著者
土屋 貴志
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-129, 1994-10-20 (Released:2017-04-27)

オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは選好功利主義に立って、重い障害をもつ新生児の安楽死を擁護するが、この主張はドイツ語圏の人々に、ナチスの「安楽死」の苦い記憶を想起させることになった。シンガーを招いたシンポジウムは障害者を中心とする広汎な抗議行動のために軒並み中止に追い込まれ、ドイツのマスコミはシンガーを「ファシスト」呼ばわりした。攻撃はさらに生命倫理学や応用倫理学、果ては分析哲学全般にまで飛び火し、これらの分野の研究者は学問的生命すら危ぶまれている。日本国内にも、バイオエシックスを弱者を切り捨て生命操作を押し進めるためのイデオロギーとみなす見方が一部にある。「シンガー事件」は、バイオエシックスの本質と意義を再考し、今後の日本の生命倫理学のあり方を考える上で、看過できない重大な問題を提起している。
著者
土屋 貴志
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-129, 1994

オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは選好功利主義に立って、重い障害をもつ新生児の安楽死を擁護するが、この主張はドイツ語圏の人々に、ナチスの「安楽死」の苦い記憶を想起させることになった。シンガーを招いたシンポジウムは障害者を中心とする広汎な抗議行動のために軒並み中止に追い込まれ、ドイツのマスコミはシンガーを「ファシスト」呼ばわりした。攻撃はさらに生命倫理学や応用倫理学、果ては分析哲学全般にまで飛び火し、これらの分野の研究者は学問的生命すら危ぶまれている。日本国内にも、バイオエシックスを弱者を切り捨て生命操作を押し進めるためのイデオロギーとみなす見方が一部にある。「シンガー事件」は、バイオエシックスの本質と意義を再考し、今後の日本の生命倫理学のあり方を考える上で、看過できない重大な問題を提起している。
著者
土屋 貴志 中川 恵子 常石 敬一 西山 勝夫 村岡 潔 岡田 麗江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.十五年戦争期の医学研究事例に関する歴史的研究石井機関における医学研究の解明に関しては、常石が3回の訪米調査(ワシントンDC周辺)、土屋・中川[末永]・西山・岡田・刈田らが3回の訪中調査(ハルビン、藩陽、北京、長春、大連、太原)を実施し、それぞれ研究成果を著書、雑誌論文、および学会発表として公表した。また、石井機関の紀要『陸軍軍医学校防疫研究報告』第2部(復刻版、不二出版刊)のすべての掲載論文について抄録を作成するプロジェクトを、刈田が幹事長、西山が事務局長、土屋・中川[末永]が幹事、岡田・村岡が会員である「15年戦争と日本の医学医療研究会」のプロジェクトとして、研究協力者と共に実施し、全論文810本の抄録を完成させた。満州医科大学に関する研究に関しては、中川[末永]を中心に資料を分析し、その成果を学会発表および講演、雑誌論文、著書として公表した。以上の研究により、石井機関および大学における当時の医学研究の詳細な実態および広がりを確認できた。2.医学研究倫理学の原理の探究土屋と村岡を中心に、土屋が主宰する「医療倫理学研究会」において毎週輪読会を行い、倫理学的原理の本質と事例に対する役割に関する邦文図書7冊、英文図書4冊、英文論文8本を精読した。土屋と村岡はその成果を学会発表および雑誌論文として公表した。以上により、事例および語りを中心とする倫理学研究法の意義、医学研究論理全体の見取り図、および医学研究に関する主要な倫理学的原理の1つであるベルモント原理の歴史的意義、を確認し、今日の日本における医学研究の倫理学的原理を確定するための展望を得ることができた。
著者
土屋 貴志 佐金 武 野末 紀之 新ヶ江 章友 石川 優 濱野 千尋
出版者
大阪公立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

性行動の実証的調査および文献テクスト分析を踏まえ「性愛および『性的倒錯』とはそもそも何なのか」という問題について考察する。「性的倒錯」とは (i)「本来の性愛」からの逸脱、(ii)性愛に関する社会・文化的規範に対する違反、を含むが、両者は必ずしも重ならない。また、「本来の性愛」なるものを疑う立場もあれば、「本来の性愛」の普遍性から社会・文化的規範の恣意性を批判する立場もある。本研究では、従来のセクシュアリティ/ジェンダー研究の成果も踏まえつつ、性愛をとりまく社会・文化的背景について深く考察すると同時に、性愛および「性的倒錯」それ自体を問題とする根柢的な探究を行う。