- 著者
-
坂下 史
- 出版者
- 東京女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
本研究は、近代イギリスの民間団体のひとつである農業協会の諸活動に、従来とは異なる角度から光を当て、その社会的な役割や意味を解明する。農業協会の多くは18世紀半ば以降に地方都市に設立され、情報の結節点になったとされる。その活動は狭義の農業振興にとどまらなかった。これは当時の農業が、農学として学問の一部を構成し、食料増産や産業振興を通じて経済に直結し、さらに国家や人類社会の福利の問題にも連なる分野であったことに関係する。本研究は、農業協会の活動から、工業化、都市化、国民国家化の時代に都市と農村を繋いだ交流圏の機能を明らかにするとともに、それを支えた地域社会の知識人の姿を浮かび上がらせる。これによって工業、都市、国家に偏重した従来のイギリス近代像の相対化に寄与することを目指す。本研究は、研究期間を通じて、次の四点を主たる内容として研究を進める。a.)当該時期のイギリスにおける改革全般と農業協会の活動に関する文献・史料の収集、b.)事例研究の対象である「バースおよび西イングランド農業協会」の活動を解明するための文献・史料の収集、c.)研究協力者との定期的な研究交流、そして、d.) 研究成果の順次的な公表、である。これまで、上記のうちのa.)、b.)を順調に進め、c.)に関しても28年度には研究者招聘を実施した。d.)については業績欄を参照。29年度の実績は次の通り。a.):関連二次文献の調査収集。電子データベースを利用したパンフレットと定期刊行物の調査。b.):英国の図書館、文書館での調査。「バースおよび西イングランド農業協会」関係の史料に加えて、全国の農業協会を束ねることを目的にロンドンに設立された「農業委員会Board of Agriculture」の議事録および文通記録の手稿文書の調査も行った。c.):研究協力者とはイギリスで面談し引き続き研究交流を実施した。