著者
遠藤 雅人 小林 龍太郎 有賀 恭子 吉崎 悟朗 竹内 俊郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.887-892, 2002-11-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
23
被引用文献数
4 4

航空機を用いた微小重力環境下におけるティラピア稚魚(TL : 3-4 cm)の行動観察を行い,近赤外光(発光波長880±40 nm)照射時に正常遊泳する個体について,その姿勢保持機構の解明を試みた。近赤外光照射時に正常遊泳した個体は55個体中,6個体(10.9%)であった。これら正常遊泳個体の腹部側に近赤外光を照射した結果,全ての個体が反転し,背光反射を示した。また,微小重力暴露中の正常遊泳時間に対する背光反射行動を示した時間の割合は74.4±22.5%(n=6)であった。以上の結果から,一部のティラピアは近赤外光を感知し,微小重力下で姿勢保持をしていることが明らかとなった。
著者
竹内 俊郎 廣田 哲也 吉崎 悟朗 酒井 清
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.547-555, 1998-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

循環濾過飼育におけるティラピアの成長と水質変動との関係を調べた。循環濾過において, サンゴ砂を用いなければ, pHが急速に6を下回り, 亜硝酸化成細菌の働きの低下に伴い, アンモニア態窒素が漸増し, その状態が持続されることにより, 硝酸化成細菌の活動も鈍り, 亜硝酸態窒素も蓄積すること, 水質の悪化に伴い, 飼育水の着色が目立つことが明らかになった。一方, サンゴ砂を用いることは, pHの低下を防止でき, 硝化細菌全般の活動の活発化に極めて有効に作用することが判明した。なお, 水質悪化に伴い助長される着色成分 (黄色色素) は, 8時間程度の活性炭による処理により速やかに吸着・除去できた。濾材を比較検討した結果, バイオアルファ, シポラックス, ゼオライトとも, 魚体に影響を及ぼすほどの大きな差は認められなかった。また, 本実験においてアンモニア態窒素の増加による, ティラピアの増重率や日間成長率の低下は認められなかった。なお, 成長と総窒素濃度との間に相関がみられたが, 今後更なる検討が必要である。今回の結果から, ティラピアを循環濾過式水槽で飼育する場合には, アンモニア態窒素濃度81mg/l, または硝酸態窒素濃度616mg/lまでに達する飼育水中 (初期値はそれぞれ0) で70日間ほぼ正常に飼育できることが明らかとなった。
著者
小林 龍太郎 遠藤 雅人 吉崎 悟朗 竹内 俊郎
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.646-651, 2002-09-15
参考文献数
20
被引用文献数
3 12

本研究ではティラピアOreochromis niloticusの近赤外光に対する感受性の測定を試みるとともに,その系統差を明らかにするために,回転ドラム追従実験装置を用いた実験を行った。供試魚は異なる2系統各200尾で,照射光は可視光と波長限界700,750,780,800nmの5種類を用いた。その結果,全ての個体が可視光下および波長限界700nmの光で感受性を示した。しかし,波長限界800nmの光では全個体が感知不可能であった。感知できる最も長波長側の波長限界は1系統が750nmであったのに対し,もう一方の系統は780nmであり,同一種において系統差のあることが明らかとなった。
著者
吉崎 悟朗
出版者
東京海洋大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

植物油に含まれるα-リノレン酸(ALA)からドコサヘキサエン酸(DHA)を作るには2段階の炭素鎖数の延長と3か所に二重結合の導入(不飽和化)が必要である。一般に海産魚はこれら何れかの反応を司る酵素を欠損しているため、DHAを合成できない。申請者は、熱帯域に生息する小型シタビラメ類が、ALAからDHAを合成する際に必須な全ての不飽和化活性を持つFADSを持つことを発見した。本研究では、日本産の食用シタビラメ類と本熱帯産種を交雑することで、食用種の特徴を具備しDHAも合成可能な新品種を作出する。
著者
竹内 俊郎 吉崎 悟朗 酒井 清
出版者
東京水産大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

閉鎖生態環境という1つのモデルの中で、魚類を産卵・ふ化させるとともに、植物・動物プランクトンを用いた系により仔稚魚を飼育し、ひいては継代繁殖を目指す閉鎖型水棲生物複合飼育システム(閉鎖生態系循環式養殖システム、Controled Ecological Recirculating Aquaculture System;CERAS)を開発するための基礎的知見を得ることを目的とした。本研究では閉鎖型飼育システムの設計および製作、水棲生物飼育による水質維持評価実験、植物プランクトンによるティラピアの飼育実験を行い、成長や魚体に及ぼす影響を調べた。その結果、密閉式水槽を用いた実験では、ティラピアを密度20g/Lで17日程度飼育できることが明らかになった。この間、ティラピアの成長は順調であったが、水質の悪化は著しく、とくにアンモニアの増加が顕著であった。この原因としては、濾過槽の能力が魚のアンモニア代謝(排泄)量の6割程度しかなかったためと推察された。飼育日数の経過に伴い、流量の低下も招いた。これは、酸素供給ユニット内での目詰まりによるものであった。今後、ユニットの構造自体の改良が必要であろう。また、pHも6を下回る傾向を示し、この低下はアンモニアの分解能力を低下させることになる。次に、植物プランクトンとして今回はスピルリナを用いティラピアの飼育実験を行ったところ、ティラピアの成長は市販飼料区が優れていたが、乾燥スピルリナのみでも十分に生育させられることが分かった。また、6週間程度の飼育で魚体脂質中の脂肪酸組成が大きく変動することが明らかになった。本研究により密閉型循環式魚類飼育装置の開発に関する基礎的知見が得られるとともに、水棲生物の食物連鎖の一端を確立する目途が立つなど、CERAS構築に向けた萌芽的研究が遂行できた。