著者
柏 祐太郎 大平 雅雄 阿萬 裕久 亀井 靖高
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.669-681, 2015-02-15

本論文では,大規模OSS開発における不具合修正時間の短縮化を目的としたバグトリアージ手法を提案する.提案手法は,開発者の適性に加えて,開発者が一定期間に取り組めるタスク量の上限を考慮している点に特徴がある.Mozilla FirefoxおよびEclipse Platformプロジェクトを対象としたケーススタディを行った結果,提案手法について以下の3つの効果を確認した.(1)一部の開発者へタスクが集中するという問題を緩和できること.(2)現状のタスク割当て方法に比べFirefoxでは50%(Platformでは誤差が大きすぎるため計測不能),既存手法に比べFirefoxでは34%,Platformでは38%の不具合修正時間を削減できること.(3)提案手法で用いた2つの設定,プリファレンス(開発者の適性)と上限(開発者が取り組むことのできる時間の上限)が,タスクの分散効果にそれぞれ同程度寄与すること.
著者
中川 尊雄 亀井 靖高 上野 秀剛 門田 暁人 鵜林 尚靖 松本 健一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_78-2_89, 2016-04-22 (Released:2016-06-22)

本論文は,NIRS (Near Infra-Red Spectroscopy; 近赤外分光法)による脳血流計測を用い,開発者がプログラム理解時に困難を感じているかの判別を試みた我々の先行研究(レター論文)を発展させたものである.本論文では,20名の被験者に対して,難易度の異なる三種類のプログラムの理解時の脳血流を計測する実験を行った.実験が中断された3名を除く17名中16名において,(1)難易度の高いプログラムの理解時に脳活動がより活発化するという結果(正確二項検定, p < 0.01)が得られた.また,(2)被験者アンケートによって得られた難易度の主観的評価と,脳活動値の間には有意な相関(スピアマンの順位相関係数 = 0.46, p < 0.01)がみられた.
著者
角田 雅照 戸田 航史 伏田 享平 亀井 靖高 ナガッパン メイヤッパン 鵜林 尚靖
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_129-2_143, 2014

本研究では,上流工程の活動実績に基づく工数見積もりに着目し,その見積もり精度を定量的に評価する.具体的には,上流工程での実績工数を説明変数とする開発総工数見積もりモデルを作成し,ソフトウェア規模に基づく工数見積もりモデルと精度を比較する.さらに,実績工数とソフトウェア規模の両方を説明変数とした場合のモデルとも比較する.実験ではISBSGデータセットを用い,計画工程と要求分析工程を上流工程とみなしてモデルを構築した.実験の結果,計画・要求分析の合計工数とソフトウェア規模の両方を説明変数として用いることにより,見積もり精度が最も改善する(<I>BRE</I>(Balanced Relative Error)平均値が148.4%から75.4%に改善する)ことがわかった.
著者
角田 雅照 伏田 享平 亀井 靖高 中村 匡秀 三井 康平 後藤 慶多 松本 健一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.874-881, 2011-12-15 (Released:2012-02-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本稿では,時空間情報(位置,移動時間,移動距離)と動作に基づく認証方法を提案する.ユーザは時空間情報で定義された特定の認証点において,特定の動作を行うことにより認証に成功する.ただし,時空間情報を認証に用いる場合,認証に時間が掛かり,やり直しが容易ではないため,正しいユーザが認証に失敗する確率を抑える必要がある.そこで,認証行為の部分的な誤りを許容する,部分一致認証を提案する.また,時空間文字を用いて安全性の評価方法を定式化するとともに,提案手法が安全性において有効であることを実験により示す.実験により提案方法の安全性を評価した結果,本人拒否率は0.233%,他人受入率は0.010%となった.
著者
小須田 光 亀井 靖高 鵜林 尚靖
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_131-4_140, 2015

本論文では,ユーザによるクラッシュレポートの送信を促すために,ユーザが送信したクラッシュレポートの開発者による利用に関する知見を示す.そうすることで,開発者にとっては不具合発生状況のより正確な把握,ユーザにとっては不利益を被っている不具合の優先的な修正といった恩恵をもたらすことが期待できる.本論文では,ユーザから送信されたクラッシュレポートに対して,クラッシュレポートの送信頻度と関連付けされる割合との関係や,関連付けられているクラッシュレポートが関連付けまでに要するクラッシュレポートの送信件数に関して調査を行った. Firefoxを対象に行ったケーススタディの結果,送信されたクラッシュレポートが関連付けられている割合は約63%であることや,不具合に関連付けられているクラッシュタイプの90%は,1,000件以内のレポートが送信される間に関連付けられていることがわかった.
著者
塩塚 大 鵜林尚靖 亀井 靖高
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.631-643, 2012-02-15

プログラマはデバッグに多くの時間を費やす傾向がある.プログラマはエラーの現象をチェックしたり,様々なコード上の箇所を行き来したり,あるいはバグ修正履歴を探索したりして,コードを修正する.このような一連のデバッグ作業を自動化することができれば,他の生産的な作業に時間を割くことができる.本論文では,この問題に対処する方法として,デバッグ支援のための関心事指向推薦システムdcNavi(Debug Concern Navigator)を提案する.dcNaviでは,リポジトリに含まれるプログラム情報やテスト結果,および修正履歴を活用することで,デバッグの関心事に応じた適切なヒントを提供する.本論文では,Eclipseプラグインプロジェクトに関する9つのオープンソースリポジトリを対象に,再利用性の観点からバグ修正履歴に基づいた推薦の有効性についても評価する.Programmers tend to spend a lot of time debugging code. They check the erroneous phenomena, navigate the code, search the past bug fixes, and modify the code. If a sequence of these debug activities can be automated, programmers can use their time for more creative tasks. To deal with this problem, we propose dcNavi (Debug Concern Navigator), a concern-oriented recommendation system for debugging. The dcNavi provides appropriate hints to programmers according to their debug concerns by mining a repository containing not only program information but also test results and program modification history. In this paper, we evaluate the effectiveness of our approach in terms of the reusability of past bug fixes by using nine open source repositories created in the Eclipse plug-in projects.
著者
柿元健 門田暁人 亀井 靖高 〓本真佑 松本 健一 楠本 真二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.1716-1724, 2009-07-15
被引用文献数
2

ソフトウェアの信頼性確保を目的として,faultの有無を推定するモデル(faultproneモジュール判別モデル)が数多く提案されている.しかし,どのようにテスト工数を割り当てるのかといったfault-proneモジュール判別モデルの判別結果の利用方法についての議論はほとんどされておらず,信頼性確保の効果は不明確であった.そこで,本論文では,faultの有無の判別,テスト工数の割当て,ソフトウェア信頼性の関係のモデル化を行い,TEAR(Test Effort Allocation and software Reliability)モデルを提案する.TEARモデルにより,与えられた総テスト工数の枠内で,ソフトウェア信頼性が最大となるような(モジュールごとの)テスト工数割当ての計画立案が可能となる.TEARモデルを用いてシミュレーションを行った結果,推定される判別精度が高い,もしくは,fault含有モジュールが少ない場合には,fault-proneモジュールに多くのテスト工数を割り当てた方がよく,推定される判別精度が低い,もしくは,fault含有モジュールを多く含む場合には,判別結果に基づいてテスト工数を割り当てるべきではないことが分かった.Various fault-prone detection models have been proposed to improve software reliability. However, while improvement of prediction accuracy was discussed, there was few discussion about how the models shuld be used in the field, i.e. how test effort should be allocated. Thus, improvement of software reliability by fault-prone module detection was not clear. In this paper, we proposed TEAR (Test Effort Allocation and software Reliability) model that represents the relationship among fault-prone detection, test effort allocation and software reliability. The result of simulations based on TEAR model showed that greater test effort should be allocated for fault-prone modules when prediction accuracy was high and/or when the number of faulty modules were small. On the other hand, fault-prone module detection should not be use when prediction accuracy was small or the number of faulty modules were large.
著者
吉村 巧朗 亀井 靖高 上野 秀剛 門田 暁人 松本 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.307, pp.85-90, 2009-11-19
被引用文献数
1

デバッグ作業は,作業に従事する開発者ごとに効率に大きな違いが見られる.デバッグにおける開発者の行動から効率に影響を与えている要因を明らかにできれば,教育や支援に役立てることができる.そこで本研究では、デバッガを使用したデバッグ行動について分析し,上手な人と下手な人の間にどのような差異が存在するのか明らかにすることを目的とした.そのアプローチとして,多くのデバッガが実装しているブレークポイント機能に着目し,その使用履歴よりプログラマの特徴を分析した.150行程度のJavaプログラムを題材とした実験の結果,次のような知見が得られた.デバッグの下手な人は,連続した行にブレークポイントを設置する傾向がある.また上手い人には,ブレークポイントを用いた実行を頻繁に行う傾向がある.
著者
角田 雅照 戸田 航史 伏田 享平 亀井 靖高 ナガッパン メイヤッパン 鵜林 尚靖
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_129-2_143, 2014-04-24 (Released:2014-05-22)

本研究では,上流工程の活動実績に基づく工数見積もりに着目し,その見積もり精度を定量的に評価する.具体的には,上流工程での実績工数を説明変数とする開発総工数見積もりモデルを作成し,ソフトウェア規模に基づく工数見積もりモデルと精度を比較する.さらに,実績工数とソフトウェア規模の両方を説明変数とした場合のモデルとも比較する.実験ではISBSGデータセットを用い,計画工程と要求分析工程を上流工程とみなしてモデルを構築した.実験の結果,計画・要求分析の合計工数とソフトウェア規模の両方を説明変数として用いることにより,見積もり精度が最も改善する(BRE(Balanced Relative Error)平均値が148.4%から75.4%に改善する)ことがわかった.