著者
鈴川 佳吾 鈴木 光也
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.435-439, 2003-05-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

We report a case of arytenoid dislocation, which may have been caused by endotracheal intubation.A 44-year-old man underwent surgery for middle ear cholesteatoma under general anesthesia with endotracheal intubation. The intubation was performed with no difficulty, but at the end of the operation the patient moved strongly before extubation. Postoperatively, he presented hoarseness. Fiberscopic study revealed immobility of the right vocal cord but normal mobility of right arytenoid cartilage, suggesting that the right crico-arytenoid joint may have been dislocated. After two weeks, there was no improvement, and we performed closed reduction. Immediately after fixation with laryngomicrosurgery, there was neither improvement of voice nor mobility of right vocal cord. After he started voice therapy, his voice began to improve, three weeks after the last surgery. Four weeks later, fiberscopic examination showed almost normal mobility of the right vocal cord.From the literature review, we concluded that closed reductions should be performed as soon as possible after such an incident.
著者
野村 俊之 山本 昌彦 鈴木 光也 吉田 友英 大和田 聡子 重田 芙由子 池宮城 慶寛 田村 裕也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.869-874, 2011 (Released:2011-12-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

2007年8月より2009年7月までの2年間に, 東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科において良性発作性頭位めまい症と診断した1,145名を対象とし, われわれが考案した運動療法で治療を行った. われわれの方法は患側が特定できなくても整形外科疾患など頸椎・脊椎に問題のある症例でも, 患者が自宅で自分のペースで治療を行えるという特徴を有している. その結果1カ月以内に80.7%, そして3カ月以内では91.7%のめまい消失をみた. その中でも発症より1週間以内に受診した症例では2週間以内に80%の症例がめまいの消失をみている. めまい発症より受診時期が遅くなるにしたがって治癒期間も長くなる傾向があった.
著者
鈴木 光也
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.43-50, 2011-01-20

Ⅰ.はじめに 迷路瘻孔は外傷性,炎症性,先天性などさまざまな原因により,中耳側や頭蓋底側に生じることが知られている。迷路瘻孔では,瘻孔部分が内耳において正円窓,卵円窓に次いで第三の窓として働くため,音刺激や圧刺激などの外的刺激を受けることによって外リンパを介して内リンパ還流が生じる。その内リンパ還流によって多くは半規管や前庭が刺激されて眼振やめまいが誘発される。これらの徴候はそれぞれ瘻孔症状およびTullio現象と呼ばれている。迷路瘻孔は,外側半規管隆起が圧倒的に多く,上半規管,後半規管または蝸牛外側壁など他の部位に生じることは稀である1,2)。そのため瘻孔症状およびTullio現象でみられる眼振はほとんどが水平性眼振である。上半規管裂隙症候群(superior canal dehiscence syndrome)とは,上半規管を被っている中頭蓋窩天蓋や上錐体洞近傍の上半規管周囲の骨に欠損が生じることによって瘻孔症状およびTullio現象を生じる新しい疾患単位であり,誘発される眼振の向きは垂直・回旋であることが特徴的である。
著者
原田 勇彦 加我 君孝 水野 正浩 奥野 妙子 飯沼 寿孝 堀口 利之 船井 洋光 井上 憲文 安倍 治彦 大西 信治郎 牛嶋 達次郎 宮川 晃一 伊藤 修 佐久間 信行 北原 伸郎 土田 みね子 飯塚 啓介 小林 武夫 杉本 正弘 佐藤 恒正 岩村 忍 矢野 純 山岨 達也 広田 佳治 仙波 哲雄 横小路 雅文 鈴木 光也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.380-387, 1994-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

鼓膜炎, 慢性化膿性中耳炎, 真珠腫性中耳炎の感染時, 中耳術後の再感染症例を対象として, オフロキサシン (OFLX) 耳用液の有用性と耳浴時間に関する臨床的研究を行った。研究参加施設を無作為に2群に分け, 1群では1回6-10滴, 1日2回, 7日間以上の点耳を行い, 毎回点耳後約10分間の耳浴を行うよう, II群では同様の点耳後に2-3分間の耳浴を行うよう患者に指示した。総投与症例は258例で, 全体では83.3%の改善率, 86.7%の菌消失率 (143例中) が得られた。副作用は1例もなく, 全体としては82.9%の有用率であった。統計学的検定により1群とII群の比較を行ったところ, すべての項目で両群間に有意の差はみられなかった。以上の結果から, OFLX耳用液は鼓膜, 中耳の炎症性疾患に対して極めて有用かつ安全なものであり, その点耳後の耳浴時間は2-3分でも十分な効果が得られるものと考えられる。
著者
鈴木 光也
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.15-23, 2011-01-20

superior canal dehiscence syndrome (上半規管裂隙症候群) とは, 上半規管を被っている中頭蓋窩天蓋や上錐体洞近傍の上半規管周囲に骨欠損を生じ, 瘻孔症状, Tullio現象, 難聴などさまざまな臨床症状を来す疾患単位である. 発症の機序はいまだ不明であるが, その頻度は欧米に比較してアジア諸国では少ない. 本症候群の瘻孔症状やTullio現象は上半規管の刺激によって生じるため特徴的な眼球偏倚がみられる. つまり時計回りまたは反時計回りの回旋成分を含んだ垂直性の動きであり, 上半規管が正に刺激されると上方に, 負に刺激されると下方に眼球が偏倚する. 難聴は伝音難聴 (気導—骨導差) も感音難聴も生じうる. その他, 前庭誘発筋電位 (Vestibular evoked myogenic potential) 検査において振幅の増大と反応閾値の低下がみられる. 画像診断には側頭骨HRCT (high resolution CT) が用いられる. 上半規管裂隙症候群の診断ではスライス幅0.5-1.0mmの冠状断CTが有用とされているが, CTのみでは裂隙の診断に限界があり, false positiveに注意しなければならない. false positiveを排除するためには神経耳科学的検査で上半規管瘻孔を示唆する眼球運動の確認が必要である.