著者
佐野 浩一郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.71-77, 2008-09-11

この論文では, 不平等が経済成長にあたえる影響を分析する。90年代以降, 内生的成長理論が発展する過程で経済成長と不平等の関係を扱う研究が多数発表された。それらの研究は, 伝統的な開発経済学における見解とは逆に, 不平等であるほど経済成長率は低くなる, というインプリケーションを持っていた。しかし, この逆相関関係は決定的な支持を得られているとは言い難い。理論的にも実証的にも逆の結論を持つ研究が存在するからである。さらに, 不平等と経済成長の間には非線型的な関係があることを示唆する研究も存在する。そこで, この論文では不平等と経済成長の間の逆U字型の関係を理論的に導出することを試みる。基礎となる研究はAlesina and Rodrik (1994) である。彼らのモデルでは, 生産要素として財政支出を考慮しており, その財政支出の水準は多数決投票によって決定される。不平等度が高まるほど, 中位投票者の選好する税率が高まり, 成長率が低くなる。このモデルを拡張し, 財政支出に外部効果があることを想定すると, 投票者が財政支出の生産性向上効果を過小評価することになり, 結果として不平等と成長率の間に逆U字型の関係が生じる事になる。
著者
佐野 浩 弓取 修二 進藤 秀夫 日下部 祐子 井田 久雄 北田 貴義
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.26-31, 2005
被引用文献数
2 3

公的資金によって推進された研究開発プロジェクトについては,進捗段階における評価のみならず,プロジェクト終了後の状況を追跡的に調査し,得られた社会的・経済的波及効果やプロジェクトの運営管理を評価し,国民に対するアカウンタビリティの向上を図るとともに,技術開発戦略やプロジェクトの運営管理手法を改善していくことが重要である.本稿では,プロジェクトの追跡調査・評価手法についての検討結果を報告するとともに,試行的に行っている追跡調査・評価の途中経過を踏まえ,追跡調査・評価手法についての提案を行った.
著者
佐野 浩孝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大きさ数μm程度の、いわゆるメゾスコピック超伝導体における渦糸状態について調べるものである。特に本年度は微小な正方形試料において発生が予想されている反渦糸の観測に焦点を絞って実験をおこなった。反渦糸の観測のためには局所的な磁場分布の測定が不可欠である。そのための手法として、本研究ではHall magnetometryを採用した。これは、半導体2次元電子系基板より作製したHall cross上に微小超伝導体試料を作製し、試料直下での磁場の変化をHall crossのHall抵抗の変化として観測するというものである。特に本研究では、磁場測定の空間分解能を高めるため、Hall crossの端子を細分化した多端子Hall crossを用いた。また、個々の渦糸をより判別しやすくするため、正方形の四隅に微細孔をあけた試料を用いた。正方形試料直下での磁場分布の変化から試料内部での渦糸分布について調べた。その結果、試料に渦糸が出入りする様子を、その位置まで含めて観測することができた。その結果から試料内部における渦糸分布の同定に成功した。しかし、当初の目的であった反渦糸の観測には成功しなかった。これはおそらく反渦糸が生成していなかったためと考えられる。以上の成果について、海外での学会で2件、国内の学会で1件の発表をおこなった。そして、今年度中にさらにもう1件国内の学会で発表をおこなう。海外での学会での発表のうちの1件については会議録の形で論文として公表されることが決定している。また、昨年度までおこなっていた超伝導ネットワークに関する論文が本年度初めに出版された。現在は新たに論文を執筆中であり、完成し次第投稿予定である。本年度は大学院博士課程の最終年度にあたるため、上記の研究成果も含めて博士論文を作成した。審査の結果、3月23日付で東京大学より博士(理学)の学位が授与されることとなった。
著者
高橋 庸哉 新保 元康 土田 幹憲 佐藤 裕三 小笠原 啓之 割石 隆浩 神林 裕子 佐野 浩志 坂田 一則 細川 健裕 土門 啓二 松田 聡 本間 寛太 伊藤 健太郎 杉原 正樹 中島 繁登 吉野 貴宏
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

開発してきた雪に関するWebコンテンツの授業での普及を図るために、コンテンツの拡充と共に児童向けワークシート及び教員向け学習プラン集、教員研修プログラムの開発を行った。ワークシートを授業で利用した教員は5段階で平均4.8と高く評価した。教員研修プログラム後に参加小学校教員の45%はこのコンテンツを利用しており、プログラムが有効に機能した。また、コンテンツが授業に役立ったかについて5段階で4.5と答えており、Webコンテンツの内容妥当性も示された。
著者
佐野 浩 永岡 利彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.385-393, 2002-05-31

東北北部太平洋側の奥羽山脈と北上山地の山間を流れる北上川流域では,夏に湿った南風が卓越する場合がある.このとき,北上川流域では夜間に層雲が広がって曇るが,日の出後数時間で層雲が消散して晴れる「朝曇り」現象が報告されている.今回,北上川流域で起きる「朝曇り」についてNHM統合環境(パソコン版気象研究所非静力学モデル)を使って数値実験し,下層雲の発現・解消の仕組みを調べた.その結果,(1)奥羽山脈で起きる斜面上昇風によって,仙台平野北西部に下層雲が生成される,(2)夜間の陸面温位の低下に伴い北上川流域に下層雲が広がる,(3)日の出後,陸面温位が上昇するにしたがって北上盆地の北部と仙台平野西部から下層雲が消散する,などが明らかになった.