著者
塩見 一雄
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.ウナギ体表粘液の抽出物は,マウス静脈投与で強い毒性を示すことを見いだした。毒は著しく不安定で,経口投与では毒性を発現しないことから,食品衛生上の問題はないと判断した。各種クロマトにより電気泳動的に均一な精製毒が得られ,毒は分子量40万の酸性タンパク質で,分子量23万と11万のサブユニットより成ること,Gly,Ala含量が高く,Met,Cys,Tyr,Trp含量の低いことを明らかにした。精製毒のLD_<50>は3.1μg/kgで,毒性のきわめて高いことが注目された。2.ウナギ体表粘液中に少くとも2成分のレクチンの存在を認め,そのうちの1成分を各種クロマトで精製し,分子量4〜5万の酸性タンパク質であることを示した。体表粘液中には溶血因子も検出されるが,クロマト操作中の失活が著しいため精製は断念した。3.ウナギ血清中のタンパク毒を精製し,LD_<50>が670μg/kgの精製標品を得た。毒は分子量15万の酸性タンパク質で,分子量11万と7万のサブユニットで構成されると推定した。4.ウナギ以外の50種魚類について体表粘液毒を検索し,ヨ-ロッパウナギ,ハモ,マアナゴ,ドジョウ,カジカ,クサフグおよびキタマクラの7魚種に検出した。これらの中では,ヨ-ロッパウナギおよびハモの毒性が高く,両魚種の本体はウナギ毒と同様に不安定なタンパク質で,分子量もウナギ毒とほぼ同程度(約40万)であった。5.ウナギ体表粘液から精製した毒でラットを免疫したところ,ウナギ毒の致死活性を強く抑制する抗血清が容易に得られた。ヨ-ロッパウナギ毒およびハモ毒の致死活性も抗血清である程度抑制されることから,両毒とウナギ毒との免疫学的類似性が示唆された。一方,抗血清は,ウナギ血清毒に対しては中和効果を示さず,ウナギ体表粘液および血清中のタンパク毒は,免疫学的にお互いに異なると考えられた。
著者
山中 英明
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ペル-およびメキシコ沖で漁獲後凍結保存されたアメリカオオアカイカの胴肉を試料とし,異味異臭の強いもの及び正常なものをそれぞれ用いた。まず,生肉及び加熱について官能検査を行った。その結果,異味とは強い塩から味,酸味,苦味,生ぐさ味であることが明らかとなった。異味のために生肉の嗜好性は低かった。70℃および100℃加熱によっても改善されなかった。アメリカオオアカイカの呈味は漁獲場所,魚体の大きさによって異なることがわかった。とくに魚体が大きくなると異味の発現が大きかった。揮発性塩基窒素(VBN),NH_3-Nは異常肉で極めて高かった。しかし,トリメチルアミンやポリアミンは低く,腐敗ではなかった。遊離アミノ酸は異味のあるアメリカオオアカイカでは,正常のイカあるいはスルメイカに比較して総量が50%以下と極めて低かった。甘味に関与するグリシン,プロリン,アラニンも異味のある肉で低含量であった。ATP関連化合物についてはアメカリオオアカイカではいずれの試料もヒポキサンチン(Hx)量が最も高く,次いでADPであった。Hxは苦味物質として知られているが,スルメイカ中のHx量と同程度であり,アメリカオオアカイカの苦味には関与しないと考えられた。また,旨味がスルメイカより弱いのはIMPとAMPが少ないことに起因すると考えられた。無機成分を測定したところ,陽イオンとしてK^+,Na^+が多く含まれた。陰イオンとしてはPO_4^<3->が低く,一方,Cl^-が高かった。従って,異味のあるアメリカオオアカイカに多量含まれるアンモニアは肉のpHが低いことから塩素イオンと結合して塩化アンモニウム(NH_4Cl)として存在し,塩から味,苦味を呈するNH_4Clがアメリカオオアカイカの異味の原因と結論した。これは官能検査の結果ともよく一致していた。さらに,上述の異常肉で遊離アミノ酸が極めて低いことも異味発現に関与すると考えられた。
著者
青山 千春
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
1996

東京水産大学博士学位論文 平成8年度(1996) 海洋生産学 課程博士甲第133号
著者
塩原 泰
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
1998

東京水産大学博士学位論文 平成10年度(1998) 海洋生産学 課程博士 甲第176号
著者
影山 昇
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
1996

東京水産大学博士学位論文 平成8年度(1996) 論文博士 乙第39号
著者
松田 皎 萬 栄 劉 群 陳 大剛 侯 恩淮 高 清廉 東海 正 兼広 春之 佐藤 要 小野 征一郎 WAN Rong HOU Enhuai CHEN Dagang GAO Qing-lian 候 恩淮
出版者
東京水産大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

世界でも有数の漁場である東シナ海・黄海は、日本・中国・韓国・北朝鮮などが国際漁場として戦前・戦後を通して利用してきたが、永年にわたる漁獲圧のため、現在は極めて厳しい資源状態になっている魚種は多い。これを元の豊かな漁場に戻すには、国際的な管理組織を築くことが緊急の課題である。その第一歩として、この海域を利用している主要国である日本と中国とが漁業の実態に関する情報交換・技術交流を進めることにより、その実態を認識することが必要である。本研究の3年間の集大成として、1996年11月青島海洋大学において開催した日中共同セミナーは、貴重な情報交換の場であった。まず、佐藤は「日本の以西底びき網漁船の歴史的変遷」と題して、戦後において東シナ海域における日本・中国・韓国3国の底びき網漁業の変遷を述べ、1975年以降、中韓2国と異なり日本の漁獲は急激に減少の一途を辿っている。これは日本漁船の賃金の高騰と円高による水産物輸入の増大によるものと考えられた。松田は「日本の以西底びき網漁業における主要魚種の資源状態と漁業管理における諸問題」について、イカ類、タチウオその他わずかな魚種以外は、ほとんど壊滅的な状態であること、早急に国際的管理体制にすべきとした。高は「日中両国漁船の発展趨勢」について、船形から日中の各種漁船の性能の比較を行った。陳は日中両国の海洋魚類の分布の比較研究」において、日中両国近海に出現する魚種は4351種329科に属し、その中3048種が中国近海に、3254種が日本近海に、両国共通種は1951種であることを明らかにした。陳はさらに付表として4351種の学名、中国名、日本名及び分布海域を記す表を作成した。侯は「中国漁政管理の特徴」において、これまで20年間の漁業の変遷をみると、漁船の増加、養殖業の発展が水質の汚染と伝統魚種の減少をもたらしたとしている。劉は「中国漁業40年の回顧」において、この40年間に何が中国の漁業の発展をもたらしたかを示した。小野は「日本の漁業管理-TACを中心として-」において、日本が昨年国連海洋法条約を批准したことにより、TAC制など今後両国の取るべき政策について論じた。東海は「多魚種漁業と投棄魚問題」で、底びき網漁業など、多魚種を同時に漁獲し、不要魚種その他を投棄する場合の生態系への影響を論じた。兼広は「日本の漁業資材の現状と動向」で、漁業行為によって廃棄された漁網類がゴ-ストフィッシング等資源に及ぼす影響について論じ、これを解決する方法として微生物により分解するバイオプラスチックを紹介した。資本主義体制下の日本と、解放政策が進展中とはいえ社会主義体制下の中国では漁業管理の方式が異なる。開放政策により、中国では従来からの国営漁業の他に大衆漁業が急激に増大した。それらは主として、小船によるもので、主として張網漁業を行っている。張網は比較的沿岸域に設置しておいて、潮流によって流れてくる魚を濾して獲る趣向の漁具である。問題は網目が非常に小さいため、小さな幼魚まで一網打尽にしてしまうことである。このような稚仔魚は普通商品にはならないのであるが、たまたまエビの養殖の餌として高価がつく。エビの方はもちろん日本市場へ輸出されることになる。このような情報があったため、今回の研究では、この事実を確認すべく努力したが、確証は得られなかった。一方、中国農業部水産局は、1995年からタチウオ資源の回復のため、一つの資源管理策を打ち出した。それは5月頃産卵したタチウオの幼魚を保護するため、7、8月の2ヶ月間、底曳網漁業を全国的に禁止し、さらに張網(定置網)も6〜9月のうち2ヶ月間を禁漁にするというものである。このことは、底曳網、張網でタチウオの幼魚が大量に捕獲されていることを政府も認めていることを示している。この政策が永年続くと、タチウオばかりでなく、他の資源にもよい結果が表われると思われる。今後の資源の動向を注意深く観察する必要がある。
著者
影山 昇
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
1996

全文公表年月日: 2008-03-31
著者
木村 稔
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
2002

博士論文
著者
中村 和夫 Kazuo Nakamura
出版者
東京水産大学
雑誌
東京水産大学論集 (ISSN:05638372)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.131-140, 2000-03-30

東京水産大学共通講座
著者
瀬野 龍一郎
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
2003

東京水産大学博士学位論文 平成15年度(2003) 資源育成学 課程博士 甲第337号
著者
小岩 信竹 Nobutake Koiwa
出版者
東京水産大学
雑誌
東京水産大学論集 (ISSN:05638372)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.77-106, 1998-03-25

東京水産大学資源管理学科
著者
鈴木 健
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

海藻は陸上植物と違う環境に生息するため、その構成成分は特有な栄養・生理機能を持つことが期待されるが、海藻食物繊維に関する研究はこれまでにあまり行われてこなかった。そこで本研究では海藻に含まれる食物繊維の栄養機能を明らかにすることを目的とし、脂質の消化吸収やコレステロールの代謝に深く関わっている胆汁酸に注目することとした。肝臓では一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)が合成されるが、腸内細菌により変化を受け二次胆汁酸(デオキシコール酸など)となり、小腸から吸収されて肝臓に戻り、腸肝循環と呼ばれている。脂質の消化吸収には水不溶性の脂質を乳化する胆汁酸が必要で、腸肝循環による吸収を食物繊維が阻害することによりコレステロールの代謝が改良されると考えられている。本研究ではワカメ、コンブ、ヒジキ、ノリなどの海藻を試料とし、胆汁酸との結合を調べた。コール酸との結合では、pHの上昇にともない結合率の低下がみられた。またコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸との結合の実験では、水溶姓食物繊維は不溶性食物繊維に比べると、いずれの胆汁酸の吸着も全般的に大きかった。一方、食物繊維の摂取過剰による問題点も指摘され、ビタミンや無機質の利用率の低下も考えられる。無機質との吸着として亜鉛を用いたが、不溶性食物繊維についてはワカメで多く、スサビノリで低く、一方、水溶姓食物繊維についてはコンブで高かった。食物繊維の測定には酵素重量法が用いられているが、これらをほとんど含まない海藻においては測定に要する時間を考慮した改良法が必要でこれらについて検討を加えた。
著者
服部 克也
出版者
東京水産大学
巻号頁・発行日
2003

東京水産大学博士学位論文 平成15年度(2003) 論文博士 乙第83号
著者
永井 宏史 久保田 信
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

刺胞動物門に属するクラゲはすべてが刺胞毒を有し、そのうち強力な刺胞毒を有するいくつかのクラゲは世界中で海水浴客や漁民に刺傷被害を与え、死亡例も報告されている。クラゲの毒素の化学的性状の解明についてはほとんど手つかずの状況であった。これは、それまで研究されたすべてのクラゲ毒素が非常に不安定であることに主に起因していた。このような状況のもと、我々は非常に不安定なクラゲタンパク質毒素を比較的安定に取り扱う方法を見出し、クラゲ数種からタンパク質毒素を活性を保持したまま単離することに成功した。さらに分子生物学的手法を用いてアンドンクラゲ(Carybdea rastoni)、ハブクラゲ(Chiropsalmus quadrigatus)、Carybdea alataの計三種の立方クラゲのタンパク質毒素の全アミノ酸一次配列の解析に成功した。これはクラゲ毒素類の化学的性状が明らかにされた初めての例である。これら立方クラゲ類の毒素同士は相同性があるが、既知のタンパク質とは全く相同性を有していなかった。つまり、我々の研究により新奇な生理活性タンパク質ファミリーの一群を見出すことができた。
著者
塩見 一雄
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.ヤツメウナギの体表粘液および卵巣中にタンパク毒を発見した。体表粘液および卵巣1gでそれぞれ体重20gのマウスを70匹、215-800匹殺し得ると見積られた。両毒は赤血球凝集活性、溶血活性を示さず、また卵巣毒には抗菌活性も認められなかった。2.体表粘液毒はきわめて不安定で精製には至らなかったが、50%グリセリンによる安定化効果が見いだされたので、今後の精製ならびに性状解明が期待される。3.卵巣毒はCM-celluloseクロマト、ヒドロキシアパタイトクロマトおよびFPLC(Mono S)により、natiive-PAGEで単一バンドを与える精製毒を得た。精製毒の毒性は強く、マウス静脈投与によるLD_<50>は33μg/kgと求められた。毒は低温貯蔵、pH変化に対して安定であるが加熱には不安定な塩基性タンパク質で、分子量は還元剤非存在下のSDS-PAGEにより40,000と測定された。還元剤存在下のSDS-PAGE分析により、毒はS-S結合を介した分子量30,000と10,000の2種類のサブユニットで構成されていることが判明した。アミノ酸組成では含硫アミノ酸の乏しいことが特徴であった。サブユニットの分離を達成できなかったためアミノ酸配列に関する知見は得られなかったが、今後に残された重要課題である。4.体表粘液毒は調べた54種魚類中9種に検出された。特に3種ウナギ目魚類(ウナギ、ヨーロッパウナギ、ハモ)の毒性が高かったが、クロマト挙動などから毒の性状はお互いに類似しており、いずれも分子量約400,000の酸性タンパク質と判断された。スフィンゴシンおよびガングリオシドにより毒性が阻害されることが注目された。5.卵巣毒は20種魚類について検索したが、すべて陰性であった。
著者
竹内 俊郎 吉崎 悟朗 酒井 清
出版者
東京水産大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

閉鎖生態環境という1つのモデルの中で、魚類を産卵・ふ化させるとともに、植物・動物プランクトンを用いた系により仔稚魚を飼育し、ひいては継代繁殖を目指す閉鎖型水棲生物複合飼育システム(閉鎖生態系循環式養殖システム、Controled Ecological Recirculating Aquaculture System;CERAS)を開発するための基礎的知見を得ることを目的とした。本研究では閉鎖型飼育システムの設計および製作、水棲生物飼育による水質維持評価実験、植物プランクトンによるティラピアの飼育実験を行い、成長や魚体に及ぼす影響を調べた。その結果、密閉式水槽を用いた実験では、ティラピアを密度20g/Lで17日程度飼育できることが明らかになった。この間、ティラピアの成長は順調であったが、水質の悪化は著しく、とくにアンモニアの増加が顕著であった。この原因としては、濾過槽の能力が魚のアンモニア代謝(排泄)量の6割程度しかなかったためと推察された。飼育日数の経過に伴い、流量の低下も招いた。これは、酸素供給ユニット内での目詰まりによるものであった。今後、ユニットの構造自体の改良が必要であろう。また、pHも6を下回る傾向を示し、この低下はアンモニアの分解能力を低下させることになる。次に、植物プランクトンとして今回はスピルリナを用いティラピアの飼育実験を行ったところ、ティラピアの成長は市販飼料区が優れていたが、乾燥スピルリナのみでも十分に生育させられることが分かった。また、6週間程度の飼育で魚体脂質中の脂肪酸組成が大きく変動することが明らかになった。本研究により密閉型循環式魚類飼育装置の開発に関する基礎的知見が得られるとともに、水棲生物の食物連鎖の一端を確立する目途が立つなど、CERAS構築に向けた萌芽的研究が遂行できた。