著者
渡邉 暢浩 高橋 真理子 宮本 直哉 村上 信五 井上 ひとみ 出口 正裕 関谷 芳正 井脇 貴子
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.354-359, 2006-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9

HiRes 90K® Bionic Ear implantは米国アドバンスト・バイオニクス社の新しい機器であり, 米国食品医薬品局の承認を受け, 本邦以外の世界で採用されている。特徴として柔らかくしなやかで, 薄い形状であり, 手術侵襲が軽減されていることやこれまでの8チャンネルから16チャンネルに倍増していること, 新しいコード化法を取り入れていることなどが挙げられる。今回4名の中途失聴成人 (男性3名, 女性1名, 年齢64歳から74歳) に本機器を手術する機会を得, 特に術中, 術後に問題はみられなかった。軽度の浮遊感が続いた患者が1名みられたが, まもなくそれも消失した。4名のうち2名においてMAIS (Meaningful auditory integration scale) を行ったところ, 従来のプログラムであるContinuous Interleaved Sampler (CIS) やPaired Pulsatile Stimulation (PPS) よりもHiRes-SやHiRes-Pにおいて明らかに高い値を示した。結果として4名の患者はすべて新しいHiRes® sound processingを選択され, 従来のコード化法を選んだ患者は一人もいなかった。短期観察期間ではあるが, HiRes 90K® Bionic Earimplantは, 欧米での評価もあわせて効果の面でも安全性の面でも現在認可されている人工内耳より優れていると考えられた。
著者
峪 道代 住田 恵子 井脇 貴子 山本 基恵
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.131-139, 1994-12-25 (Released:2009-11-18)
参考文献数
22

大阪府立母子保健総合医療センターにおいて出生した超未熟児の学齢期における言語能力検査を実施した.対象児44名(男20名,女24名)の出生体重の平均は871.6g(SD 158.9),在胎週数の平均は27.2週(SD 1.9)であった.検診時の年齢は7~9歳で,合併障害をもつものが14名含まれていた.知能検査が実施できた43名の平均知能指数は94.4(SD 16.4)で正常範囲内であった.語彙指数の平均は理解86.8(SD 17.3),表出88.1(SD 16.0)で同年齢児に比べて有意に低い成績を示した.口腔器官運動は,巧緻性は低いがoral diadochokinesisは同年齢児と比べて差はなかった.構音の成熟に遅れを示したものは多かったが,特徴的な構音の誤りは認められず,構音障害の出現率は同年齢児と差がなかった.これらの結果は,過去に報告された同様の研究結果と一致するところが多かった.同時に行われた心理,耳鼻科など他領域の検診結果との関連を検討することが今後の課題である.
著者
井脇 貴子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.298-305, 2006-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
22
被引用文献数
4 2

聴覚障害教育がコミュニケーションモードの選択において聴覚口話法と手話の問でデリケートな問題を抱えているさなかに人工内耳が本邦に導入されて約20年, 小児に適応されて約15年が経過した.その間に人工内耳の聴こえの効果は成人例で多く報告されている.また, 小児においても聴取能の改善に関する報告が重ねられており, それを受けて小児の適応基準の見直しも最近検討されている.しかし, 言語発達面からの評価がまだ十分には検討されていない現状がある.今回は「先天性難聴児に対する言語指導の50年の歩みとこれから―コミュニケーションベースの言語教育とリテラシ―」というテーマをいただいたことを契機として, わが国におけるハビリテーション環境における成果を聴取能ぼかりでなく言語発達面からも検討する機会を得た.そこで, これまでの臨床データから小児における人工内耳の成果と問題点, および今後の課題について多少の知見を得たので報告する.
著者
廣田 栄子 井脇 貴子 樺沢 一之 鈴木 恵子 小渕 千絵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

聴覚障害児者の様々な領域での活躍には、聴覚音声情報の制限を視覚情報で収集する技能の向上が重要であり、書記リテラシー(読書き能力)の形成が欠かせない。本研究では、近年の各種先進医療・技術開発による書記リテラシーの改善と達成度・課題について実態を明らかにした。さらに、IT化による書記リテラシー評価・支援システムを開発し、臨床手法としての有用性を実証して、生涯発達の視点での包括的支援に関する知見を得た。