著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014-11-28 (Released:2016-11-15)
参考文献数
35
被引用文献数
3 2

P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。
著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014
被引用文献数
2

<p> P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。<BR> 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。</p>
著者
深尾 京司 宮川 努 川口 大司 阿部 修人 小塩 隆士 杉原 茂 森川 正之 乾 友彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

無形資産推計を含む新しい日本産業生産性(JIP)データベース等を完成させ、OECDやEU KLEMSなど海外組織と連携しながらサービス産業生産性の決定要因を分析した。その結果、近年のサービス産業における労働生産性停滞の主因が人的・物的資本蓄積の著しい低迷や人材の不活用、市場の淘汰機能の不足にあることを明らかにした。また医療、教育、建設、住宅等のアウトプットの質を計測する手法を開発し、非効率性の原因を探った。4つのテーマについて主に以下の分析を行った。①統括・計測:サービス産業の生産性計測と生産性決定要因の分析、各産業の特性を考慮した上での非市場型サービスの質の計測、ミクロデータによる生産性動学分析、②生産と消費の同時性:応募時に計画した、余暇とサービス消費の不可分性を考慮した効用関数の推計、③資本蓄積:産業レベルの無形資産データの作成とそれを利用した分析、および無形資産と有形資産間の補完性の分析、④労働・人的資本:教育や医療サービスが労働の質を高めるメカニズムの研究と、個人の生産性計測、サービス購入と労働供給の関係の分析。これらの具体的な成果は、下記に纏めた。深尾京司編(2021)『サービス産業の生産性と日本経済:JIPデータベースによる実証分析と提言』東京大学出版会、423頁;第1章深尾他、第2章深尾・牧野、第3章宮川・石川、第4章川口・川田、第5章森川、第6章阿部・稲倉・小原、第7章杉原・川淵、第8章乾・池田・柿埜、第9章小塩他、第10章深尾他、第11章中島、終章深尾。
著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014
被引用文献数
2

<p> P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。<BR> 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。</p>
著者
竹中 康治 加藤 一誠 村上 英樹 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 浦西 秀司 辻本 勝久 乾 友彦 乾 友彦 井尻 直彦 呉 逸良 轟 朝幸 村上 英樹 松本 秀暢 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 辻本 勝久 浦西 秀司 三枝 まどか
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の航空・空港政策には改善すべき点が多い。まず, 航空の自由化は経済学的にも望ましいことが証明された。なぜなら, 二国間協定よりも多国間協定の方が経済厚生は大きくなり, 低費用航空会社の参入も経済厚生を改善するからである。そして, 規制の強化ではなく, 市場を通じた航空会社の安全性の向上も可能である。また, 空港政策については必ずしも所有・運営に民間の参入が望ましいとはいえない。同時に, 格付けのあるレベニュー・ボンドには空港の運営規律を維持する作用があることも明らかになった。