- 著者
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宮下 敏恵
五十嵐 透子
増井 晃
- 出版者
- 日本学校メンタルヘルス学会
- 雑誌
- 学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.71-80, 2009-12-01
本研究の目的は教員養成系大学における学生のメンタルヘルスの経年変化を検討することであった。小中高等学校の教師のメンタルヘルス悪化が叫ばれる中,教師を目指す学生の段階において,メンタルヘルスは変化しているのか,23年間にわたるデータをもとに検討を行った。調査対象者は,教員養成系大学に1984年から2006年までに入学した学生4,435名(男性1,775名,女性2,660名)であった。大学生の精神的健康を調べるためにUPI調査用紙(University Personality Inventory)を用いた。本研究の結果から,UPIの自覚症状得点において,大きな変化はみられず,また下位尺度得点においても,大きな経年変化はみられず,一大学の結果ではあるが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは悪化していないということが示された。教員養成系ではない他大学においては,自覚症状得点が増加しているという傾向が多数示されていることから,教師を目指す学生のメンタルヘルスは,むしろ維持されている可能性があるだろう。また,進路別にUPI得点を検討したところ,教育関係に就職した学生は,抑うつ得点が低いという有意な差がみられた。これらの結果から,一大学のみの結果で,断定はできないが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは近年悪化しているとはいえず,むしろ教育関係に就職している学生のメンタルヘルスは高いという可能性が考えられる。教師のバーンアウト傾向の高さ,メンタルヘルスの悪化は,教師の資質そのものの変化ではなく,制度や仕事内容の悪化が大きな影響を及ぼしていると考えられる。