著者
徳永 誠 鵜飼 正二 伊勢 眞樹 永田 智子 宮越 浩一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-308, 2018-04-18 (Released:2018-05-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

日常生活動作(ADL)の改善を比較するには,ADL改善指標の特徴を理解する必要がある.Functional Independence Measure(FIM)利得は,ADL改善指標として本邦で頻用されているが,天井効果という課題があり,層別化や制限が必要になる.天井効果のないFIM effectivenessは,欧米ではFIM利得以上に頻用されている.FIM effectivenessを重回帰分析に用いた報告は少ないが,これを目的変数にした重回帰分析の予測精度は高い.ADL改善を病院間で比較するために数種類の方法が考案されている.ADL評価の信頼性が重要であることを強調したい.
著者
伊勢 眞樹 秋山 仁美 鳴海 浩 中崎 喜英 公文 範行 白方 淳
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-113, 2010-02-15

はじめに リハビリテーション(以下,リハ)医療では,「患者は治療後に生活者として,再び地域に帰り生活機能(住み慣れた場所で,健康に家庭・社会生活が自立している)を継続してゆく」という視点1,2)が重要であり,脳卒中のリハゴールは「生活機能を継続してゆく」ことに尽きる.そのためには,脳卒中の治療として,入院後可能な限り早く自動運動を促し,治療効果を向上させ,不用意な安静を排除して合併症の発症を徹底的に予防することが必要である.脳卒中治療ガイドラインで強く勧められている「急性期からの積極的なリハを行う」3)とはこのことである. 本稿は,岡山県西部医療圏の急性期先進医療基幹病院における急性期のリハ科・リハセンターの機能を前提としたゴール設定の考え方であることをご理解いただきたい.ゴール設定に必要な脳卒中の活動制限の診かた,脳卒中の予後予測,高齢者の機能障害とその対応,リハ治療を解説して,最後にゴール設定について述べる.
著者
宮崎 庄治 伊勢 眞樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.729-729, 2003

【はじめに】診療報酬本体が史上初めて引き下げられた2002年4月の診療報酬改定の中で、リハビリテーション(以下リハ)料も大きく体系が見直された。リハ部門は減収した施設が多い状況で、厚生労働省は「リハ全体では据え置きの改定」と説明してきた。その意味は二木によれば、_丸1_理学・作業療法の点数減を原資に言語聴覚療法の点数増と、_丸2_慢性期リハの点数・回数引き下げを原資に急性期リハの点数を引き上げたということになる。発症後早期からの急性期リハは手厚く評価されているといわれる中で、実情はどうなのかを当院の半年間のデータを提示して報告する。【現状】改定後の2002年4月から9月までの理学作業・言語聴覚療法のうち1単位を4月以前の簡単、2単位を複雑に換算し、各療法の件数を昨年同月と比較した。理学療法では、複雑と簡単の合計件数は9月を除いて昨年並みから昨年比最高20%増しと順調であったが、点数では逆に昨年を下回り昨年に比べ10%以上の低い値を示した。作業療法では、件数は昨年を上下しているが、点数は件数で昨年比17%増しの7月に昨年比1%アップした他は10%以上ダウンしている。言語聴覚療法は、件数では6月以外は昨年を1%から22%の範囲で上回った。点数では大きく昨年を上回り最高119%増しの値を示した。全体では、件数で昨年比17%増の7月に点数でも昨年を4%上回った以外は点数で昨年より4%から11%減となった。【考察】石川によれば、今回の改定では発症後90日までは厚生労働大臣の定める患者では早期加算料の上乗せと、70%の減額算定なしの制度により患者1人当りの診療稼動額の上限は7.0%から21.0%増加している。したがって計算上は発症後90日までの早期加算算定可能な患者に対し1日に個別6単位を実施すると、増収が図れる筈である。平均在院日数16.5日(02年9月度)の急性期病院である当院で、昨年に比し減収となっている原因は実はここにある。発症・手術直後の病状の不安定な時期に、ICUやCCUを中心にベッドサイドで行なう早期リハの対象者に、1日6単位の適応患者はほとんどいない。各療法における複雑(2単位)の割合は2002年9月では理学・作業・言語聴覚の順に18%、30%、36%である。 また、請求単位数に占める早期加算の割合は4月以降8月までの間で40%台を推移し、半分を超えない。開腹・開胸術後や骨折後など早期加算の対象疾患が拡大したとはいえ、神経難病や内科疾患は加算対象外である。【まとめ】4月の診療報酬改定後の、急性期病院におけるリハ部門の収益の動向を報告した。手厚く評価されていても昨年同月に比べ、実施件数は増加しているにもかかわらず収益では減収となった。全身状態の不安定な急性期の患者の特徴が影響している。また、容易に寝たきりになる恐れのある高齢者では、加算対象の疾患を見直す必要があると考える。
著者
吉村 洋輔 石田 弘 小原 謙一 大坂 裕 伊藤 智崇 吉政 かおり 井上 かよ子 伊勢 眞樹 渡邉 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0417, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 人間は歩行中,両側の腕を無意識のうちに振っているが,これは単なる振り子運動ではなく,歩行を円滑に行うために中枢神経系に組み込まれた機構の一つであると考えられている.しかし,実際の生活の中では荷物を持つ,ポケットに手を入れて歩くなど腕を振らないで歩いていることも少なくはない.さらに臨床場面に目を向けると,高齢者や障害者では杖をつく必要があったり,上肢の機能障害のために腕を振れない状態にある者も少なくはない.また,近年では,下肢の振りに合わせて対側ではなく同側の上肢を振った方が歩行速度の改善や歩行耐久性の向上につながることも報告され,いくつかの実証例も存在する.歩行時の上肢の腕振りの状態が歩行動作の歩行率やエネルギー消費にどう影響するかを検討した報告は少なく,特に下肢の筋活動についての比較は見当たらない.ここでは歩行中の腕振りの状態が下肢筋活動にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることにより,今後の歩行指導に役立てることを目的とした.【方法】 対象は研究の趣旨に同意を得られた健常成人8名(平均年齢22.5±0.5歳,平均体重52.7±1.7kg)であり,男女の内訳は男性4名,女性4名であった.各自の快適速度にて10m平地歩行をした際の歩行速度を算出し,その速度にて (1)腕の振りを固定しない自由な歩行(以下,自由歩行群),(2)上肢を同側の大腿部に固定し,腕の振りを制限した歩行(以下,固定歩行群)をそれぞれトレッドミル上にて30分間行った.その後,それぞれの条件下での歩行時の右大腿直筋(以下,RF),右大腿二頭筋(以下,BF),右前脛骨筋(以下,TA),右外側腓腹筋(以下,GL)の筋活動を表面筋電計(キッセイコムテック社製,Vital Recorder 2)にて計測し,付属のソフトであるBIMUTAS IIにて解析を行った.なお,両群での筋活動をフットスイッチからの信号により立脚相と遊脚相に分けてそれぞれを比較した.なお,筋疲労の蓄積を考慮し,自由歩行群と固定歩行群の計測には3日以上の間隔をあけて実施した.筋活動の比較は各筋の最大随意収縮値を100%として正規化し%MVCとして3歩行周期分の平均にて比較検討した.統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS 17.0 J for Windows(エス・ピー・エス・エス社製)を用いて,Wilcoxon符号順位和検定を行い,危険率5%未満をもって有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に本研究の趣旨と目的を文書にて十分説明した上で協力を求め,同意書に署名を得た.【結果】 自由歩行群の30分トレッドミル歩行後のRF,BF,TA,GLの筋活動は,立脚相ではそれぞれ13.6±10.3(%),15.1±16.9(%),11.2±5.5(%),60.4±41.9(%)であり,遊脚相では12.4±14.0(%),18.4±14.3(%),22.7±6.8(%),15.4±9.0(%)であった.固定歩行群の30分歩行後のRF,BF,TA,GLの筋活動は,立脚相ではそれぞれ10.7±8.4(%),8.8±7.6(%),11.3±3.5(%),53.5±25.9(%)であり,遊脚相では6.1±4.2(%),12.0±5.2(%),20.7±6.8(%),18.2±21.6(%)であった.自由歩行群と固定歩行群の歩行後の各筋の筋活動の比較では,RFの立脚相では有意差を認めなかったが,遊脚相では有意差を認めた.BF,TAにおいては立脚相,遊脚相ともに有意差を認めなかったが,自由歩行群に比べ固定歩行群では筋活動が低値である傾向を認めた.GLでは両群間の立脚相においてその筋活動に有意差を認めた.【考察】 遊脚相におけるRFと立脚相におけるGLの筋活動は歩行周期の中で特にその働きが重要であるが,自由歩行群に比べ固定歩行群では,それらの筋活動において有意な低下を認めた.その他の筋の活動においても,固定歩行群では低値を示す傾向にあった.長い時間の歩行においては,上肢の振りを下肢の振りに合わせた方が下肢筋への負荷や疲労が少ないことを示唆する結果となった.なんば歩行と呼ばれる腕振りを同側下肢の振り出しに合わせた歩行様式ではエネルギー消費や酸素摂取量が変化することも報告されており,陸上競技などでのコーチング内容として紹介されることも多い.さらに,日常場面や臨床場面では上肢の動きが制限される場面もある.また理学療法治療場面では,下肢筋力や筋持久力が低下している患者も多いが,そのような患者がある程度以上連続して行える歩行能力の獲得には腕振りの状態を考慮する必要があるといえる.【理学療法学研究としての意義】 連続歩行の際に腕振りを制限することによる下肢機能への影響を下肢筋活動の観点から示すことができた.筋力低下や廃用症候群などにより歩行障害を呈する患者への歩行練習を指導する際の基礎的資料となり得ることから,理学療法学研究としての意義があるものと考えられる.