著者
中条 武司 中西 健史 前島 渉
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.473-484, 1993-11-25 (Released:2017-06-06)
被引用文献数
3

The early Middle Miocene Togane Formation is one of the Miocene basin-fills in the Setouchi Province of Southwest Japan. Togane sedimentation took place during eustatic sea-level rise in the Early to Middle Miocene. The Togane Formation unconformably overlies the Paleogene Kokufu Volcanic Rocks. The formation is 200m thick, and is lithostratigraphically subdivided into four members in ascending order: the Toganegawa Mudstone, Anegahama Sandstone, Kanaso Conglomerate and Sandstone, and Tatamigaura Sandstone Members. The Toganegawa Mudstone Member (up to 70m thick) is dominated by massive mudstone with a conglomerate unit at the base. The Anegahama Sandstone Member (65m thick) is mainly composed of fine- to medium-grained sandstone with subordinate muddy sandstone and conglomerate. The Kanaso Conglomerate and Sandstone Member (20 to 30m thick) shows a remarkable N-S facies change. In the south, the member is characterized by a thick succession of conglomerates, which interfinger with coarse-grained, pebbly sandstones to the north. The Tatamigaura Sandstone Member (more than 40m thick) consists of fine- to medium-grained sandstone and muddy sandstone. The Togane Formation appears to infill a N-S oriented depression in the basement rocks, with the basin configuration controlled by the preexisting topography. The Togane basin developed due to regional downwarping in the Setouchi Province.
著者
橋爪 正樹 前島 渉 田中 淳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.755-758, 1993-09-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4
著者
田中 淳 前島 渉
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.345-355, 1998-09-25
被引用文献数
1

堆積物重力流は,流下にともなってその性格を変化させ進化していく.重力流の進化には,重力流内部における物質分化と重力流の特性変化が挙げられる.重力流内部における物質分化は,混濁流や土石流内部でよく知られており,そこでは構成物が粒径や比重の差を反映して流れの側方や上下に選別されていく.ニュージーランド南島のマッドクラスト礫岩は,この重力流内部での側方級化をよく記録している.一方重力流の特性変化は,重力流の粒子支持機構そのものの変化を伴う.流れ内への水の取り込みや粗粒物質の堆積,速度の増減などがこの進化を促す.有田層のデルタスロープ堆積物には,重力流の進化のスペクトラムがよく記録されている.このように重力流は,刻々とその性格を変化させながら,進化の各段階を反映した堆積物をその途次途次に堆積し,多様で複雑な堆積物を形成する.
著者
前島 渉
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究で対象とした地層はインド、オリッサ州およびジャールカンド州の石炭-ペルム系タルチール累層、オリッサ州の白亜系アトガー累層、西南日本の新第三紀山陰-北陸区に属する糸生累層および国見累層である。このうちオリッサ州のタルチール累層、アトガー累層および国見累層で重要な成果を得た。タルチール累層の研究では、石炭紀末からペルム紀にかけてのゴンドワナ氷床の衰退と消滅の初期段階において急斜面性ファンデルタが形成され、その過程で氷河の崩壊や山間の氷河湖の決壊が頻繁におこり、高流速かつ浅水深の大規模なシート洪水流が頻発して、射流領域での堆積作用がおこったことが明らかとなった。このようなシート洪水流堆積物には反砂堆起源の中〜大規模な斜交層理がよく保存されている。アトガー累層については、上部扇状地堆積物中に認められる側方への連続性のよい塊状砂岩や弱く成層した礫まじり砂岩がシート洪水流堆積物であると考えられ、礫まじり砂岩の成層構造がシート洪水流内で常流と射流の両領域が繰り返すことによって形成されていったことを明らかにした。国見累層では、扇状地堆積物中の特に下部扇状地起源と考えられる地層に、反砂堆起源の斜交層理をともなう射流領域のシート洪水流堆積物がよく発達しており、河川流の作用よりはむしろシート洪水の作用の方が卓越したため射流領域の堆積物の地層への保存ポテンチャルが高くなったと考えられる。これは扇状地面の傾斜が交差点近傍で急変し、傾斜が一気に低下することによって河川流の運搬能が急速に衰えて粗粒砕屑物の堆積が一気に起こり、そのため河川チャネルが激しく分岐して浅化してついにはチャネルの形態をも失ってしまったためとみなされる。そのため洪水時には下部扇状地を広くおおうような高流速・浅水深の射流領域のシート洪水がひんぱんに発生したと考えられる。
著者
吉川 周作 三田村 宗樹 前島 渉 兵頭 政幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

三重県志摩半島の鳥羽市相差町,南勢町,大王町,南島町,志摩町,さらに尾鷲市須賀利町に分布する各沿岸湿地において,数mの連続柱状試料を数本採取し,各柱状試料について肉眼での岩相記載や剥ぎ取り試料の実体顕微鏡岩相観察を行った.このうち,相差では有機質泥からなる湿地堆積物中に多くのイベント砂層を見出した.この相差で発見した各イベント堆積物の分布・特徴を詳細に解析するため,合計9本の柱状堆積物試料を採取するとともに,岩相記載のほかに,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,珪藻・有孔虫・貝形虫の微化石分析を行った.主に岩相観察、有孔虫・貝形虫分析によって,相差の湿地堆積物に挟まれる12枚の砂層(OS-1…SO-12と呼ぶ)は,それぞれ級化構造など津波堆積物の特徴を有し,比較的広域によく連続することから,津波によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物である可能性を指摘した.そして,このうち5枚の砂層は,比較的深い中部浅海帯の海底に生息する底生有孔虫を産出することを明らかにした.また、珪藻分析および^<14>C年代測定によって,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と堆積環境が変化したこと,12枚のイベント砂層は,7千年前以降の湿地堆積物に300〜500年周期で挟まれることを示した.以上の結果,鳥羽市相差では、東海・東南海地震によって来襲した津波は300〜500年周期で津波堆積物を残したものと判断した.