著者
村上 晶子 井上 淳 吉川 周作 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.11-18, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

大阪城外堀堆積物に含まれる微粒炭・球状炭化粒子 (SCPs) の分析と球状炭化粒子の表面構造の観察を行った. 微粒炭分析からは, 粗粒の微粒炭濃集層準を見出し, この層準が1945年大阪大空襲の火災であることを指摘した. 球状炭化粒子分析では, 球状炭化粒子の時系列変化の解読から, 化石燃料 (石炭・石油) 使用量の歴史的変化が解明できることを示した. 球状炭化粒子は堆積物中に極めて良好に保存され, 短時間・簡単に分析できる利点を持っていた. この球状炭化粒子は過去の化石燃料の燃焼を解読する上で重要な役割を果たすと考えられる. 今後, 球状炭化粒子に関する研究は, 産業革命以降を示す「Anthropocene (Crutzen, 2002)」の時代の地質学的研究を行う上で重要な指標となることを指摘した.
著者
内山 高 熊井 久雄 吉川 周作 輿水 達司
出版者
山梨県環境科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は山中湖で採取した湖底堆積物(YA-1,2コア)のテフラ層序を基に,過去数万年にわたる富士山の火山活動史・噴火史を解明することを目的に行った.また併せて,微化石分析を行い,噴火活動の影響についても明らかにした.山中湖コアYA-1,2中のテフラについて,その特徴を明らかにし,陸上部に分布するテフラとの比較を行った.その結果,陸上部のテフラと概ね対応がついたが,一部未確認のテフラがあることが明らかになった.広域火山灰として,YA-1コア深度約7.4mでKg(約3000年前)に,YA-1コア深度約11.8mとYA-2コア深度約6mでK-Ah8(約7000年前)に対比可能なテフラを見出した.また,炭素14年代として,YA-1コア深度3.4mで1,535年前(暦年補正値,以下同),深度11.5mで約7,015年前,深度14.4mで約12,000年前,またYA-2コアでは深度約13mで約8,990から8,600年前の年代を得た.この結果より,YA-1コア深度約0.8mのスコリア層は宝永スコリアに対比される.火山噴火の影響を明らかにするために,山中湖湖心において採取したYA-1コアを用いて,花粉化石と植物珪酸体等の微化石分析を行った.花粉分析の結果から,木本類への火山噴火の顕著な影響は読み取れなかったが,草本類花粉化石や胞子がみられない層準は降下スコリア等のテフラが多数挟在し,その間の堆積物も上下に比べると粗粒シルトや極細粒砂分が多くなることから,テフラの噴出により林床植物や草原性植物は影響を受け,裸地が広がり,浸食が大きくなったものと推定される.本研究により,テフラ層序を基に,富士火山の過去数万年にわたる噴火史が明らかになった.また,微化石分析により火山噴火の影響を評価することができた.これらの成果は火山防災ハザードマップの作成等防災上の基礎資料として貢献するものと考える.
著者
北川 陽一郎 吉川 周作 獺越 君代 山崎 秀夫
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-24, 2009-06-30
被引用文献数
2

大阪城内堀から採取された近現代の堆積物試料を用いて高解像度の花粉分析を行った.堆積物中の花粉群集は大阪城周辺および大阪の山地や低地の植生を反映している.また,堆積物中の花粉量は大阪城周辺の花粉飛散量を反映している.代表的な花粉出現率と花粉量に基づいてUA-1からUA-4の4花粉帯を設定した.UA-1(江戸時代末期)は山地には低密度のマツ林が分布していた.また,低地にはムクノキーエノキ群集が分布し,花粉飛散量は少なかった.UA-2(1880年代から1940年代)はマツ林が拡大し,その結果,マツ属の花粉飛散量が増加した.UA-3(1950年代から1960年代)は山地ではマツ林が減少し,大規模なスギやヒノキの植林が行われた.その結果,マツ属の花粉飛散量が減少した.UA-4(1970年代から1990年代)はスギやヒノキの人工林が成長した.加えて,大阪城の開発が行われ,内堀周辺にニレ,ケヤキの植樹が行われた.その結果,スギ,ヒノキタイプ,ニレ属-ケヤキ属花粉の飛散量が増加した.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their 137Cs, 241Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of 137Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (137Cs and 241Am) and charcoal in high concentrations.
著者
増田 富士雄 宮原 伐折羅 広津 淳司 入月 俊明 岩淵 洋 吉川 周作
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.482-488, 2000-07-15
被引用文献数
13 21

神戸沖の大阪湾底で掘られたコアの完新統の部分について, 堆積相解析を行い, 高密度の^<14>C年代値と相対的海水準変動から, 次のような完新世の大阪湾の海況変動を復元した.11000年前に海面高度は約-50 mにあった.海進に伴い後退する三角州はエスチュアリーとなった.海面高度が約-30 mに上昇した9700年前に, 明石海峡での潮流が発生した.海面高度が約-12 mになると, 淀川河口が河内湾に退き, 備讃瀬戸が繋がり, 現在のような瀬戸内海が成立した.この時から約3000年前まで, 大阪湾全体が強い潮流の影響下にあった.5300年前〜5000年前が大阪湾では最も海面が高い時期であった.1700年前頃に, 河内湾が埋め立てられ, 淀川三角州が大阪湾にまで前進し, 1000年前には神戸沖にまでその影響がおよぶようになった.
著者
井上 淳 吉川 周作
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.289-296, 2005-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
23
被引用文献数
4 4

琵琶湖西岸に分布する黒色土から採取した黒色植物片について各種分析を行い,微粒炭(高温被熱によって生成した微細な炭)であるかを検討した.その結果,黒色植物片は被熱生成した炭と同様に,反射顕微鏡下で白く輝く特徴,高い反射率,低いH/C比(水素・炭素比)が認められ,黒色植物片は植物の被熱によって生成された微粒炭であると考えられた.また,反射率やH/C比を基に推定された炭化温度から,微粒炭は林野火災や火入れなどの植物燃焼によって生成したと考えられた.土壌中の微粒炭は,AT火山ガラスの多産層位より上位から含まれ,K-Ah火山ガラスの多産層位付近で最も多く含まれていた.こうした微粒炭量の傾向は琵琶湖湖底堆積物でも認められ,琵琶湖湖底堆積物に含まれる微粒炭の発生源の1つとして,琵琶湖周辺の黒色土分布域が考えられる.
著者
河村 善也 吉川 周作 阿部 祥人 古瀬 清秀 樽野 博幸 金 昌柱 高 星 張 穎奇 張 鈞翔 松浦 秀治 中川 良平 河村 愛
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

東アジアのうち,北海道を除く日本本土では後期更新世~完新世に多くの種類の哺乳類が絶滅しているが,その絶滅期はMIS 3 からMIS 2 にかけてで,大型種だけでなく小型種も絶滅している.絶滅は短期間に急激に起こったのではなく,比較的長い期間に徐々に進行したようである.この地域ではずっと森林が維持され,環境変化が穏やかで,人類の影響もさほど強くなかったことが,そのようなパターンをもたらしたと考えられる.琉球列島では島ごとに絶滅のパターンが異なり,ここでは人類が絶滅に深くかかわっていると推定される.中国東北部では,ヨーロッパでのパターンに似た絶滅が起こったが,中国中・南部では絶滅はそれより限定されたものであったようである.台湾や韓国では,まだ研究が十分ではない.
著者
吉川 周作 水野 清秀 加藤 茂弘 里口 保文 宮川 ちひろ 衣笠 善博 三田村 宗樹 中川 康一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.505-520, 2000-12-01
被引用文献数
17 32

神戸市東灘区魚崎浜で掘削された東灘1,700mボーリングコアの火山灰層序を明らかにした.本コアは,基盤の花崗閃緑岩(深度1,545.7m以深)と,それを不整合に覆うK1-L層・K1-U層から構成される.淡水成のシルト・砂・砂礫主体のK1-L層(深度1,545.7~691.8m)は,朝代火山灰層に対比できるK1-1382火山灰層を挾み,大阪平野地下の都島累層と陸上部の大阪層群最下部・下部下半部に相当する.海成粘土層と淡水成の砂礫・砂・シルトの互層からなるK1-U層(深度691.8~23.3m)は,31層の火山灰層を挾み,大阪平野地下の田中累層と大阪層群下部上半部~段丘堆積層に相当する.本層中のK1-648,K1-566,K1-537,K1-488とK1-486,K1-444,K1-422,K1-351,K1-348ないしK1-347.4,K1-245,K1-223,K1-175,K1-141,Kl-101,K1-26火山灰層は,イエローIIないしIII,ピンク,光明池III,山田III,アズキ,狭山,今熊II,八町池I,八町池II,カスリ,港島I,鳴尾浜IV,八田,甲子園浜III~VI,平安神宮の各火山灰層に対比された.この火山灰対比により,19層の海成粘土層を,それぞれMa-1,Ma0,Ma0.5,Ma1,Ma1.3,Ma1.5,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5,Ma6,Ma7,Ma8,Ma9,Ma10,Ma11(1),Ma11(2),Ma11(3),Ma12層に対比した.
著者
小倉 博之 吉川 周作 此松 昌彦 木谷 幹一 三田村 宗樹 石井 久夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.179-185, 1992-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

大阪平野の上町台地南部の台地構成層中に挾在する火山灰・含有化石の記載・分析ならびに有機物の14C年代測定をおこなった. その結果, 中位段丘層相当層の上町層上部から北花田火山灰, 吾彦火山灰を発見し, それぞれ広域火山灰のK-Tz, Aso-4に対比し, 上町層上部の堆積時期を知る手がかりを得た.さらに, 上町層を不整合に覆う常盤層の存在を指摘し, 平安神宮火山灰が挾在すること, その直下から23,400年BPの14C年代測定値を得たことから, 常盤層を低位段丘層に対比した. 以上より, 従来中位段丘面とされていた本地域の台地面は, 常盤層の堆積面, すなわち低位段丘面であることが明らかになった.
著者
片岡 香子 吉川 周作
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.263-276, 1997-10-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

西日本の四国・近畿・東海地方などの火山灰稀産地域の段丘では,火山灰層の発見は稀で,しかもそれを連続的に追跡することが困難である.そのため,火山灰に注目した層序・編年学的研究は露頭あるいは狭い地域に限定されたものとならざるを得ず,一般的な調査・研究法とはなっていない.このため,火山灰稀産地域における段丘の層序・編年は,火山灰多産地域に比べ精度が悪い.三重県鈴鹿川流域の段丘もまた,このような火山灰稀産地域に属している.そこで,筆者らは従来の地形・地質学的方法に加え,段丘構成層の上位に発達する細粒堆積物に注目して,この堆積物中に極微量に含まれる火山ガラスから火山灰降下の痕跡を見いだした.そして,これらから段丘の層序を検討し,編年を行った.本研究の結果,次のことが明らかとなった.(1)調査地域の段丘面(段丘構成層)は,高位のものから大谷池面(大谷池段丘層)・丸岡池面(丸岡池段丘層)・神戸面(神戸段丘層)・関面(関段丘層)・古廐面(古廐段丘層)に区分され,さらに神戸面および関面は,高位のものから神戸1面・神戸2面・神戸3面,関1面・関2面に細分できる.(2)各段丘構成層の上位にのる細粒堆積物の層相とそれらに含まれる火山ガラスの性質・含有量の特徴,関段丘層に挾まれる姶良Tn火山灰層(25~21ka),神戸段丘層中の海成粘土層などから,大谷池段丘層・丸岡池段丘層は最終間氷期以前に,神戸段丘層は最終間氷期に,関段丘層は最終氷期に,古廐段丘層は最終氷期以降にそれぞれ形成されたと考えられる.今回行った段丘構成層の上位にのる細粒堆積物に極微量に含まれる火山ガラスを用いた層序・編年の試みは,今後,火山灰稀産地域でのより広域な段丘の対比・編年の可能性を示唆する.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
山崎 秀夫 吉川 周作 稲野 伸哉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1419-1425, 2004-12-05
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

隠岐諸島島後の男池から採取した柱状堆積物試料を用い,そこに記録された重金属汚染の歴史的変遷を解読した.隠岐は汚染の発生源から隔離されているので,男池堆積物には大気を経由して運ばれてきた汚染物質が沈降・集積していると考えられる.得られた長さ107 cmのコアの<sup>210</sup>Pb法による堆積年代は,最深部で1890年であった.また,<sup>137</sup>Csの鉛直分布はそのグローバルフォールアウトの時代変化とよく一致した.このことは,このコアが環境変遷の時系列変動の解析に使用できることを示している.男池堆積物に対する水銀の人為的負荷は1920年代から始まり,堆積物に対するフラックスは1960年代に最大値10~12 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>を示す.それ以降は現在までほぼ一定値で推移する.一方,鉛の人為的負荷は1930年代に始まり,その負荷量は現在にまで増加し続ける.堆積物表層での,そのフラックスは5000 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>に達する.また,水銀は1900~1910年,鉛は1925年ごろに特異的なピークを示すが,その起源については特定できない.このような汚染の歴史トレンドが元素によって異なるのは,その使用履歴や環境への負荷の形態が時代とともに変化していることが反映している.また,男池が朝鮮半島や中国大陸からの影響を受けている可能性も示唆された. <br>
著者
長橋 良隆 里口 保文 吉川 周作
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.51-69, 2000-01-15
被引用文献数
24 59

本州中央部の3層の鮮新-更新世火砕流堆積物と広域火山灰層の対比と噴出年代の推定は, それらの層位的関係, 層相, 古地磁気方位, 鉱物組成や火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率・化学組成, 層序学的年代資料に基づいて行われた.穂高-Kd 39テフラは約1.76 Maに噴出し, 火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashを形成した.恵比須峠-福田テフラは約1.75 Maに噴出し, stage 1の水蒸気プリニー式噴火による降下火山灰の形成, stage 2(前期)の降下軽石・火砕流の噴出と降下火山灰の形成, stage 2(後期)の火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成, stage 3の噴火活動終了後に再堆積した火山砕屑性堆積物に分けられる.大峰-SK 110テフラは約1.65 Maに噴出し, stage 1の火砕流噴出, stage 2の噴火活動の休止期, stage 3の火砕流噴出とその火砕流が新潟堆積盆に直接流入した火山砕屑性堆積物および火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成に分けられる.
著者
三田村 宗樹 中川 康一 升本 眞二 塩野 清治 吉川 周作 古山 勝彦 佐野 正人 橋本 定樹 領木 邦浩 北田 奈緒子 井上 直人 内山 高 小西 省吾 宮川 ちひろ 中村 正和 野口 和晃 Shrestha Suresh 谷 保孝 山口 貴行 山本 裕雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-188, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は,阪神地域に甚大な被害を生じさせた.阪神地域は都市化の進んだ場所で,人工的な地形改変が多くの場所で行われている.しかし,現在の地形図上では,その箇所が不明確であるため,過去の地形図との比較から人工改変地形の抽出を行ったうえで被害分布との関連を西宮・大阪地域について検討した.大阪地域では,基盤断層の落下側に被害が集中する傾向があり,基盤構造との関連性が存在することを指摘した.これについては,既存地下地質資料をもとにした地震波線トレースのシミュレーションの結果から,地震波のフォーカシング現象がかかわっているとみている.結論として,日本の大都市の立地する地盤環境は類似し,地震災害に関して堆積盆地内の厚い第四紀層での地震動増幅,伏在断層付近でのフォーカシング,盆地内の表面波の重複反射よる長時間震動継続,表層の人工地盤や緩い未固結層の液状化など共通した特性を有していることを指摘した.