著者
相川 裕子 土屋 利紀 原田 一道 高山 巌
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 1996-03-31 (Released:2019-04-06)

通院中の緑内障,高眼圧症患者の心理的,身体的特徴を面接,タイプA行動質問紙法で捉えた。その結果,18人の緑内障患者のタイプA行動の平均得点は22人の健常者の平均得点に比べて有意に高かった。緑内障患者は心理的緊張が強く,身体的にも過緊張状態がみられた。そこで,心身の緊張を緩和させるために,ATを中心とする心理的アプローチを試み,症状がどのように変化したか検討した。ATを習得した患者全員の症状が緩和し,ATの実施によって,眼圧不安定だった緑内障,高眼圧患者8例中6例において,統計的に有意な眼圧下降が認められた。これらの結果から,緑内障患者は,交感神経系が充進状態にあることが推測され,ATを中心とした心理的アプローチが,一部の患者の症状緩和に有効であることが確かめられた。
著者
原田 一道
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-17, 1995-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
80

1988~1992年の5年間に上部消化管内視鏡検査を26,162例に行い,そのうちAGMLが360例であった(平均年齢45.5±16.4歳,M±SD;男:女2.1:1).AGMLの成因としては,精神的ストレス(55.6%),各種薬剤(22.2%),飲食物(6.9%),内視鏡検査(GF)後のもの(3.3%),その他(4.2%),不明(7.8%)であったが,最近,薬剤によるAGMLが増加傾向にあった.AGMLの季節発生は夏季(6~8月)に有意に少なかった.また,都市に住む人の方が地方の人よりAGMLの発生頻度が多かった. ストレスによるAGMLは青壮年に多いのに対して,薬剤によるAGMLは65歳以上の老年者に有意に多く発生していた.誘因薬剤ではNSAIDsが72.5%と最も多く,ついで抗生物質製剤が17.5%,ステロイド剤が5.0%,その他が5.0%であった.NSAIDsに起因する胃病変の発生を予防する方法を確立する目的で,健常ボランティアにおいてDiclofenac単独投与群,防御因子増強剤併用群,H2-受容体拮抗剤併用群の3群にわけて検討した.その結果,H2-受容体拮抗剤併用群が有意に胃病変の発生を抑制した.実験的にIL-1をラットの腹腔内投与(0.01~1μg/rat)すると胃酸分泌と胃排出を用量依存性に抑制し,水浸拘束ストレスおよびNSAIDsやエタノールによる胃病変に対して強力な胃粘膜保護作用を発揮した.この事実はAGMLの病態生理や治療体系に大きなインパクトを与え将来の発展が望まれる.
著者
原田 一道 横田 欽一 相馬 光宏 北川 隆 北守 茂 柴田 好 梶 厳 水島 和雄 岡村 毅与志 並木 正義
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.961-967_1, 1981-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
32

胃結核は稀な疾患であるが,われわれは最近の5年間に3例の胃結核を経験した. 第1例は46歳の男性で胃体上部後壁に不整形で,潰瘍底が凹凸不整の大きな潰瘍をみた.内視鏡直視下胃生検による組織像でラングハンス巨細胞と類上皮結節の所見を得,結核による潰瘍性病変と診断した. この病変にストレプトマイシン(SM100mg/ml)3~5mlの局注療法を行い,約3ヵ月後に潰瘍の疲痕をみた.第2例は67歳の男性で,胃前庭部にIIa+IIcの早期胃癌を,また胃体上部前壁に粘膜下腫瘍をみとめた.この腫瘍が術後の組織学的検討で結核性病変と診断し得た.第3例は66歳の女性で噴門直下に不整形の潰瘍性病変を伴う腫瘤があり,内視鏡直視下生検による組織学的所見から結核性病変と診断し,抗結核剤(PAS,KM,INAH)の投与と共にSMの局注療法を試みた.その結果約4ヵ月後に腫瘤はほぼ消失し,潰瘍性病変は瘢痕化した.胃結核が内科的治療で治癒した例は極めて稀で,抗結核剤の局注療法を試みたものは過去にないので報告する.