著者
後藤 綾 柳本 佳南 吉見 陽 鍋島 俊隆 野田 幸裕
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.7, pp.963-971, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The early intake of alcohol and/or nicotine in childhood or adolescence is one of risk factors for alcohol and/or nicotine dependence in adult. Recently, non-alcoholic beverages with less than 0.00% alcohol are on sale for adults as substitutes for alcoholic beverages without strict legal limitations. However, it is unclear whether non-alcoholic beverages could be a risk factor in drinking and smoking in childhood or adolescence. The purpose of the present survey is to clarify the effect of non-alcoholic beverage intake in children on alcoholic beverage drinking and smoking. We examined as follows: the experience of alcoholic or non-alcoholic beverage intake, and of smoking in elementary school pupils and/or their family members, and interest in or motivation for drinking and smoking in the pupils. As a result, the percentage of alcoholic or non-alcoholic beverage intake, and of smoking in the pupils were 16.8% or 21.9%, and 0.3%, respectively. The number of family members took the alcoholic or non-alcoholic beverage was larger in the pupils took it compared to the pupils did not take it. In the pupils who experienced the non-alcoholic beverage intake, interest in or motivation for drinking alcoholic beverages and/or smoking is higher than in those who did not. These findings indicate that non-alcoholic beverage intake is related to drinking and smoking. We will introduce drug abuse prevention education on the risk of drug dependence among childhood or adolescents based on the findings of this survey.
著者
渡辺 裕之 中村 和行 石川 歩未 李 振雨 足立 康則 鍋島 俊隆 杉浦 洋二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-138, 2021 (Released:2021-04-22)
参考文献数
28

【緒言】糖尿病を合併した終末期悪性リンパ腫患者の経口投与が困難な難治性悪心に対して,アセナピン舌下錠を使用し,悪心の改善ができたので報告する.【症例】78歳男性,糖尿病を併発するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者で右前頭葉,小脳に腫瘤や結節,周囲脳実質に浮腫が認められた.中枢浸潤が原因と考えられる悪心・嘔吐を繰り返し,経口投与はできなかったためメトクロプラミド,ハロペリドール,ヒドロキシジン注を併用したが,悪心のコントロールは困難であった.アセナピンは糖尿病患者にも使用可能で,制吐作用があるオランザピンと同じ多元受容体作用抗精神病薬に分類される.その作用機序から制吐作用が得られることを期待し,アセナピン舌下錠5 mg,1日1回就寝前の投与を開始した.アセナピン舌下錠の開始後,難治性悪心は著明に改善した.【考察】アセナピンは,難治性悪心に対する治療の有効な選択肢となる可能性がある.
著者
野田 幸裕名 鍋島 俊隆 毛利 彰宏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.117-123, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

非競合的N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP)の乱用者は,統合失調症と類似した精神症状(PCP精神病)を惹起することから,統合失調症にはグルタミン酸作動性神経の機能低下が関係しているという「グルタミン酸作動性神経系機能低下仮説」が提唱された.PCPは単回で投与した場合には一過性の多様な薬理効果を示すが,連続投与した場合は,依存患者が摂取を中止した後も,その精神症状が数週間持続する様に,動物モデルでも行動変化が持続する.例えばPCPをマウスに連続投与すると休薬後において運動過多が増強(自発性障害:陽性症状様作用)され,強制水泳ストレスによる無動状態が増強(意欲低下の増強:陰性症状様作用)され,水探索試験における潜在学習や恐怖条件づけ試験における連合学習が障害(認知機能障害)される.このモデル動物を用いた研究により,統合失調症の病態解明,新規治療薬の開発につながることが期待されている.
著者
溝口 博之 野田 幸裕 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.17-23, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
32

ヒトは,風邪薬を飲むと共通して眠気を感じ,アルコール飲料の種類に係らず適量を飲むと多幸感が得られる.このような薬理作用を介してヒトは,ある種の薬物の摂取体験からその薬物を認知し,自覚する.これは,摂取感覚効果(自覚効果)と呼ばれ,ヒトばかりでなく,サルをはじめとする多くの動物でも認められる.依存性薬物は,それぞれ特異的な感覚自覚効果を持ち合わせており,この自覚効果が快感(陽性強化)であればそれを求めて乱用される.したがって,自覚効果は依存形成の重要な因子の一つとして考えられている.ヒトでの自覚効果は,薬物を投与したときの摂取感覚を質問表によって調べる方法が用いられている.実験動物の場合は,自覚効果を直接知ることはできないことから,薬物の摂取感覚効果を利用した薬物弁別試験が用いられている.我々はこれまでにラットの薬物弁別試験を用いて,依存性薬物の1つであるメタンフェタミンの自覚効果の発現機序について検討してきた.すなわち,メタンフェタミンに対する弁別を獲得したラットの側坐核と腹側被蓋野において,神経の活性化の指標となるc-Fosタンパクの発現の増大が認められたことから,メタンフェタミンの弁別刺激効果には,ドパミン作動性神経系を中心とした神経回路が重要であることを明らかにした.メタンフェタミンの弁別刺激効果は,ドパミンD2およびD4受容体拮抗薬によって抑制され,さらに,細胞内cyclic AMP(cAMP)量を増加させるロリプラムやネフィラセタムによっても同様に抑制された.これらの結果から,メタンフェタミンの弁別刺激効果は,D2様受容体とリンクした細胞内cAMP系シグナル経路を介して発現しているものと示唆される.したがって,細胞内cAMP量を増大させるような薬物やD2様受容体を介したシグナル経路を抑制するような薬物は,薬物依存の予防・治療薬となる可能性がある.
著者
野田 幸裕 亀井 浩行 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.43-49, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
50
被引用文献数
4 9

近年研究が盛んに行われているシグマ受容体は,うつ病や不安神経症などのストレス関連疾患に関与していることが示唆されている.シグマ受容体アゴニストは,抗うつ薬のスクリーニングに汎用されている強制水泳試験や尾懸垂試験において無動状態を緩解し,この緩解作用は,シグマ1受容体アンタゴニストによって拮抗される.シグマ受容体アゴニストの中でもシグマ1受容体作動薬の(+)-N-アリルノルメタゾシン((+)-SKF-10,047)およびデキストロメトルファンは,抗うつ薬や抗不安薬でも治療効果の得られない治療抵抗性のうつ病モデルと考えられている恐怖条件付けストレス反応をフェニトイン感受性シグマ1受容体を刺激することによって緩解し,この緩解作用の発現には中脳辺縁系ドパミン作動性神経系の賦活化が関与していることが示唆されている.一方,シグマ受容体の内因性リガンドとしてニューロステロイドのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)やニューロペプチドのニューロペプチドY(NPY)が注目されている.DHEA硫酸塩は,強制水泳による無動状態や恐怖条件付けストレス反応を緩解し,これらの緩解作用は,シグマ1受容体アンタゴニストによって拮抗される.また,NPYは,コンフリクト試験において抗不安作用を示し,実験動物にストレスを負荷すると血漿中のNPY含量が変化することが認められている.このように,シグマ受容体はストレス関連疾患との関連性について注目されており,シグマ受容体アゴニストは,従来の抗うつ薬や抗不安薬とは異なる新しいタイプのストレス関連疾患治療薬となりうる可能性が示唆されている.
著者
永井 拓 山田 清文 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.71-76, 2005-02-01
被引用文献数
2 1

不安障害は全般性不安障害,パニック障害,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害などに分類されており,それぞれの不安障害に対して有効な薬物の種類が異なっていることも知られている.したがって,不安障害における情動変化のメカニズムの解明や治療薬を開発する上で,分類された各々の不安障害に対応した動物モデルの作製が必要である.しかし,ヒトの不安や恐怖などの情動変化を動物レベルで測定することは容易ではない.神経精神薬理学的な研究において,動物に不安や恐怖状況を設定し,これらにより生じる行動変化や行動変化に対する薬物の反応性を客観的かつ定量的に評価することにより,病態を反映した妥当性の高い動物モデルの作製が試みられてきた.一方,最近の分子生物学の進歩に伴い,様々なノックアウトおよびトランスジェニックマウスが作製され,これらの遺伝子改変動物を用いて遺伝子レベルで情動性の分子機構を解明しようとする研究が盛んに行われている.本稿では,情動性の代表的な評価試験方法および不安との関連が示唆されている遺伝子改変動物について概説する.<br>
著者
櫛田 真由 小谷 悠 水野 智博 室崎 千尋 浅井 玲名 肥田 裕丈 平林 彩 鵜飼 麻由 荻野 由里恵 後藤 綾 山下 加織 松本 友里恵 毛利 彰宏 鍋島 俊隆 野田 幸裕
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-17, 2013-01-10 (Released:2014-01-10)
参考文献数
12

We held classes and practice sessions on medicines for pupils and parents at elementary schools with the aim of promoting appropriate drug use. Pharmacy students participated in this project as volunteers where they taught pupils and learned and improved their communication skills at an early stage in their professional development. To evaluate whether pupils improved their medicine-related knowledge after attending these classes and practice sessions, we conducted medicine-related questionnaires (pre- and post-questionnaires) before and after the classes and practice sessions. Positive answers for the post-questionnaire were significantly higher than those for the pre-questionnaire, suggesting that the medicine-related knowledge of pupils was improved by attending the classes and practice sessions. The present results suggest that this activity benefits the education of pupils regarding appropriate drug use in Japan.
著者
毛利 彰宏 野田 幸裕 溝口 博之 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.4-8, 2006 (Released:2006-03-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

非競合的N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP)の乱用者は,統合失調症とよく似た精神症状を示すことから,統合失調症の病態仮説として「グルタミン酸作動性神経系機能低下仮説」が提唱されている.PCPは単回で投与した場合には一過性の多様な薬理作用を示すが,連続投与した場合は,依存患者が摂取を中止した後も,その精神症状が数週間持続する様に,動物でも行動変化が持続する.例えばPCPをマウスに連続投与すると,休薬後において少量のPCPを投与すると運動過多が増強(自発性障害:陽性症状様作用)され,一方,強制的に水泳をさせても泳がなくなる無動状態が増強(意欲低下の増強:陰性症状様作用)され,水探索試験における潜在学習や恐怖条件づけ試験における連合学習が障害(認知機能障害)される.このようなPCP連続投与マウスに認められる情動・認知機能障害にグルタミン酸作動性神経系がどのように関与しているのか分子機序を調べたところ,運動過多の増強はPCPがNMDA受容体拮抗作用を示し,その結果ドパミン作動性神経系を亢進することによっていた.生理食塩水連続投与マウスでは強制水泳ストレス負荷および水探索や恐怖条件づけ試験で訓練するとCa2+/calmodulin kinase IIやextracellular signaling-regulated kinaseのリン酸化が著しく増加するが,PCP連続投与マウスでは増加しなかった.一方,PCP連続投与マウスの細胞外グルタミン酸の基礎遊離量は著しく減少していた.これはグリア型グルタミン酸トランスポーターのGLASTの発現が増加し,グルタミン酸の再取り込みが増加しているためであることが考えられた.したがって,PCP連続投与マウスに認められる精神行動障害には,グルタミン酸作動性神経系の前シナプス機能およびNMDA受容体を介する細胞内シグナル伝達の低下が関与しているものと考えられる.
著者
梅村 雅之 伊東 亜紀雄 鍋島 俊隆
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-21, 2002-02-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
17

In hematopoietic cell transplantation, amphotericin B (AMPH) syrup is widely used for the prevention of local fungal infections in the intraoral and gastrointestinal tracts. However, the dosage compliance tends to be poor due to its unpleasant taste. We therefore developed a candy preparation for AMPH in order to improve compliance. In this study, we examined the thermostability, stability under storage and the dissolution pattern of AMPH in this preparation. The oral contents of AMPH after administration in the candy preparation were also measured in healthy volunteers. A low calorie sweetener was heated to melt and cooled down to several temperatures (150-190°C). After cooling, AMPH syrup or powder grinding tablets were added (9 mg/ 3 g/piece : the final contents). The results of a thermostability examination show that AMPH was not affected at 150°C, however, it tended to be damaged at higher temperatures. When one piece of AMPH candy preparation was administered for 30 sec to healthy volunteers, the oral concentration of AMPH is higher than 100μg/mL for 10 min, which is more than the minimal inhibitory concentration (MIC) for Candida albicans. Furthermore, the results of a texture test using healthy volunteers indicate that the taste, i.e., flavor, feel on the tongue, etc of the candy preparation made from syrup was superior to that made from powder. These results suggest that a sufficient oral concentration of AMPH to prevent fungal infection was obtained in this candy preparation. As a result, this candy preparation may improve not only the dosage compliance but also the QOL of the patients.
著者
野田 幸裕 毛利 彰宏 鍋島 俊隆 尾崎 紀夫
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統合失調症の発症要因(周産期ウイルス感染、出産時低酸素脳症や育児放棄)の共通因子として、プロスタグランジンE2(PGE2)が関与するどうか検討した。発症要因を模したモデルマウスの脳内PGE2量は増加していた。周産期ウイルス感染モデルマウスに認められる統合失調症様の認知・情動行動障害にEP1受容体が関与していた。新生仔期PGE2暴露は、神経発達障害に伴う成体期ドパミン神経機能低下や認知行動障害を惹起させ、乱用薬物に対して脆弱性を示した。一方、統合失調症の発症・病態にPGE2関連遺伝子の関連性は認められなかった。PGE2は統合失調症の環境要因の共通因子および、発症脆弱性に関わることが示唆された。
著者
亀山 勉 鍋島 俊隆 山口 和政
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.73-89, 1979 (Released:2007-03-29)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

Morphineによって生じるStraub挙尾反応(STR)と鎮痛作用の発現機構を脊髄レベルで検討し,以下の成績を得た.1)STRは背側仙尾骨筋の切断によって消失した.2)spinal miceの脊髄を電気刺激すると挙尾反応が生じる.3)morphine 0.25~5μgを腰椎髄腔内に投与するとSTRが用量依存的に生じた.しかし,spinal miceの腰椎髄腔内にmorphineを投与してもSTRは生じなかった.4)STRは末梢性筋弛緩薬のtubocurarineおよびmorphine拮抗薬のnaloxoneの腰椎髄腔内投与によって抑制および拮抗された.5)STRはC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部およびT11~12の右後半部または左右後半部を切除しても抑制されず,T11~12のTransectionで始めて消失した.6)脊髄のcatecholamine(CA)ニューロンを破壊したり,5-hydroxytryptamine(5-HT)ニューロンを破壊してもTail Reactionは生じなかったが,morphineで生じるSTRは増強された.7)morphine 0.5μgを腰椎髄腔内に投与すると鎮痛作用が得られた.8)C5~6の左後半部または左右後半部を切除すると疼痛閾値が上昇したが,C5~6の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかった.Morphineの鎮痛作用はC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部を切除すると抑制された.T11~12の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかったが,morphineの鎮痛作用は減弱した.9)脊髄のCAニューロンを破壊したり,5-HTニューロンを破壊すると疼痛閾値が低下したが,morphineの鎮痛作用はnorepinephrine(NE)ニューロンを破壊した場合にのみ抑制された.以上の知見から,morphineは脊髄に作用しSTRと鎮痛作用を生じ,STR発現は脊髄の前半部が重要であり,NEニューロン,5-HTニューロンの神経活動が抑制され生じるが,morphineの鎮痛作用発現には脊髄の後半部が重要であり,NEニューロンの神経活動が増強されることによって生じることを見い出した.
著者
野田 幸裕 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.120, no.8, pp.677-682, 2000-08-01 (Released:2008-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 9

To develop an animal model for negative symptoms, in particular avolition, of schizophrenia, the effect of phencyclidine (PCP) on immobility (regarded as avolition) in the forced swimming test was investigated in mice, since PCP produces negative symptoms in humans. Unlike single, repeated treatment with PCP prolonged the immobility time in the forced swimming test 24 h after the final injection compared with saline treatment. The enhancing effect of PCP on the immobility persisted for 21 d after the withdrawal of the drug. Atypical antipsychotics attenuated the enhancing effect of PCP on the immobility. Since these attenuating effects were antagonized by a serotonin-S2 receptor agonist, (±)-2, 5-dimethoxy-4-iodamphetamine (DOI), the effects may be mediated via serotonin-S2 receptors. In contrast with atypical antipsychotics, typical antipsychotics, antidepressants and anxiolytics had no effect. No functional changes in post-synaptic serotonin-S2 reseptors were observed in PCP-treated mice following the forced swimming test. Serotonin utilization in the prefrontal cortex was increased, but dopamine utilization was decreased in PCP-treated mice showing the enhancement of immobility. The enhancing effect of PCP was significantly attenuated by D-cycloserine, an agonist for glycine binding site of N-methyl-D-aspartate (NMDA) receptor ionophore complex. Decreases of NMDA receptor function or of the cortical glutamate and glycine levels were observed in PCP-treated mice showing the enhancement of immobility. These results suggest that the enhancing effect of PCP on immobility is mediated by the imbalance of the cortical serotonergic, dopaminergic and glutamatergic systems and could be used as an animal model for negative symptoms of schizophrenia.
著者
鍋島 俊隆
出版者
医歯薬出版
雑誌
医学のあゆみ (ISSN:00392359)
巻号頁・発行日
vol.138, no.3, pp.p178-180, 1986-07-19
被引用文献数
1
著者
葛谷 雅文 遠藤 英俊 梅垣 宏行 中尾 誠 丹羽 隆 熊谷 隆浩 牛田 洋一 鍋島 俊隆 下方 浩史 井口 昭久
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.363-370, 2000-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
18
被引用文献数
8 14

名古屋大学医学部附属病院老年科病棟と, 国立療養所中部病院高齢者包括医療病棟入院中の65歳以上の患者を対象に老年医学的総合評価 (ADL, Instrumental ADL, 認知機能, 情緒傾向, 社会的状態などを含む) と服薬コンプライアンス評価調査表を用い, 高齢者の服薬コンプライアンスに関与する因子を検討した. 2施設間の調査対象集団を比較すると, 中部病院で女性の割合が多く有意に高齢であった. さらに中部病院では Instrumental ADLが有意に低スコアーであった. 老年医学的総合評価項目と服薬コンプライアンス評価項目との検討では, 服薬管理者 (自己管理か非自己管理か) を規定している因子は主にADL, Instrumental ADL, 認知機能障害, うつ状態, コミュニケーション障害の有無であった. 服薬状況 (薬の飲みわすれ) は老年医学的総合評価項目のいずれにも有意な関係がなかったが, 用法の理解度, 薬効の理解度との関係は施設間で差を認めた. すなわち大学病院では服薬状況と用法, 薬効理解度との間に有意な関係を認めたが, 中部病院ではいずれも有意差を認めなかった. 服薬用法理解, 薬効理解度は Instrumental ADL, 認知機能, コミュニケーション能力, 集団行動能力と有意な関係にあった. 薬効理解度は教育歴とも有意な関係にあった. 2施設を比較すると多くの総合評価項目とコンプライアンスの関係は一致していた. 以上より, 高齢者の服薬コンプライアンスは患者の身体機能, 認知機能とは関係なく, 服薬用法, 薬効理解との関係が示唆された. このことは服薬指導の重要性が高齢者の服薬コンプライアンス向上に重要であることを再認識させる.
著者
長谷川 雅哉 鍋島 俊隆
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.11-16, 2002-12-25

ダイエット商品には根強い需要がある。中国の健康茶をイメージさせるダイエット食品に対して,日本の消費者は無防備である。個人輸入やインターネット販売によって,法の網をかいくぐり,危険な健康食品ややせ薬が,消費者の手元に簡単に届くことが,大きな社会問題となっている。中国製ダイエット食品による健康被害が報告された。これらのダイエット食品に含まれており,問題となっているのが食欲抑制剤「フェンフルラミン」である。これは,食欲抑制効果を期待して人為的に添加されたものと推察されている。フェンフルラミンは,中枢性セロトニン(5-HT)作動性食欲抑制薬であり,肥満症の治療に使用される。フェンフルラミンの5-HT神経系を介した精神神経学的副作用について,数多くの報告があり,不安を惹起し,認知機能,睡眠,人格などに影響を与えるのではないかと考えられている。フェンフルラミンの投与により,持続的な脳内5-HTレベルの低下を伴う,うつ状態が誘導される。原因として5-HT神経繊維の脱落および5-HT再取り込み部位の減少が報告されている。フェンフルラミンの濫用はまれであるが,薬物濫用歴のある者がフェンフルラミンを濫用したケースがあり,多幸症,知覚変化,非現実感のような症状が発現している。動物実験では依存性獲得は認められていない。フェンフルラミンの過量投与により,精神障害,振せん(震え),眠気,錯乱,紅潮,発熱,発汗,腹痛,過呼吸,散瞳,廻旋眼振,反射亢進・抑制,頻拍,痙攣,昏睡,心室性期外収縮,心室細動,心停止が起こる可能性が有る。米国では,フェンフルラミンを含む食欲抑制剤によって,心臓弁への副作用が発見され,1997年に販売を禁止,回収を指示している。
著者
鍋島 俊隆 野田 幸裕 平松 正行 毛利 彰宏 吉見 陽 肥田 裕丈 長谷川 章 間宮 隆吉 尾崎 紀夫 山田 清文 北垣 伸治
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児・学童期において問題視されている心理社会的ストレスを想定し、幼若期マウスに社会的敗北ストレスを負荷し、社会性行動について評価した。幼若期マウスは心理社会的ストレスに対して、成体期マウスに比べて脆弱であり、成体期まで持続する社会的行動障害を示した。社会的行動障害モデル動物としての評価系を確立できた。この動物の社会性行動障害には、グルココルチコイド受容体の活性化、モノアミン作動性神経系およびグルタミン酸作動性神経系の遺伝子発現変化に伴って、これら神経系の機能異常が関与していることが示唆された。
著者
毛利 彰宏 野田 幸裕 鍋島 俊隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.141-146, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

水探索試験は,絶水していないマウスを一度だけ給水ビンのある環境に暴露した時,その中にある給水ビンのノズルの位置について覚えているかどうかを指標にする学習・記憶試験である.ノズルの位置に対する記憶は自由な探索行動の中で水に対する強化効果なしに獲得されるため,動物の潜在的な学習能力(潜在学習)を反映すると考えられている.グルタミン酸機能低下仮説に基づいた統合失調症様モデル動物[N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬のフェンシクリジン(PCP)を急性あるいは連続投与した動物およびNMDA受容体サブユニット遺伝子欠損マウス]は潜在学習障害を示すため,潜在学習にはNMDA受容体が関与していると考えられる.特にPCP連続投与マウスでは前頭皮質ドパミン作動性神経系の機能低下が認められ,ドパミンD1受容体を介するNMDA受容体機能の低下が潜在学習障害の発現に関与していることが示唆されている.ノルアドレナリン作動性神経機能を低下させたマウスやドパミンおよびノルアドレナリンの合成能が低下しているチロシン水酸化酵素(TH)遺伝子変異マウスにおいても潜在学習障害は認められる.一方,ドパミン作動薬によっても潜在学習は障害される.この障害はドパミン作動性神経機能の亢進によっておりドパミンD2受容体を介したものであると示唆されている.このような潜在学習障害は頭部外傷モデル動物において認められる.受容体以降の細胞内情報伝達系の潜在学習における役割についてはカルシウムシグナルのセカンドメッセンジャーであるCa2+/calmodulin kinaseII(CaMKII),その下流のcyclic AMP response element binding protein(CREB)が関与していることが,特異的阻害薬や遺伝子変異マウスを用いた研究において報告されている.これらシグナル伝達に対して抑制作用をもつノシセプチンは潜在学習を障害する.このように潜在学習は多くの神経系の相互作用により細胞内情報伝達が変化し,形成されるものと考えられている.
著者
海老原 史樹文 鍋島 俊隆 髙田 耕司 阿部 訓也 間宮 隆吉
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

抗うつ薬の評価法として用いられる尾懸垂試験における無動行動を制御する遺伝子Usp46を中心として、マウスの行動障害に関わる遺伝要因及び遺伝と環境との相互作用について分析し、その生理生化学的メカニズムを解明することを目的とした。その結果、Usp46は脳の様々な領域で発現し、GABA神経系を介して多様な行動に影響を及ぼすことが示された。また、Usp46変異マウスはストレスに対して脆弱であり、養育活動も低下するが、適正な養育活動を受けて成長すると、正常な養育行動が発現することが明らかになった。