著者
二瓶 正登 荒井 穂菜美 前田 香 青木 俊太郎 土屋垣内 晶 岩野 卓 冨岡 奈津代 岡村 尚昌 三原 健吾 城月 健太郎 堀内 聡 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.54-63, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
3

Fear of Negative Evaluation Scale日本語短縮版(SFNE)はFNEを測定する1因子構造の尺度である。しかし近年の研究においてSFNEが順向項目因子と逆転項目因子の2因子から構成される尺度である可能性が報告された。本研究ではWeb調査を通して参加した一般成人500名と大学生・専門学校生82名を対象に,SFNEの因子構造,信頼性および妥当性を検討した。探索的因子分析の結果,8項目からなる順向項目因子と4項目からなる逆転項目因子の2因子が抽出された。各因子の内的整合性と再検査信頼性は十分に高かった。逆転項目因子と比較して,順向項目因子の方が高い妥当性を有していた。本結果は逆転項目因子に比べ順向項目因子の方がFNEを正確に測定していることを示しており,FNEの測定においてはSFNEの順向項目因子を使用することが推奨される。本結果の意義と本研究の課題について検討した。
著者
岡村 尚昌 津田 彰 矢島 潤平 堀内 聡 松石 豊次郎
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-40, 2010 (Released:2014-07-03)
参考文献数
28

大学生の睡眠時間と心身の健康との関連性を明らかにするために、GHQ-28による主観的評定と精神神経免疫学的(PNI)反応[3-methoxy-4-hydroxyphenylglychol(MHPG)含有量、免疫グロブリン(Ig)A抗体産生量]を用いた客観的評価から、睡眠時間の長さによって、心身のストレスの自覚とノルアドレナリン神経系と免疫系の活性がどのように異なるのか検討した。研究参加の同意が得られた健康な大学生205名(男性110名、女性95名、年齢18.6±1.0)を対象に睡眠時間を調査し、最適睡眠時間群(AS:Adequate Sleep)(6〜8時間睡眠)を35名、短時間睡眠群(SS: short sleep)(5時間以下の睡眠)33名と長時間睡眠群(LS: long sleep)(9時間以上の睡眠)28名をそれぞれ抽出した。講義時に、集団一斉法にてGHQ-28への記入を求め、PNI反応を測定するために唾液の採取を行った.LS群のGHQ-28得点は、「社会的活動障害」および「うつ傾向」下位尺度でAS群とSS群に比較して有意に高値であった。一方、SS群はASに比較して「身体症状」下位尺度得点が有意に高かった。SS群の唾液中free-MHPGは、AS群と異ならなかったが、LS群に比較して有意に高く、s-IgAは有意に低かった。ロジスティック回帰分析の結果は、中等度以上の「身体的症状」、「社会的活動障害」と「うつ傾向」症状が短時間もしくは長時間睡眠と有意に関連していることを明らかにした。以上の知見から、6〜8時間睡眠が最も心身の健康と関連していることが示された。また、睡眠時間いかんによって唾液を指標にして得られたPNI反応が異なったことは、今後、大学生のストレス関連疾患の予防や健康増進活動のために、睡眠の重要性を示す客観的証拠となると考える。
著者
堀内 聡 川乗 賀也 小松 裕恵
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-16, 2017-10-31 (Released:2018-03-16)
参考文献数
10

Here we investigated the affect of 150 visitors before and after the following three types of interaction with dolphins: observing dolphins, touching dolphins for 1 min under the guidance of an instructor, and swimming with two dolphins and one instructor for 10 min. Negative affects, positive engagement (high arousal and positive affect), and tranquility (low arousal and positive affect) before and after each interaction were measured. Negative affect and tranquility levels significantly decreased and increased, respectively, independent of the type of interaction. On the other hand, positive engagement levels increased after all types of interaction; however, the magnitude of this increase was significantly greater in visitors who touched the dolphins than in those who merely observed them. These variations in positive engagement across different interactions enhanced our understanding of the effects of different interactions with dolphins on people’s affects.
著者
土屋垣内 晶 黒宮 健一 五十嵐 透子 堀内 聡 安藤 孟梓 鄧 科 吉良 晴子 津田 彰 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.72-85, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
9 5

本研究の目的は,Saving Inventory-Revised(SI-R)日本語版を開発し,ためこみ傾向を有する日本の青年の臨床的特徴について検討することであった。調査対象は365名の大学生・専門学校生であった。確認的因子分析の結果,SI-R日本語版は3因子構造であることが示された。内的整合性,再検査信頼性,妥当性ともに十分な値が示された。SI-R日本語版の合計得点について,欧米のカットオフ値である41点を基準としてためこみ傾向群と非傾向群に分け群間比較を行った結果,写真評価による自宅の散らかりの程度,強迫症状,特性不安,抑うつ,および機能障害において,ためこみ傾向群のほうが非傾向群よりも有意に高い得点を示した。以上のことから,ためこみ傾向を有する日本の青年の臨床的特徴が示された。
著者
前田 香 関口 真有 堀内 聡 Justin W. Weeks 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.113-120, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

他者からの肯定的評価への恐れは,社交不安症の認知的特徴である。本研究の目的はFear of Positive Evaluation Scale(FPES)日本語版の信頼性と妥当性を検討することであった。対象者は324名の大学生であった。確認的因子分析の結果,原版と同様に8項目1因子構造が確認された。また,内的整合性と5週間の再検査信頼性は原版と同様に高いことが示された。妥当性を確認するために,他者からの否定的評価への恐れ,および対人交流への不安との関連性を検討した。その結果,予測された関連性が確認された。第一に,対人交流への不安,他者からの否定的評価への恐れとの間に正の相関が認められた。第二に,他者からの否定的評価への恐れを統制した場合に対人交流への不安を予測した。したがって,FPES日本語版の信頼性と妥当性が確認され,その有用性が議論された。
著者
堀内 聡 津田 彰 岡村 尚昌 矢島 潤平 ステプトー アンドリュー
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.31-39, 2010 (Released:2014-07-03)
参考文献数
29

本研究の目的は、異なる一過性のメンタルストレステストが、脳に由来するノルアドレナリンの代謝産物である唾液中3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)の異なる反応を喚起するか否かを検討することであった。参加者は健常な成人男性10名であり、異なる日にストループ語彙−葛藤課題と暗算課題(内田クレぺリン課題)をこなした。課題の順番は参加者間でカウンターバランスされた。唾液はベースライン、課題直後、そして課題10分後に採取した。両課題は同程度の主観的ストレス反応を喚起した。しかし、唾液中MHPGは語彙−葛藤課題に対してのみ上昇し、暗算課題には変化しなかった。これらの結果は、MHPGの放出を促し、中枢ノルアドレナリン神経系を活性化させるメンタルストレステストの要素が存在することを示唆している。
著者
小林 諒子 堀内 聡
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.128-129, 2021-11-30 (Released:2022-02-28)
参考文献数
7

This study investigated the associations between individual differences in tears and personality in a situation that moves and saddens one. Each participant viewed a moving picture that was approximately 5.5 minutes long and scored their feelings and appearance of tears during the clip. They also completed a questionnaire on big five personality types. Stronger feelings of being moved and sadness were induced when compared with other feelings when viewing. A regression analysis with the five personality traits and gender as independent variables and appearance of tears as the dependent variable indicated that increased openness was associated with more intense crying.
著者
矢羽々 紗枝 堀内 聡 片岡 祥
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.130-131, 2021-11-30 (Released:2022-02-28)
参考文献数
5

This study investigated the negative emotional reactions to a "left on read" situation in various attachment styles. Two-hundred-seventy-nine Japanese high school students received a questionnaire designed to measure their attachment style. Participants read the scenario of not receiving a reply to a LINE message they sent to a close friend inviting them to play. Their negative emotions were scored, and data from 155 students were analyzed. Compared to students with a secure attachment style, those with a preoccupied style showed stronger feelings of fear and sad-ness. Scores of anger, disgust, energetic arousal, and tension arousal did not differ in attachment style.
著者
岡村 尚昌 津田 彰 矢島 潤平 堀内 聡 松石 豊次郎
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-40, 2010

大学生の睡眠時間と心身の健康との関連性を明らかにするために、GHQ-28による主観的評定と精神神経免疫学的(PNI)反応[3-methoxy-4-hydroxyphenylglychol(MHPG)含有量、免疫グロブリン(Ig)A抗体産生量]を用いた客観的評価から、睡眠時間の長さによって、心身のストレスの自覚とノルアドレナリン神経系と免疫系の活性がどのように異なるのか検討した。研究参加の同意が得られた健康な大学生205名(男性110名、女性95名、年齢18.6±1.0)を対象に睡眠時間を調査し、最適睡眠時間群(AS:Adequate Sleep)(6〜8時間睡眠)を35名、短時間睡眠群(SS: short sleep)(5時間以下の睡眠)33名と長時間睡眠群(LS: long sleep)(9時間以上の睡眠)28名をそれぞれ抽出した。講義時に、集団一斉法にてGHQ-28への記入を求め、PNI反応を測定するために唾液の採取を行った.LS群のGHQ-28得点は、「社会的活動障害」および「うつ傾向」下位尺度でAS群とSS群に比較して有意に高値であった。一方、SS群はASに比較して「身体症状」下位尺度得点が有意に高かった。SS群の唾液中free-MHPGは、AS群と異ならなかったが、LS群に比較して有意に高く、s-IgAは有意に低かった。ロジスティック回帰分析の結果は、中等度以上の「身体的症状」、「社会的活動障害」と「うつ傾向」症状が短時間もしくは長時間睡眠と有意に関連していることを明らかにした。以上の知見から、6〜8時間睡眠が最も心身の健康と関連していることが示された。また、睡眠時間いかんによって唾液を指標にして得られたPNI反応が異なったことは、今後、大学生のストレス関連疾患の予防や健康増進活動のために、睡眠の重要性を示す客観的証拠となると考える。
著者
津田 彰 堀内 聡 金 ウィ淵 鄧 科 森田 徹 岡村 尚昌 矢島 潤平 尾形 尚子 河野 愛生 田中 芳幸 外川 あゆみ 津田 茂子 Shigeko Tsuda
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.77-88, 2010-03-31

ストレスへの対応といった受身的な対策を越えて,よりよく生きるための健康開発につながる効果的なストレスマネジメント行動変容を促すプログラムが求められている。とくに対費用効果を考えた場合には,集団戦略として,大勢の人たちを対象にしながら個々人の行動変容に対する準備性に応じたアプローチが必要となる。これらのニーズに応える行動科学的視点に立つ理論と実践モデルとして,行動変容ステージ別に行動変容のためのやり方(変容のプロセスと称する)を教示し,動機づけを高める意思決定のバランスに働きかけながら,行動変容に対する自己効力感を高め,行動変容のステージを上げていく多理論統合モデル(transtheoretical model, TTM)にもとづくアプローチが注目されている。筆者らは,TTM にもとづくインターネットによるストレスマネジメント行動変容の介入研究において,対象者が自ら効果的なストレスマネジメント行動に取り組むためのセルフヘルプ型のワークブックを作成し,その有効性を検証している。本稿では,効果的なストレスマネジメント行動を促すために,これらのワークブックをより有効に活用するための実践ガイドについて解説を加える。
著者
堀内 聡 津田 彰 金 ウィ淵 洪 光植 プロチャスカ ジャニス・M
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.12-20, 2010

本研究は2つの目的を達成するために行われた。第1の目的は、Pro-Change's self-efficacy measure for stress management behavior(PSSM)韓国語版を開発することであった。第2の目的は、韓国の大学生において、ストレスマネジメント行動の変容ステージとセルフエフィカシーとの関連性を検討することであった。本研究ではストレスマネジメント行動を定期的にリラクセーションする、運動する、他者と話をする、あるいは社会的活動に参加するなど、ストレスを緩和するための活動を1日に少なくとも20分間行うことと定義した。参加者は228名の男子大学生と517名の女子大学生である。参加者はストレスマネジメント行動の変容ステージとセルフエフィカシー、および抑うつに関連する質問紙に回答した。セルフエフィカシーに関しては2週間後にも回答した。因子分析の結果、9項目からなり、受容可能な信頼性を有するPSSM韓国語版が開発された。自己効力感は抑うつと負の相関を示したことから、PSSM韓国版の妥当性が一部支持された。ストレスマネジメント行動のセルフエフィカシーは、その他の変容ステージに属する者と比較して、維持期に属する者で高く、多理論統合モデルをストレスマネジメント行動に適用できる可能性が支持された。
著者
堀内 聡
出版者
久留米大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

以下の目的を達成するために研究3を実施した:ストレスマネジメント行動を行うことに対するセルフエフィカシー、意思決定バランス、および変容プロセスがストレスマネジメント行動の変容ステージ移行を予測するか否かを縦断的な調査により検証する。全米からproactiveにリクルートした、ストレスに関連した症状(頭痛など)を経験したことのある者1085名を対象とした。このサンプルは主に女性、白人で構成されている。このうち約半数はエキスパート・システムとワークブックを利用した介入を受けている。介入の期間は6ヶ月であり、フォローアップは1年間である。介入前、その6ヶ月、12ヶ月、および18ヶ月後に、変容ステージ、変容プロセス、意思決定バランス、および自己効力感の尺度に回答している。ベースライン時のそれぞれの変容ステージごとに、ベースラインからその6ヶ月までの変容ステージの変化にもとづいて、対象者をステージが進んだ者(前進群)、変わらない者(残留群)、および後戻りした者(後退群)に分類した。前熟考期と維持期については、それぞれ後退群と前進群がないため、2群に分類した。この上で、3または2群の間で、ベースライン時点における変容プロセス、意思決定バランス、および自己効力感の得点を比較した。以上のような分析の結果、以下の点が示された:(1)前熟考期では、体験的・認知的プロセス、恩恵、および自己効力感が重要である。:(2)熟考期と準備期では、TTMの要因ではなく、ストレスが重要である。:(3)実行期および維持期では、行動的プロセス、体験的・認知的プロセス、および自己効力感が重要である。
著者
堀内 聡 津田 彰 橋本 英一郎 甲斐 ひろみ 賀 文潔
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.93-98, 2008-10-25

主観的幸福感がメンタルストレステストに対するストレス反応に影響するという証拠が増えている.235名の対象者から選抜された主観的幸福感が高いグループと低いグループ(各8名)に対して,スピーチと暗算課題からなるメンタルストレステストを負荷した時の心拍(HR)及び主観的ストレス反応を比較した.メンタルストレステストは,10分間の前課題期,2分間のスピーチ準備期,3分間のスピーチ期,5分間の暗算課題期,そして30分間の後課題期からなっていた.主観的ストレス反応は,NASA-TLXにより測定された.幸福感が低いグループのHRは,前課題期及び暗算時において,幸福観感が高いグループよりも高かった.主観的ストレス反応は,両グループで差異がなかった.