著者
畑 明美 緒方 邦安
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.6-12, 1979-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

漬け物原料としてハクサイ,キャベツ,セイサイ,キュウリを用いて塩漬け,糠漬け製品を作り漬け込み時における硝酸塩,亜硝酸塩含量の変化を調べた。ハクサイ,キャベツを塩漬けした場合,漬け込み後,ハクサイでは3日,キャベッでは4日までは材料中の硝酸塩は減少し,漬け汁中の硝酸塩は増加した。その後キャベツと同漬け汁ではやや増加がみられたが,ハクサイでは変化しなかった。亜硝酸塩の生成はハクサイでは漬け込み4日後,キャベツでは5日後に最高に達し,以後急速に減少し,8日後,6日後にはそれぞれ僅少となった。ハクサイ塩漬けにアルコールを添加したものでは,亜硝酸塩の生成量が少なく,キャベツに酢酸を添加した場合,亜硝酸塩はまったく生成されないことを認めた。セイサイの塩漬けもハクサイやキャベツと同様な硝酸塩含量の消長がみられたが,亜硝酸塩生成量は比較的少なく,6℃,20℃保存下では6℃の方が多かった。ハクサイ,キャベツの糠漬けでは材料中の硝酸塩は漬かりの進行に伴なって減少したが,糠床中の硝酸塩の増加は緩慢であった。亜硝酸塩の生成は塩漬けに比べ少ない傾向にあった。キュウリの糠漬けでは普通床とアスコルビン酸添加床を作って調べたところ,アスコルビン酸添加床のキュウリ中のアスコルビン酸は増大したが,硝酸塩含量の変化は両床とも大差はみられなかった。市販漬け物の硝酸塩含量は13~1491ppmで亜硝酸塩はコカブ塩漬けで259ppm検出されたが,他はほとんど認められなかった。
著者
緒方 邦安 岩田 隆 茶珍 和雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.143-148, 1959-09-30 (Released:2008-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
2

1. The present study was carried out to confirm the effect of gamma radiation on the inhibition of sprouting of onions during the storage and to investigate the physiological changes following the treatment. Onion bulbs were irradiated with the doses of 3000, 7000, and 12000 r. soon after the harvest (June 28) and at the presprouting period when the dormancy ends, i.e., Sept. 20. 2. The sprouting of onion bulbs was completely inhibited even at the dose as low as 3000 r., and the storage period of treated bulbs was eventually prolonged so long as 4-5 months over ordinary storage period. 3. Inner buds of onion bulbs which were inhibited the sprouting by the irradiation were browned and dead, but the injured parts did not extend to the outside of the buds. In the bulbs which had been irradiated on September 20, the browned parts were somewhat larger than that of the bulbs treated soon after the harvest. It means that the elongation and/or differentiation of the inner buds might have occured during the period, so the irradiation in theearly stages (during the rest period) would be preferable for practical use. 4. The oxygen uptake in the disk part (bottom part) of the bulbs was not directly influenced by the gamma radiation, while, when the control bulbs had increased the respiratory activity after the presprouting period, the increase of respiration in the treated bulbs was remarkably suppressed. 5. Also the contents of sugar and ascorbic acid in the bulbs were not immediately affected by any dose of radiation used in this study. However, when the non-reducing sugar content in the untreated bulbs was gradually decreasing after the bulbs had commenced sprouting, the contents in the treated bulbs were not affected for any change. 6. The characteristic flavor of onion bulbs did not appneciably alter by the irradiation. 7. No significant differences of the concentra-tions of growth promoting and inhibiting substances in the inner buds were found to exist between the irradiated bulbs and the untreated ones.
著者
南出 隆久 垣生 俊夫 緒方 邦安
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.281-287, 1980-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
5 10

キノコ類の収穫後における生理化学的特性と品質保持に関する研究の一環として,本研究では,収穫後の貯蔵温度がキノコ類の鮮度におよぼす影響について調べた。キノコ類として,わが国で生産量の多いシイタケ,エノキタケ,ナメコ,ヒラタケ,ツクリタケを用いた。(1) 収穫あるいは購入後,キノコ類を非密封でポリエチレンフィルム(厚さ0.03mm)に包装し, 1℃, 6℃,20℃に貯蔵し,貯蔵に伴う鮮度変化を調べたところ,大体, 1℃で14~20日, 6℃で10日前後, 20℃で2~3日間で商品性限界となった。(2) 鮮度低下は主に,菌傘の開傘,かっ変退色や菌柄の伸長,かっ変によることがわかった。とくに,ツクリタケ,シイタケはかっ変が顕著に発現し,ポリフェノールオキシダーゼ活性も増大した。(3) キノコ類の呼吸作用は活発で,炭酸ガス排出量は葉菜類と同等か,それ以上であった。(4) 遊離アミノ酸含量ならびにその組成について調べたところ,キノコの種類により組成に相違のあるものの全体として,グルタミン酸,アスパラギン酸とその酸アミドが多くを占めていた。シイタケ,ヒラタケ,ナメコのアミノ酸含量は貯蔵中増加する傾向にあった。
著者
畑 明美 緒方 邦安
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.132-137, 1976
被引用文献数
1

果菜類のナス,ピーマン,メロン,イチゴについて,生育中ならびに貯蔵中の硝酸塩含量について調べた。<BR>(1) ナスの果実の生育に伴い硝酸塩含量は増加し,いわゆる収穫適期に最高になり,夏採りナスでは,その後,完熟期にはやや減少した。部位別の含量分布をみると,果梗側の基部に含量が高く,出荷適期のもので270ppmも含まれており,果頂部はその1/4~1/5の含量であった。貯蔵中,硝酸塩はやや減少するようであるが,低温下では低温障害が生じ,20℃下では貯蔵後6日で一部腐敗果がでて亜硝酸塩の生成がみられた。<BR>(2) ピーマンの果実の硝酸塩含量を7月と8月の採取果で比較すると,収穫初期の7月果に含量が高く後期では約半分となった。生育に伴う硝酸塩の変化については8月収穫の果実でみたが,幼果期から完熟期へしだいに減少した。 1℃, 12℃, 20℃および1℃のCA(O<SUB>2</SUB> 3%: CO<SUB>2</SUB> 3%)下に貯蔵したが,いずれの区も貯蔵1カ月を経過しても硝酸塩量の変化はみられなかった。<BR>(3) メロンでは未熟果が適熟果に比し含量が高かった。とくに皮部に多く,胎座には少なく,食用とする適熟果の果肉部で17ppm程度であった。<BR>(4) イチゴの硝酸塩は約10ppmで果菜類中では少ない方であるが, 0℃および0℃のCA貯蔵でもあまり減少がみられなかった。 CA貯蔵では,かびの発生がおさえられる傾向がみられたが,亜硝酸塩含量は普通空気区とあまり変らなかった。<BR>本実験を行なうにあたり,試料提供など実験に援助をいただいた京都府大附属農場,寺田友良,今井俊夫の両氏に対し,また分析にあたりご協力いただいた川崎俊和氏,竹崎宏氏に深謝します。
著者
緒方 邦安 伊東 卓爾 岩田 隆
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.394-399, 1974-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

コールド・チェーンにおける果実そ菜の品質保持と温度変動の許容度との関係について,今回はホウレンソウとセロリーについて調査した。(1) ホウレンソウの商品性保持期間は1℃区で約5週間,6℃区で約15日,20℃区では3~4日であった。冷蔵遅延区は20℃の影響が強く,1日の遅れは1℃区に比べて約25日間劣った。6℃ 3日→1℃区も約10日間短縮された。冷蔵中断区は20℃下で急激な鮮度低下を示した。また貯蔵温度の変動は著しい品質低下をまねき,商品性保持期間はかなり短縮された。(2) セロリーでは,20℃区は5~6日後に腐敗を生じ商品性を失なつた。6℃区は25日前後が限界であったが,1℃区は約35日間商品性を保持した。冷蔵中断区では,中断後急速に商品性を失った。1℃〓6℃(1日毎)と1℃〓6℃(5日毎)の変温区を比較すると,5日ごとの区が1ごとの区よりも7日近く劣った。(3) ホウレンソウの還元型アスコルビン酸含量は,貯蔵中に減少したが,とくに冷蔵の遅れや中断によって強く影響を受け減少した。(4) セロリーの揮発性成分のGLCパターンは貯蔵温度により大きな影響を受け,とくに20℃区および6℃区での商品性の限界付近でのピークとの著しい増加を認めた。1℃区では28日後でもピークとの増加はなく,逆にピークaの増加を認めた。(5) セロリーの還元糖含量は,1℃区では漸次増加する傾向にあり,6℃区はほとんど変らず,20℃区は減少の傾向を示した。(6) 以上のように,ホウレンソウおよびセロリーは低温要求度が高く,かつ温度変動に敏感に反応することが判明した。したがって,このような青果物では,収穫後ただちに1℃付近の低温でしかも厳密に調整された条件の下で貯蔵を行なう必要があることを指摘した。
著者
伊東 卓爾 岩田 隆 緒方 邦安
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.223-230, 1972
被引用文献数
3

前報で, むきエンドウおよびソラマメが, 外観的にも食味の点でも低温要求度が強く, 収穫当日から0&deg;C付近の低温下で貯蔵する必要のあることが判明した. 本実験は, 食味からみた品質変化の実態と品質低下に関する成分的要因について調査したものである.<br>エンドウおよびソラマメは収穫後, ただちに, 有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵した. 温度処理区は, 1&deg;C, 6&deg;C, および20&deg;Cを基本とし, 冷蔵遅延区, 冷蔵解除区, 変温区などを設けた.<br>1. エンドウの食味について対比較嗜好試験を行なつたところ, 20&deg;Cでは1日で明らかな食味の低下がみられた. 6&deg;Cでも食味低下はかなり急速であつた. 冷蔵遅延区, 1&deg;C貯蔵から20&deg;Cへの昇温, 変温 (1&deg;C〓6&deg;C) などはいずれも食味の低下を早めた. ソラマメでもほぼ同様の傾向を示した.<br>2. エンドウおよびソラマメともに1&deg;C貯蔵では, 貯蔵前半において全糖含量の増加の傾向がみられた. これに対して20&deg;Cでは貯蔵後1日で1/4~1/2に激減し, 6&deg;C, 10&deg;Cでも数日のうちに急減した. 初期の低温を少し緩和した区 (6&deg;C2日&rarr;1&deg;C), 冷蔵を遅らせた区 (20&deg;C1日, 2日&rarr;1&deg;C) では一たん減少した糖が, 1&deg;Cに変温されると漸次回復した. 冷蔵を中断した区 (1&deg;C11日&rarr;20&deg;C, 25&deg;C) では昇温後1日で急激に減少した. 変温区 (1&deg;C〓6&deg;C) では初期は1&deg;Cと6&deg;Cの中間の値を示したが漸次6&deg;Cに近づいた.<br>3. 中性および酸性アミノ酸含量を測定したところ, エンドウおよびソラマメともに, アラニン&bull;グルタミン酸区分&bull;パリンなどが多く含まれていた. 20&deg;C区ではほとんどのアミノ酸に急激な減少がみられた. アラニンの例では, 20&deg;C2日でエンドウでは1/12, ソラマメでは1/5となつた. 1&deg;Cでは減少の速度はかなり抑制されたが, 6&deg;Cでは不十分であつた.<br>4. ソラマメ切片に, Sucrose-U-<sup>14</sup>C および Alanine-U-<sup>14</sup>C を吸収させ20&deg;Cに保つと, アルコール不溶残さに急速にとり込まれた. 前者はでん粉, 後者はたんぱく質に変わるものと思われる. この変化の速度は, 前述の全糖, アラニンの減少とほぼ一致した. アルコール可溶性区分にもある程度とり込みがみられた.<br>2. 20&deg;Cでは急速に硬化が起こり, 食味の低下を招いた. 1&deg;Cではかなり長期にわたつて硬化を押えることができる. カード&bull;メーターによる測定値は, エンドウでは食味とかなり平行した結果が得られたが, ソラマメでの相関性はよくなかつた.<br>6. エンドウおよびソラマメの急激な食味の低下は, 糖およびアミノ酸含量の減少ならびに硬化の三要因によるところが大きいと思われる. これを防ぐには, 収穫直後からできうる限りの低温処理が必要である.
著者
阿部 一博 緒方 邦安
出版者
japan association of food preservation scientists
雑誌
コールドチェーン研究 (ISSN:02851377)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.104-108, 1976-10-10 (Released:2011-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

この研究は,ナス果実の低温障害に関する研究の一環として,低温障害の発生におよぼす温度ならびに湿度の影響について調べたものである。1) ナス果実を1℃,6℃,10℃,20℃の各温度下に有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵すると,商品性の保存期間はそれぞれ,9,11,21,23日であった.商品性を低下させる主な原因は,1℃,6℃貯蔵では,ピッティングで,10℃,20℃貯蔵では,がく部から始まる腐敗であった。2) ピッティングの発生は,1℃,6℃貯蔵のみでみられ,その発生は適熟果(開花14日)で多く,未熟果(開花5-7日),過熟果(開花24-27日)で少なかった。両貯蔵温度区において冷涼期に収穫された果実では発生は減少し,また一時10℃で貯蔵することによってその後の低温貯蔵中の発生を減少させることができた。3) 1℃の温度下で,乾燥状態の貯蔵区では黒色の陥没が多く発生し,湿潤状態の貯蔵区ではピッティングが多く発生した。光学顕微鏡での観察により,黒色の陥没は表皮細胞の崩壊,ピッティングは柔組織の細胞の崩壊により始まることがわかった。4) ナス果実の貯蔵条件としては,10℃-20℃の温度域で,やや過湿状態がよいと思われる。
著者
岩田 隆 大亦 郁子 緒方 邦安
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.350-358, 1969 (Released:2007-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

前報で, 収穫後の果実の成熟に伴う呼吸型は3種に分類するのが適当であることを述べたが, 本報はこれをエチレンとの関係について検討したものである。一時上昇型 (climacteric 型) としてトマトおよびバナナ, 末期上昇型としてイチゴ•カキおよびモモ, 漸減型果実として温州ミカンを選んだ。(1) トマト緑白色果はエチレン処理によつて着色が促進された。同一圃場から得られた緑白色果でも, 遅い時期に収穫されたもののほうが効果が大であつた。呼吸の climacteric rise はエチレン処理によつて早く現われた。着色果に処理した場合には効果がなかつた。緑白色果を貯蔵すると, 着色に伴つて果実組織内のエチレン濃度が著しく増大し, また, 呼吸上昇以前にかなりの水準に達していた。(2) バナナ緑色果にエチレン処理を行なうと急速に成熟が進んだ。やはり climacteric rise が促進されたがピーク値は自然な climacteric の場合よりもかなり大きくなつた。(3) イチゴは, 緑色が消失して白色に近い状態となつた果実を収穫し, エチレン処理を行なつたが, 着色や軟化の進みかたに影響はなかつた。呼吸量についても処理効果はみられなかつた。果実組織内エチレン濃度は白色果でかなりの値となり, 以後はあまり変わらないようであつた。(4) モモ未熟果にエチレン処理を行なつても, 軟化の進展に影響はなく, 呼吸量もほとんど変わらなかつた。果肉組織内エチレン濃度は, かなり未熟な段階でも高い値となつた。(5) カキ未熟果はエチレン処理によつて急速に着色し, 軟化が進んだ。渋ガキは脱渋された。呼吸量は未熟果, 熟果ともにエチレン処理によつて著しく増大した。果肉組織内エチレン濃度は, かなり軟化した段階でやや大きくなつたが, 全般に低い値であつた。(6) 温州ミカン未熟果はエチレンによつて黄化が促進された。呼吸量は未熟果, 熟果とも処理によつて著しく増大した。エチレン処理によつて呼吸の増大した果実から, エチレンを除去すると, 呼吸量は無処理のものと同じ水準に戻り, これにエチレンを処理すると, また増大した。果実内エチレン濃度は全般に低い値であつた。(7) エチレン処理の効果の有無は, 処理時の果実内エチレン濃度が生理的に活性な値にあるかどうかによるものであり, エチレン処理に対する反応から climacteric の有無を区別することはできないと考えられた。
著者
緒方 邦安
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.470-481, 1963-11-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
61
被引用文献数
2