著者
坂口 幸弘 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.203-210, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
29
被引用文献数
13 3

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟で家族を亡くした遺族の複雑性悲嘆および抑うつ, 希死念慮の出現率と関連因子について明らかにする. 【方法】全国の緩和ケア病棟100施設を利用した遺族に対して自記式郵送質問紙調査を実施し, 438名(67.1%)からの有効回答を分析対象とした. おもな調査項目は, Inventory of Traumatic Grief (ITG), CES-D短縮版, Care Evaluation Scale (CES), Good Death Inventory (GDI)である. 【結果】複雑性悲嘆と評定された者は2.3%であった. 回答者の43.8%が臨床的に抑うつ状態にあると評定され, 11.9%に希死念慮が認められた. 重回帰分析の結果, ITGと, CESおよびGDIとの有意な関係性が示された. 【結論】緩和ケアや患者のQOLに対する遺族の評価が, 死別後の適応過程に影響を及ぼすことが示唆される.
著者
坂口 幸弘
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.281-289, 2008

The aim of this study was to investigate the relationship between making sense of loss and of life-oriented coping and the influences of these on mental health. Study 1 was conducted on 144 bereaved families and revealed that making sense of loss was related with age at death, readiness for death, and social support. A longitudinal study (Study 2) was conducted on 88 bereaved families. The results showed that both making sense of loss and life-oriented coping influenced mental health, after controlling for previous mental health. There was no significant relationship between making sense of loss and life-oriented coping. These findings suggest that making sense of loss plays a critical role in the psychological process among bereaved families, whereas there is other process including life-oriented coping.
著者
坂口 幸弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.137-145, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
4

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの現状と課題を把握するとともに,2002年調査との比較によって,この10年間での変化を検討することが本研究の目的である.【方法】2011年12月末日時点での緩和ケア病棟入院料届出受理施設を対象とし,看護師長宛てに2002年調査と同じ質問紙を送付した.その結果,156施設から回答が得られた(回収率:68.7%).【結果】最も多く行われていた遺族ケアサービスは手紙送付で78%,次いで追悼会が73%であった.10年前に比べ実施施設の割合はやや減少した.今後の課題に関して,「組織としての体制の整備」との回答が最も多く,10年前と同じ71%であった.「教育の充実」や「遺族のニーズ調査」との回答には減少がみられた.【結語】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの実施状況が示されたとともに,解決に向かいつつある問題や手つかずの課題が示唆された.
著者
坂口 幸弘
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、遺族ケアサービスの利用ニーズを明らかにするとともに、具体的な遺族ケアサービスの効果についても検討した。遺族調査の結果によると、実際に遺族ケアサービスを利用した人以上に、潜在的ニーズは決して小さくないことが示された。また、医療者が死別後にケアを行うことに対して、多くの遺族が好意的に評価していた。新たな遺族ケアサービスの一つである「わいわい食堂」は、悲しみからの回復を目指すケアにとどまらず、その後の生活や人生を視野に入れた取り組みとして、その有効性が示唆された。
著者
恒藤 暁 坂口 幸弘
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究1:目的は、訪問看護師による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、遺族への支援を目的に「患者の死後、遺族を訪問している看護師」は74%であった。訪問看護師による遺族支援については、62%が「不十分である」と回答した。研究2:目的は、養護教諭による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、在学中の児童・生徒が亡くなった場合の保護者への対応に関しては、「どのように接したらいいのか分からない」が34%であった。他の児童・生徒への対応では、「思い出を語り合うこと」が47%と最も多かった。研究3:目的は、宗教者による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、僧侶が考える遺族のニーズに関しては、「葬儀や法事などの宗教行事を執り行うこと」だけでなく、「遺族の悲しみや悩みをしっかり聴くこと」も遺族から求められていると回答していた。僧侶として苦慮した点に関しては、「今までの学びでは目の前にいる遺族をサポートすることができないと感じた点」が最も多かった。研究4:目的は、葬儀社による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、「遺族が集まる定期的な会合」を行っている葬儀社は4%に過きなかったが、34%は「行っていないが関心はある」と回答していた。研究5:目的は、葬儀社が提供する遺族支援サービス「ひだまりの会」のニーズと効果を検討した。研究対象は、会に参加した経験のある153名である。結果として、最も多かった参加理由は、「同じような体験をした人の話を聞きたかったから」で61%であった。2)会に参加して良かったことは、「同じ思いの人がいるということが分かった」が最も多かった。今回の結果は、「ひだまりの会」の一定の活動意義を示唆するものである。
著者
黒川 雅代子 恒藤 暁 坂口 幸弘 恒藤 暁 坂口 幸弘
出版者
龍谷大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、平成18年度より3年間の計画で、第3次救急医療施設において、患者の治療中から死後までの継続した家族・遺族支援をおこなうための実践モデルを開発することを目的として実施した。主な研究成果は、第3次救急医療施設に心肺停止状態で搬送され、入院に至らずに亡くなった患者家族に対して現状調査を量的・質的に実施した。結果、救急医療施設における家族・遺族の現状及びニーズを明らかにした。また本研究と並行し、研究協力病院スタッフにより、看護師、医師、事務職員の家族・遺族支援についての現状調査が実施され、救急外来における医療従事者の対応について検討がなされた。これらの研究結果を踏まえて、現在「救急医療における遺族支援のための実践モデル」を試案作成し検討中である。
著者
坂口 幸弘 恒藤 暁 柏木 哲夫 高山 圭子 田村 恵子 池永 昌之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.697-703, 2004-09-01
参考文献数
14

全国規模の実態調査を行い,ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの提供体制の現状を明らかこした.87施設から回答が得られ,回収率は90%であった.87%の施設が遺族ケアのニーズはあると認識し,84%の施設がすべての遺族を遺族ケアの対象と想定していた. 44%の施設では遺族ケアは勤務外で,手当は特になかった.30%の施設では遺族ケアのための教育を行っていなかった.1施設のみが,明文化された基準に基づくリスク評価を行っていた.56%の施設は専門家との連携を取つていなかった.半数以上の施設が,遺族ケア実施上の諸問題として,不十分な教育,組織体制の不備,時間の不足,人材の不足を経験していた.