著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their 137Cs, 241Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of 137Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (137Cs and 241Am) and charcoal in high concentrations.
著者
三田村 宗樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.405-413, 2023-08-09 (Released:2023-08-09)
参考文献数
21

琵琶湖より下流の淀川流域は,これまで幾度も氾濫を繰り返してきた.1885年(明治18年)の氾濫は,淀川流域の水害の中でも最大規模であった.この水害をきっかけとして,本格的な淀川の河川改修がなされた.この改修では,大阪平野域の淀川の蛇行が和らげられ,現在の淀川本流となる直線的な排水路としての新淀川が開削された.大阪市内中心部を流れる大川(旧淀川)は,毛馬洗堰によって新淀川と分離され,大川への流量制御が行われるようになる.この毛馬洗堰には,水準測量の基準点である水準基標が設置されていた.しかし,1946年昭和南海地震に伴う地殻変動,第二次世界大戦後の復興期の過剰な地下水揚水に伴う地盤沈下によって,基標の変動が生じ,水準基標は茨木市福井に移設された.現在の毛馬には,改築された洗堰や大規模排水機場があり,大阪市内の洪水防止を担う重要な箇所となっている.本巡検では,毛馬から大川沿いを歩き,災害履歴や河川改修をもとに地域の水害リスクを考える素材としての明治18年淀川大洪水や淀川改修工事にかかわる石碑や遺構などを見学する.
著者
吉川 周作 水野 清秀 加藤 茂弘 里口 保文 宮川 ちひろ 衣笠 善博 三田村 宗樹 中川 康一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.505-520, 2000-12-01
被引用文献数
17 32

神戸市東灘区魚崎浜で掘削された東灘1,700mボーリングコアの火山灰層序を明らかにした.本コアは,基盤の花崗閃緑岩(深度1,545.7m以深)と,それを不整合に覆うK1-L層・K1-U層から構成される.淡水成のシルト・砂・砂礫主体のK1-L層(深度1,545.7~691.8m)は,朝代火山灰層に対比できるK1-1382火山灰層を挾み,大阪平野地下の都島累層と陸上部の大阪層群最下部・下部下半部に相当する.海成粘土層と淡水成の砂礫・砂・シルトの互層からなるK1-U層(深度691.8~23.3m)は,31層の火山灰層を挾み,大阪平野地下の田中累層と大阪層群下部上半部~段丘堆積層に相当する.本層中のK1-648,K1-566,K1-537,K1-488とK1-486,K1-444,K1-422,K1-351,K1-348ないしK1-347.4,K1-245,K1-223,K1-175,K1-141,Kl-101,K1-26火山灰層は,イエローIIないしIII,ピンク,光明池III,山田III,アズキ,狭山,今熊II,八町池I,八町池II,カスリ,港島I,鳴尾浜IV,八田,甲子園浜III~VI,平安神宮の各火山灰層に対比された.この火山灰対比により,19層の海成粘土層を,それぞれMa-1,Ma0,Ma0.5,Ma1,Ma1.3,Ma1.5,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5,Ma6,Ma7,Ma8,Ma9,Ma10,Ma11(1),Ma11(2),Ma11(3),Ma12層に対比した.
著者
小倉 博之 吉川 周作 此松 昌彦 木谷 幹一 三田村 宗樹 石井 久夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.179-185, 1992-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

大阪平野の上町台地南部の台地構成層中に挾在する火山灰・含有化石の記載・分析ならびに有機物の14C年代測定をおこなった. その結果, 中位段丘層相当層の上町層上部から北花田火山灰, 吾彦火山灰を発見し, それぞれ広域火山灰のK-Tz, Aso-4に対比し, 上町層上部の堆積時期を知る手がかりを得た.さらに, 上町層を不整合に覆う常盤層の存在を指摘し, 平安神宮火山灰が挾在すること, その直下から23,400年BPの14C年代測定値を得たことから, 常盤層を低位段丘層に対比した. 以上より, 従来中位段丘面とされていた本地域の台地面は, 常盤層の堆積面, すなわち低位段丘面であることが明らかになった.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
益田 晴恵 三田村 宗樹 ファルーキ アビダ
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2007年度日本地球化学会第54回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.71, 2007 (Released:2008-01-18)

パキスタン・パンジャブ地方には,高濃度のフッ素とヒ素の汚染地下水に伴う健康被害が知られている。これらの汚染物質の移動には,硫酸イオン・リン酸イオンを伴うことがある。また,土壌からはトリフルオロ酢酸が抽出された。これらの観察事実から,フッ素の原因物質は肥料>工場排水>大気汚染物質であり,ヒ素の汚染物質は大気汚染物質>工場排水>肥料(農薬)であると推定された。地下水浸透に伴って,汚染物質は被圧帯水層へ移動する。このとき,帯水層下部の形状が汚染の拡大にとって本質的な役割を担っている。すなわち,帯水層下部の傾斜に沿って埋没河川に流入し,この埋没河川に沿って汚染物質は水平移動する。
著者
増田 富士雄 中川 要之助 坂本 隆彦 伊藤 有加 櫻井 皆生 三田村 宗樹
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.115-123, 2008
被引用文献数
4

大阪平野の沖積層(難波累層)中部に特徴的に発達する天満砂州堆積物について,地盤情報データベースによる解析とこれまでに報告されている <SUP>14</SUP>C年代値や火山灰層などのデータから,その分布と層位を明らかにした.それによれば,天満砂州堆積物は,6000年前から5000年前の最高海面期にはすでに堆積しており,約8000年前以降の海進期に形成されたものである.天満砂州堆積物は砂礫からなる"砂嘴堆積物"である.それは,分布が細長いこと,前進堆積体であること,離水していたと考えられること,海面上昇に伴い陸側斜め上方に発達していること,波浪堆積構造が認められることからわかる.また,天満砂州に堆積物を供給した波食台あるいは波食棚と海食崖と考えられる古地形が,上町台地の西縁に認められることも,それを支持している.<BR>天満砂州の発達は8000年前から7000年前のある時期の海面の急上昇というイベントを挟んで,2段階で行われた.最高海面期の天満砂嘴は,天満から長柄を経て淡路に至る地域に,幅100 m以下,長さ7~8 kmで発達していた.天満砂州は,その後の高海面期に沖側に前進する砂浜海岸や砂礫浜海岸へと変化してその幅を増していった.
著者
三田村 宗樹 中川 康一 升本 眞二 塩野 清治 吉川 周作 古山 勝彦 佐野 正人 橋本 定樹 領木 邦浩 北田 奈緒子 井上 直人 内山 高 小西 省吾 宮川 ちひろ 中村 正和 野口 和晃 Shrestha Suresh 谷 保孝 山口 貴行 山本 裕雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-188, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は,阪神地域に甚大な被害を生じさせた.阪神地域は都市化の進んだ場所で,人工的な地形改変が多くの場所で行われている.しかし,現在の地形図上では,その箇所が不明確であるため,過去の地形図との比較から人工改変地形の抽出を行ったうえで被害分布との関連を西宮・大阪地域について検討した.大阪地域では,基盤断層の落下側に被害が集中する傾向があり,基盤構造との関連性が存在することを指摘した.これについては,既存地下地質資料をもとにした地震波線トレースのシミュレーションの結果から,地震波のフォーカシング現象がかかわっているとみている.結論として,日本の大都市の立地する地盤環境は類似し,地震災害に関して堆積盆地内の厚い第四紀層での地震動増幅,伏在断層付近でのフォーカシング,盆地内の表面波の重複反射よる長時間震動継続,表層の人工地盤や緩い未固結層の液状化など共通した特性を有していることを指摘した.
著者
三田村 圭祐 奥平 敬元 三田村 宗樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.61-74, 2016-02-15 (Released:2016-06-17)
参考文献数
64
被引用文献数
1

生駒断層帯において,白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群に対する構造地質学的解析を行った.断層群のスリップデータに基づく多重逆解法により求められた古応力場は,南北引張の正断層型であった.また,断層コアのガウジから分離したイライトのK-Ar年代は,45.2±1.0Ma(粒径0.2-0.4µm)および46.0±1.1Ma(粒径0.4-1.0µm)となった.各粒径区画におけるK-Ar年代値や低温イライトの含有率に有意な差が認められなかったため,母岩の黒雲母K-Ar年代を用いて砕屑性高温イライトの影響を考慮した結果,断層コア形成およびその後の熱水変質による年代として~45-30Maを得た.これらの結果は,生駒断層帯における白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群の形成が始新世後期〜漸新世前期の伸長テクトニクスに関連したものであることを示唆する.
著者
吉川 周作 三田村 宗樹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.332-340, 1999-05-15
被引用文献数
30 45

大阪平野中央部のボーリングコアの岩相・火山灰層序に基づいて, 地下第四系を淡水成層の都島累層と海成・淡水成互層の田中累層に区分し, 田中累層には, 20層の海成粘土層(Ma-1・Ma 0…Ma 12層)が挟まれることを報告した.これらの岩相層序, 火山灰・古地磁気層序や花粉・ナンノ化石などの資料を総合的に検討し, 大阪平野第四系層序と深海底の酸素同位体比層序との対比を行った.その結果, 各海成粘土層(Ma-1〜Ma 12)の形成時期は酸素同位体の奇数ステージ(37〜5)に対比できること, 花粉・ナンノ化石資料からみて, 温暖な気候のもとで高海面を示す海進によって堆積したと考えられるMa 3・Ma 6・Ma 9・Ma 10・Ma 12・Ma 13層は, Shackleton(1997)などが酸素同位体比変化曲線から指摘した特に寒冷な氷期から温暖な間氷期への急変を示すターミネーション直後の間氷期とそれぞれ一致することを明らかにした.本研究の結果は, 大阪平野第四系で認められる海進現象が深海底の酸素同位体比変化曲線と密接に関連しており, 地球規模の気候変動と同調していることを示している.
著者
中屋 晴恵(益田晴恵) 三田村 宗樹 奥平 敬元 篠田 圭司 西川 禎一 隅田 祥光
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アジア諸国で拡大しつつあるヒ素汚染地下水の形成機構を研究した。バングラデシュの調査では,ヒ素を含む緑泥石が完新世の帯水層上部で化学的風化作用により溶解してヒ素を地下水中に溶出させていることを明らかにした。パキスタンやベトナムの調査でも整合的な結果が得られた。ヒ素を含む酸水酸化鉄が還元により分解されるとした定説を翻し,この観察事実はヒ素汚染地下水形成の最初期の過程として一般化できる。
著者
岡橋 久世 吉川 周作 三田村 宗樹 兵頭 政幸 内山 高 内山 美恵子 原口 強
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.193-202, 2001-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
32
被引用文献数
3 4

三重県鳥羽市相差宇塚の湿地において,地層抜き取り装置を用いて定方位柱状堆積物試料を採取し,肉眼と実体顕微鏡による岩相観察および堆積物の古地磁気測定を行った.その結果,淡水成泥質堆積物中に2枚の不淘汰な砂層を見いだした.この砂層には,貝殻・有孔虫など海生化石が含まれる.古地磁気永年変化の磁気層序対比および歴史津波史料に基づくと,これら2枚の砂層は1707年宝永地震と1605年慶長地震の津波堆積物である可能性が高い.
著者
吉川 周作 三田村 宗樹 前島 渉 兵頭 政幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

三重県志摩半島の鳥羽市相差町,南勢町,大王町,南島町,志摩町,さらに尾鷲市須賀利町に分布する各沿岸湿地において,数mの連続柱状試料を数本採取し,各柱状試料について肉眼での岩相記載や剥ぎ取り試料の実体顕微鏡岩相観察を行った.このうち,相差では有機質泥からなる湿地堆積物中に多くのイベント砂層を見出した.この相差で発見した各イベント堆積物の分布・特徴を詳細に解析するため,合計9本の柱状堆積物試料を採取するとともに,岩相記載のほかに,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,珪藻・有孔虫・貝形虫の微化石分析を行った.主に岩相観察、有孔虫・貝形虫分析によって,相差の湿地堆積物に挟まれる12枚の砂層(OS-1…SO-12と呼ぶ)は,それぞれ級化構造など津波堆積物の特徴を有し,比較的広域によく連続することから,津波によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物である可能性を指摘した.そして,このうち5枚の砂層は,比較的深い中部浅海帯の海底に生息する底生有孔虫を産出することを明らかにした.また、珪藻分析および^<14>C年代測定によって,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と堆積環境が変化したこと,12枚のイベント砂層は,7千年前以降の湿地堆積物に300〜500年周期で挟まれることを示した.以上の結果,鳥羽市相差では、東海・東南海地震によって来襲した津波は300〜500年周期で津波堆積物を残したものと判断した.
著者
Hendarmawan 三田村 宗樹 熊井 久雄
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.155-166, 2005-05-25

研究地域では,水資源を湧水に依存しているため,湧水の環境保全は非常に大切である.それ故,湧水についての浸透量・涵養量・流出量の理解が必要である.本研究では,インドネシア,Java島西部のLembangとその周辺において,涵養地域と流出地域に各地域を区分する目的で,地質学的背景と湧水の電気伝導度と温度の傾向を総合的に検討した.断層の発達と時代の新しい累層,古い累層は,それぞれ異なる電気伝導度と水温度の湧水の形成に影響していた.乾季と雨季における電気伝導度と温度の違いは,降雨からの涵養水や表層水の影響が大きいと考えられた.以上の結果,大きく異なる湧水の電気伝導度と水質の特徴により,研究地域は3つの地域に区分することができる.