- 著者
-
原田 一道
- 出版者
- Japan Gastroenterological Endoscopy Society
- 雑誌
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, pp.3-17, 1995-01-20 (Released:2011-05-09)
- 参考文献数
- 80
1988~1992年の5年間に上部消化管内視鏡検査を26,162例に行い,そのうちAGMLが360例であった(平均年齢45.5±16.4歳,M±SD;男:女2.1:1).AGMLの成因としては,精神的ストレス(55.6%),各種薬剤(22.2%),飲食物(6.9%),内視鏡検査(GF)後のもの(3.3%),その他(4.2%),不明(7.8%)であったが,最近,薬剤によるAGMLが増加傾向にあった.AGMLの季節発生は夏季(6~8月)に有意に少なかった.また,都市に住む人の方が地方の人よりAGMLの発生頻度が多かった. ストレスによるAGMLは青壮年に多いのに対して,薬剤によるAGMLは65歳以上の老年者に有意に多く発生していた.誘因薬剤ではNSAIDsが72.5%と最も多く,ついで抗生物質製剤が17.5%,ステロイド剤が5.0%,その他が5.0%であった.NSAIDsに起因する胃病変の発生を予防する方法を確立する目的で,健常ボランティアにおいてDiclofenac単独投与群,防御因子増強剤併用群,H2-受容体拮抗剤併用群の3群にわけて検討した.その結果,H2-受容体拮抗剤併用群が有意に胃病変の発生を抑制した.実験的にIL-1をラットの腹腔内投与(0.01~1μg/rat)すると胃酸分泌と胃排出を用量依存性に抑制し,水浸拘束ストレスおよびNSAIDsやエタノールによる胃病変に対して強力な胃粘膜保護作用を発揮した.この事実はAGMLの病態生理や治療体系に大きなインパクトを与え将来の発展が望まれる.