著者
山田 賢 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2011-04-09 (Released:2011-05-27)
参考文献数
33

グルコース由来のエネルギー合成経路において、チアミン (ビタミンB1) は重要な働きを有する。チアミン欠乏は、認知機能障害などの中枢神経障害を引き起こすが、これは脳内におけるエネルギー合成障害が主要因であると推測されている。しかしながら、その詳細な作用機構は未解明なままである。本研究では、この中枢神経障害発症の作用機構の解明を試みた。マウスにチアミン欠乏飼料を給餌し、更にグルコースを腹腔内に投与した。その後、マウスの慣れ学習および短期記憶への影響を観察し、脳内のモノアミンおよびアミノ酸含量を測定した。 行動試験の結果、チアミン欠乏によって慣れ学習が阻害され、過剰なグルコースの投与によって短期記憶障害が引き起こされた。しかしながら各学習阻害は、もう一方の処理による影響は受けなかった。また、チアミン欠乏は海馬内におけるL-リジン含量を変化させ、過剰なグルコースの投与は大脳皮質内のドーパミンおよびノルアドレナリン含量に影響を与えた。以上の結果から、チアミン欠乏による中枢神経系の障害は、エネルギー代謝障害のみに起因するものではなく、他のメカニズムも関与する可能性が示された。
著者
友永 省三
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ジペプチドであるカルノシン(β-アラニル-ヒスチジン)およびアンセリン(β-アラニル-1-メチルヒスチジン)は、抗酸化作用を有し、脳内で神経調節物質として働くことが知られている。一方、これらジペプチドは鶏胸肉抽出物に高濃度に含有されている。これまでに、鶏胸肉抽出物およびカルノシンの摂取が学習改善効果や脳内一酸化窒素産生効果を有することを発見した。今回は、鶏胸肉抽出物およびカルノシンの単回投与が強制水泳試験におけるラットのうつ様行動に与える影響を調査した。供試動物としてWistarラット(6週齢、オス)を用いた。馴化および前試験後、鶏胸肉抽出物経口投与2時間後に強制水泳試験を実施した。不動状態をうつ様行動とした。試験後、頚椎脱臼後に断頭し、視床下部および海馬を採取し-80℃下で保存した。後日、HPLC-ECDを用いてモノアミン類を分析した。同様の試験をカルノシンでも実施した。さらに両物質が自発運動量に及ぼす影響をオープンフィールド試験で調査した。強制水泳試験において、両物質の投与により、抗うつ様行動効果が認められた。海馬および視床下部の3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)含量は、両物質投与により減少することが観察された。MHPGは、ノルエピネフリンの主要代謝産物であるので、両物質は脳内ノルエピネフリン神経を抑制する効果を有する可能性が示唆された。両物質はオープンフィールド試験における自発運動量に影響を与えなかった。したがって、両物質における強制水泳不動時間の減少に自発運動の影響がないことが明らかになった。以上より、鶏胸肉抽出物の摂取により抗うつ様効果が認められ、その作用機構にはカルノシンが関与している可能性が示唆された。
著者
菅野 大 清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹 友永 省三
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_33-suppl_34, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
著者
仲田 里瀬 佐藤 三佳子 友永 省三
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.66-72, 2019-12-13 (Released:2021-12-13)
参考文献数
26

Carnosine is a dipeptide composed of β-alanine and l-histidine. Carnosine is an antioxidant and has buffering capacity. In addition, the dipeptide could improve glucose metabolism in animal models. However, the effect of dietary carnosine on various metabolisms has not been clarified in detail. In this study, to explore the effect of carnosine on various metabolisms, we investigated liver and cecal contents in mice given graded amount of carnosine by non-targeted metabolomic analysis. Carnosine didn’t affect body weight while the perirenal fat weight was decreased dose-dependently. In liver and cecal contents, some metabolite levels were significantly influenced. Among them, carnosine levels were increased dose-dependently. These results suggest that dietary carnosine can affect not only carnosine metabolism but also other metabolisms including lipid metabolism. We need further study on the relationships among some metabolites including carnosine and the reduction of fat.
著者
豊田 淳 後藤 達彦 友永 省三
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.42-44, 2017 (Released:2019-11-11)

日本はストレス社会であり、うつ病患者数が増加 傾向にあるが、抗うつ薬の開発は苦戦していると言 われる。私共は食によるうつ病予防法を確立するた め、うつ病の栄養および代謝特性の解明を目指して おり、うつ病モデルである慢性社会的敗北モデルを 用いて研究している。本研究では、社会的敗北モデ ルマウスやラットのメタボローム解析を中心に行っ た。その結果、社会的敗北ストレスはタウリン代謝 に影響する可能性が示唆された。そこでラットへタ ウリンを 4 週間投与したところ、海馬の MAP キナ ーゼなどのリン酸化シグナルが影響を受け、行動実 験では抗うつ作用が認められた。よって、本研究に より、うつ病発症とタウリンの関係が推察された。
著者
山田 賢 山根 春香 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Supplement, pp.19-20, 2008-07-11 (Released:2012-09-24)
参考文献数
1

飼料由来のチアミンを欠乏させたマウスに,過剰なグルコースを腹腔内投与することで,マウスの学習行動にどのような影響が出るかを検証した。オープンフィールド試験において,立ち上がり回数をパラメーターとすると,チアミン欠乏により学習成績は低下した。しかし,移動距離についてはチアミン欠乏マウスにグルコースを投与することで24時問後に移動距離は減少し学習成績が改善されるという結果になった。また屠殺後,大脳皮質と海馬を摘出し,神経伝達物質であるモノアミン類およびそれらの代謝産物を測定した。今回の学習成績と神経伝達物質の間に相関はなかった。また,立ち上がり回数と移動距離は異なる反応を示したことから,栄養の影響は行動の種類によって違い,二つの行動は別々のメカニズムで制御されている可能性が示唆された。
著者
古瀬 充宏 友永 省三 安尾 しのぶ 安尾 しのぶ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

L-トリプトファンの代謝産物であるキヌレン酸にストレス軽減効果が認められ、その効果はα7nACh受容体とNMDA受容体を介することが明らかになった。L-アスパラギン酸はNMDA受容体を、D-アスパラギン酸はNMDA受容体と他の受容体を介してストレス軽減に機能することが判明した。不安様行動に対し、L-セリンの単回ならびに長期投与が異なる反応を示すことを認めた。多動性を示す動物の脳では、L-チロシンがD-チロシンに変換されやすく、L-セリンが減少していることが判明し、アミノ酸栄養による改善の可能性が示唆された。