- 著者
-
吉川 周作
三田村 宗樹
前島 渉
兵頭 政幸
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
三重県志摩半島の鳥羽市相差町,南勢町,大王町,南島町,志摩町,さらに尾鷲市須賀利町に分布する各沿岸湿地において,数mの連続柱状試料を数本採取し,各柱状試料について肉眼での岩相記載や剥ぎ取り試料の実体顕微鏡岩相観察を行った.このうち,相差では有機質泥からなる湿地堆積物中に多くのイベント砂層を見出した.この相差で発見した各イベント堆積物の分布・特徴を詳細に解析するため,合計9本の柱状堆積物試料を採取するとともに,岩相記載のほかに,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,珪藻・有孔虫・貝形虫の微化石分析を行った.主に岩相観察、有孔虫・貝形虫分析によって,相差の湿地堆積物に挟まれる12枚の砂層(OS-1…SO-12と呼ぶ)は,それぞれ級化構造など津波堆積物の特徴を有し,比較的広域によく連続することから,津波によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物である可能性を指摘した.そして,このうち5枚の砂層は,比較的深い中部浅海帯の海底に生息する底生有孔虫を産出することを明らかにした.また、珪藻分析および^<14>C年代測定によって,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と堆積環境が変化したこと,12枚のイベント砂層は,7千年前以降の湿地堆積物に300〜500年周期で挟まれることを示した.以上の結果,鳥羽市相差では、東海・東南海地震によって来襲した津波は300〜500年周期で津波堆積物を残したものと判断した.