著者
冨山 佳昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.2393-2399, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
10

特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病[idiopathic(or immune)thrombocytopenic purpura:ITP]は血小板に対する自己免疫疾患であり,その治療はこの10年で大きく進歩している.「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版」(厚生労働省難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班「ITP治療の参照ガイド」作成委員会,2019年)が公開された.慢性ITPに対する治療の目標は,血小板数を正常に戻すことではなく,重篤な出血を予防し得る血小板数を維持することである.血小板数を正常化するための過剰な薬剤(特に副腎皮質ステロイド)の長期投与は,その副作用のため,患者QOL(quality of life)を低下させるため,避けるべきである.ファーストライン治療は,Helicobacter pylori除菌及び副腎皮質ステロイドである.セカンドライン治療として,トロンボポエチン受容体作動薬,リツキシマブならびに脾臓摘出術(脾摘)を位置付け,これらの薬剤は,それまで脾摘が唯一の治療法であった難治例に対しても有効である.それぞれの治療法の長所・短所を勘案すると共に,個々の患者の状況・状態を把握し,患者自身の希望を勘案したうえで選択する必要がある.