの 1 品種,マンダリンおよびその類縁種では28品種中14品種が自家不和合性であった.キンカン類縁のシキキツおよび分類上の位置が不詳の辺塚ダイダイは自家和合性であった.すなわち,本研究で供試したカンキツ全65品種中31品種が自家不和合性であった.交雑不和合性はクレメンティンとその後代である‘ありあけ’との正逆交雑でのみ認められ,両者の不和合性に関する遺伝子型が一致していると推定できた.