著者
曽山 奉教 吉田 秀人 下村 大樹 高橋 幸博
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-04-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

体外循環時のヘパリン化血における血液凝集塊の原因としては、主に血小板凝集・血栓形成説と「いが状赤血球」凝集塊説の2説があるが、機序解明には至っていない。今回、体外循環で生じるアルカレミア環境下で出現する血液凝集塊が「いが状赤血球」に起因することを裏付けるため、体外循環でのヘパリン化血が、アルカレミア環境において血小板凝集能および血液凝固時間に与える影響を検討した。結果、ヘパリンナトリウム血で作製した血小板は、アルカリ負荷(pH9)で粒径25μm以下の小凝集塊を形成したものの、粒径50μm以上の大凝集塊の形成には至らなかった。また、PTおよびAPTTはともにアルカリ負荷(pH9)で有意に延長した。したがって、体外循環時のアルカレミア環境下での血液凝集塊形成に血小板凝集、血栓形成は関与せず、「いが状赤血球」に起因することが強く示唆された。
著者
塙坂 八重 高橋 幸博 川口 千晴 森川 肇 安原 肇 吉田 幸一 吉岡 章
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.23-28, 2004-02-29 (Released:2011-03-09)
参考文献数
11

われわれは, 播種性血管内凝固 (disseminated intravascular coagulation : DIC) を合併した病的新生児に対する蛋白分解酵素阻害薬nafamostat mesilate (Futhan®) の臨床効果を, 同じく蛋白分解酵素阻害薬gabexate mesilate (FOY®) と比較し検討した.対象は1993年1月~2001年12月に当院新生児集中治療部門に入院した低出生体重児および外科症例を含むハイリスク新生児のDIC症24例であった.全例が生後28日未満にDICを発症し, 白幡のDICスコアー3点以上であった.Futhan®投与例とFOY®投与例が各12例であった.両蛋白分解酵素阻害薬ともDICスコアーを有意に低下させ, 血小板数とFDP値を有意に改善させた.Futhan®は新生児のDIC治療に有用であった.しかし, Futhan®投与群の1例に, 腎不全を伴わない高カリウム血症を認めた.Futhan®投与の期間中は血清カリウム値に注意を払う必要がある.
著者
片岡 美香 岡本 貴史 山口 直子 倉本 智津子 西田 幸世 星 順隆 高橋 幸博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.523-528, 2012 (Released:2012-09-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

新生児への血小板輸血は,通常,輸血バックから直接行われず,注射用シリンジを用いている.注射用シリンジでの輸血が,血小板に与える影響をin vitroで検討し,有効かつ安全な輸血法を考える. アフェレシス濃厚血小板製剤を,室温で撹拌したもの(アフェレシスバッグ),分離バッグに分割し攪拌したもの(分離バッグ),注射用シリンジに分離し,空気層を入れ攪拌したもの(空気混入シリンジ),注射用シリンジに分離し,空気を除去し静置したもの(空気除去シリンジ)の性状変化,血小板機能を比較検討した. アフェレシスバッグと分離バッグ保存では,6時間後においても酸素濃度など性状の変化は認められなかった.空気除去シリンジの酸素濃度は,分離後2時間で有意に低下した.二酸化炭素濃度は4時間で有意に増加し,乳酸は増加,pH,血糖および血小板凝集能が低下した.空気混入シリンジの場合,撹拌することで保存による変化を防ぐことができた. 新生児輸血方法として,分離バッグが効果的で安全な方法であった.それゆえ,少量バッグの作成が望まれる.今回は,in vitroのみでの結果であり,輸血後の生存率や回収率などの検討や,臨床的な判断が必要である.