著者
土屋垣内 晶 黒宮 健一 五十嵐 透子 堀内 聡 安藤 孟梓 鄧 科 吉良 晴子 津田 彰 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.72-85, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
9 5

本研究の目的は,Saving Inventory-Revised(SI-R)日本語版を開発し,ためこみ傾向を有する日本の青年の臨床的特徴について検討することであった。調査対象は365名の大学生・専門学校生であった。確認的因子分析の結果,SI-R日本語版は3因子構造であることが示された。内的整合性,再検査信頼性,妥当性ともに十分な値が示された。SI-R日本語版の合計得点について,欧米のカットオフ値である41点を基準としてためこみ傾向群と非傾向群に分け群間比較を行った結果,写真評価による自宅の散らかりの程度,強迫症状,特性不安,抑うつ,および機能障害において,ためこみ傾向群のほうが非傾向群よりも有意に高い得点を示した。以上のことから,ためこみ傾向を有する日本の青年の臨床的特徴が示された。
著者
宮下 敏恵 五十嵐 透子 増井 晃
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.71-80, 2009-12-01

本研究の目的は教員養成系大学における学生のメンタルヘルスの経年変化を検討することであった。小中高等学校の教師のメンタルヘルス悪化が叫ばれる中,教師を目指す学生の段階において,メンタルヘルスは変化しているのか,23年間にわたるデータをもとに検討を行った。調査対象者は,教員養成系大学に1984年から2006年までに入学した学生4,435名(男性1,775名,女性2,660名)であった。大学生の精神的健康を調べるためにUPI調査用紙(University Personality Inventory)を用いた。本研究の結果から,UPIの自覚症状得点において,大きな変化はみられず,また下位尺度得点においても,大きな経年変化はみられず,一大学の結果ではあるが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは悪化していないということが示された。教員養成系ではない他大学においては,自覚症状得点が増加しているという傾向が多数示されていることから,教師を目指す学生のメンタルヘルスは,むしろ維持されている可能性があるだろう。また,進路別にUPI得点を検討したところ,教育関係に就職した学生は,抑うつ得点が低いという有意な差がみられた。これらの結果から,一大学のみの結果で,断定はできないが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは近年悪化しているとはいえず,むしろ教育関係に就職している学生のメンタルヘルスは高いという可能性が考えられる。教師のバーンアウト傾向の高さ,メンタルヘルスの悪化は,教師の資質そのものの変化ではなく,制度や仕事内容の悪化が大きな影響を及ぼしていると考えられる。
著者
小林 奈穂美 五十嵐 透子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.111-120, 2013-05-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
18

本事例では、治療に抵抗を示す思春期強迫性障害の17歳の女子高校生に対して、マーチ&ミュール(2008)の児童・思春期のCLに対する治療法を参考に、行動療法の曝露反応妨害法を用い、CL、母親、およびセラピストによる自宅訪問を含んだ"チーム"による治療を行い、4カ月半で症状が改善した。"チーム"治療の際の、治療導入時の働きかけ、治療過程における"チーム"の役割と家族を"チーム"に含めることの重要性およびCLの主要な生活の場である自宅での治療について考察し、思春期強迫性障害CLに対する"チーム"による治療の必要性を検討した。
著者
五十嵐 透子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-13, 2000
参考文献数
35

本稿は、看護教育におけるタッチング教育についての研究報告である。タッチングは、ナースとクライエント間の非言語的コミュニケーションにおいて極めて重要な位置を占め、看護における対人関係の質を決定する一要因であるといわれている。しかし、タッチング教育に関する報告はほとんどみられない。今回、看護教育の1つに非言語的コミュニケーション技術としてタッチングを加え、4年制教育の3年次の成人・高齢者学内演習の1つとして行なった。対象は、本演習ならびに成人・母性臨地実習受講者の66名(女性65名、男性1名)であった。 タッチング演習は、(1)講義、(2)ロールプレイ、(3)ロールプレイのビデオを通したディスカッションと再体験学習の3つの段階で構成した。教育効果は演習終了後に提出したレポートの内容および演習後に行なわれた臨地実習におけるタッチングの実施状況により評価した。タッチングは看護介入の1つである気づきやタッチングの提供者と受け手の間における感じ方の違いなど9つの意識化か得られた。また、実習中に95%の対象は思いやりや励ましを含んだ情動的タッチングを行ない、94%の対象がタッチング演習を肯定的に評価していた。タッチング教育において、タッチングに関する学生の個別的嗜好とタッチングの実施との関連性におけるさらなる研究の必要性と既存のタッチング理論の追加要素および多面的側面からのタッチング教育の研究の必要性などが示唆された。
著者
岩﨑 眞和 五十嵐 透子 Masakazu Iwasaki Toko Igarashi
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
茨城キリスト教大学紀要 II,社会・自然科学 = Journal of Ibaraki Christian University (ISSN:13426370)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.211-224, 2016

The purpose of this study is to identify the factors related to the development of Japanese appreciation/gratitude research, through a review of psychological research abroad and in Japan.Research on appreciation/gratitude has been expanding since 2000 in Western countries whereas gradually cumulating data in Japan. Suggestions for the future study were necessity of the empirical research to clarify the mechanism by which appreciation/gratitude improve well-being and mental health, and to understand the development of appreciation/gratitude as a life-span process in Japan.
著者
小林 奈穂美 五十嵐 透子
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.111-120, 2013-05-31
参考文献数
18

本事例では、治療に抵抗を示す思春期強迫性障害の17歳の女子高校生に対して、マーチ&ミュール(2008)の児童・思春期のCLに対する治療法を参考に、行動療法の曝露反応妨害法を用い、CL、母親、およびセラピストによる自宅訪問を含んだ"チーム"による治療を行い、4カ月半で症状が改善した。"チーム"治療の際の、治療導入時の働きかけ、治療過程における"チーム"の役割と家族を"チーム"に含めることの重要性およびCLの主要な生活の場である自宅での治療について考察し、思春期強迫性障害CLに対する"チーム"による治療の必要性を検討した。