著者
山田 安紀子 出口 利定 小川 仁
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-60, 1985-06-30 (Released:2017-07-28)

本研究は、聴覚刺激に対する乳児の吸啜反応の変化について探ることを目的とした。吸啜反応は、空の哺乳びんの底に取り付けた圧力センサによって計測し、刺激音は、ホワイトノイズと音声の2種類を用いた。同時に行動観察を行ない、吸啜反応結果と併せて検討した。対象は、生後1ヵ月の正常乳児47名とした。実験の結果、聴覚刺激による吸啜頻度の変化は、回復パタンと抑制パタンの2つに大別できた。回復パタンは聴覚刺激による覚醒反応を、抑制パタンは定位反応を反映していると考えられた。刺激の種類による差は行動反応において認められ、特にモロー反射の生起率は、ホワイトノイズの方が音声より有意に高いことが示された。以上から、聴覚刺激が吸啜反応に影響を及ぼすことが示され、吸啜反応を聴力検査の指標として用い得る可能性が示された。
著者
大島 和臣 出口 利定 今泉 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.695, pp.31-36, 2005-02-24
参考文献数
5
被引用文献数
3

高機能の自閉症スペクトラム障害児20名と健常児28名を対象に、音声から話者の意図を理解する能力を検討した。音韻情報(辞書的意味)が肯定的な短文と否定的な短文を、肯定的・否定的どちらかの感情を持って成人女性が話した音声を、皮肉や冗談を表す音声として用いた。韻律課題では話者の感情を、表情-韻律課題では話者の感情と話者の表情を判断した。その結果、両課題において自閉症スペクトラム障害児は課題の正答数が健常児よりも有意に少なかった。また、課題に文脈情報を加えても同じ傾向を示した。この結果は、音韻情報と韻律情報を分離する能力と、韻律情報と表情を適正に統合し話者の発話意図を理解する能力が加齢に応じ発達するものの、健常児よりも低いことが示された。
著者
今泉 敏 横田 則夫 出口 利定 細井 裕司 新美 成二
出版者
広島県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

話し相手の心を理解するコミュニケーション機能を支える脳機構とその発達を研究した。まず、話し言葉から話し相手の心を理解するテスト(音声課題)を作成し、小、中学生、成人合計339名を対象にその能力の発達を調査した。文章による比喩・皮肉文理解課題(文章課題)も行った。その結果、言語的意味と話者の感情とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して、他者の心を理解する能力が小学生から中学生に掛けて有意に上昇し発達するものの、中学生になってもなお成人の成績には達しないことが分かった。特に、からかい音声から話者の発話意図を理解する能力は中学生でも成人より有意に低いものだった。低年齢児の能力を評価するためには音声課題の方が文章課題より適していることが示された。さらに、健常成人24名(男性12名,女性12名)を対象に,感情(「喜び」と「憎しみ」)を込めた音声から,話者の気持ちを判断する場合(感情課題)と語の言語的意味を判断する場合(言語課題)の脳活動をfMRIで解析した。その結果,女性に比較して男性の反応時間は有意に長く、正答率も低かった。脳の賦活パターンには両課題とも性による違いが観測された。感情課題では,心の理論や社会的・倫理的推論で重要な役割を果たす前頭内側部(FMC)が男性でのみ有意に賦活した。左右上側頭回や左下前頭回の賦活も男性のほうが高かった。話し言葉から相手の心を理解する脳機能には性差があり,男性では推論作業が重要であることが示唆された。以上の結果に基づいて、音声から話し相手の心を理解するコミュニケーション脳機能を計測する装置を開発した。この装置によって、言語理解障害、感情認知障害、心の理解障害と、それらの機能の発達障害を検査できることが示された。
著者
出口 利定
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

大学入試センター試験・英語(リスニング)における聴覚認知障害者への特別措置について検討した。聴覚認知障害者にとって有効な特別措置の一つとして、原音声の話速を加工伸張した音声でリスニングテストを実施したところ、有意に高い成績の向上を示した。更に、聴覚認知障害者では、騒音下における受聴明瞭度が健聴者に比べて著しく低下することが判った。この結果は学校教育現場における配慮のあり方を示唆するものである。