著者
坂巻 祥孝
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.243-265, 1996-12-01

Monochroa属は全北区で約40種分布することが知られている.このうちの6種が日本に分布することが最近になって分かってきた.今回日本産の本属標本250個体以上を観察し,更にヨーロッパ産の各種標本と見比べた結果,本邦から2新種を含む11種を見いだすことが出来た.2新種M.kumatai,M.pallidaのうちの後者は,Sakamaki(1993)でPaltodora cytisellaと誤同定されたものであるが,Sattler(1992)の取り扱いに従い,PaltodoraをMonochroaのシノニムとして扱った結果,本新種はMonochroa属に含むべきものであると判断された.また,4既記載種M.pentameris,M.leptocrossa,M.hornigi,M.divisellaが本邦より新たに記録された.これらのうちM.pentamerisとM.leptocrossaは本研究にて新たにAristotelia属より移動したものである.[属の特徴]Monochroa属は,Argolamprotes,Eulamprotes,Daltopora属などに近縁とされている.本属の雄交尾器はこれらの近縁な他属に比べて属内で構造の変化が著しいが,以下の形質を兼ね備えることで他属から見分けることが可能である.Valvaは先端に向かって細まり,その内面には多くの長い刺毛を備える;harpeは多かれ少なかれ丸く,膨らむ;sacculusは指状に伸長する;aedeagusには多くの細かなcornutiを備える.また各種の同定にあたってはFigs 9,11に示すようにlabial palpusや触角の色彩パタンも有用である.[各種の特徴]Monochroa kumatai n.sp.(新種)(Figs 1,7-A,9-A,11)クマクシラホシキバガ(新称)外見上labial palpusが末端節先端以外すべて黒いことで日本産同属他種から容易に区別が可能.本種はヨーロッパ産のM.inflexella,M.lutulentellaおよびM.elongellaに類似するが,単眼が消失していることでM.lutulentellaとは見分けられ,雄ならば交尾器aedeagusのcornutiがM.inflexella(0.05mm)より短くM.elongella(0.015mm)より長いこと(本種では0.03mm),雌ならばsignum上の尖突起が頭部側の縁に並ぶことで見分けられる.寄主植物は不明.北海道と本州に分布し,成虫の出現期は7月中旬から8月中旬.Monochroa suffusella(Douglas,1850)(Figs 7-B,9-B,11)イグサキバガ(新称)前翅の基部から前知長の2/3の前縁上に黒褐色の斑紋が現れることで同属の他種から区別される.本種は旧北区全体に広く分布し,日本でも北海道と本州に分布する.寄主植物はカヤツリグサ科のワタスゲ属(Eriophorum)とスゲ属(Carex)が記録されているが,今回新たにイグサ科のイ(Juncus effusa var.decipiens)も寄主植物であることが分かった.幼虫は春に寄主植物の茎に潜っており,成虫は6月中旬から7月に見られる.Monochroa subcostipunctella Sakamaki,1996(Figs 7-C,9-C,11)ニセイグサキバガ(新称)前種に近縁と思われるが,基部から前知長の1/3のSc脈上に明瞭な黒い斑紋が現れることで前種とは容易に区別できる.北海道と本州に分布.寄主植物はイグサ属(Juncus sp.)で幼虫は前種と同様に春に茎の中から見つかるが,成虫の出現期は,7月の中旬から8月の初旬である.Monochroa divisella(Douglas,1850)(Figs 2,7-D,9-D,11)(日本新記録種)アヤメキバガ(新称)前翅地色のcosta側2/5が麦わら色でdorsum側3/5が茶褐色に明瞭に分かれているという点で他種からの区別は容易.ヨーロッパから日本まで旧北区に広く分布し,寄主植物はアヤメ属(Iris spp.).幼虫は前年秋に寄主植物の葉に潜り,球根またはその周辺で幼虫越冬.翌年春に蛹化し,成虫は室内飼育では5月下旬から6月中旬に羽化.Monochroa cleodora(Meyrick,1935)(Figs 7-E,9-E,11)ウスキマダラキバガ外部標徴では次種との区別は困難.雌交尾器のductus bursae内に薄くキチン化した筒状構造があること,signum上の尖突起が先端で4叉していることで同属他種との区別が可能である.寄主植物は不明.本州,四国,九州に分布.成虫は7月下旬から8月下旬まで出現.Monochroa cleodoroides Sakamaki,1994(Figs 7-F,9-F,11)ヒメキマダラキバガ(新称)外部標徴では前種との区別は困難.雌交尾器のcestumは長く伸長し,前種のような筒状構造は無い.Signum上の尖突起は先端で丸く途切れることで同属他種との区別が可能である.寄主植物は不明.本州,九州に分布.成虫は6月中旬から7月下旬まで出現.Monochroa japonica Sakamaki,1996(Figs 8-A,9-G,10,11)ミゾソバキバガ(新称)前述の2種に酷似するが,前翅の地色が前述2種では白色であるのに対し,麦わら色から褐色であることで判別は容易.北海道,本州,九州に分布.寄主植物はミゾソバ(Polygonum thunbergii).幼虫は前年秋に寄主植物の茎に潜り内部を食害した後,その場で幼虫越冬.晩春に蛹化し,成虫は6月下旬から8月初旬に出現.Monochroa hornigi(Staudinger,1883)(Figs 3-A,B,8-B,9-H,11)(日本新記録種)ホーニッヒチャマダラキバガ(新称)次種に酷似するがBruun(1957)の雌の交尾器の記述に拠れば第8腹節の腹面に次種のような極端なくぼみがないことで区別できる.ヨーロッパから日本まで旧北区全体に広く分布する.ヨーロッパでの寄主植物はPolygonun属(Polygonum spp.).北海道の札幌で7月初旬に1♂が採れている.Monochroa leptocrossa(Meyrick,1926),n.comb.(新結合)(Figs 3-C,D,8-C,9-I,11)ウスイロフサベリキバガ(新称)前種に酷似するが雌の交尾器の第8腹節の腹面に極端な三日月型のくぼみがあることで区別できる.分布はロシア(シベリア)と北海道.寄主植物は不明.北海道の幌加内町と積丹町で7月に1♀ずつ採集されている.Monochroa pallida n.sp.(新種)(Figs 4,5-A,8-D,9-J,11)マエチャキバガ本種は,Sakamaki(1993)でPaltodora cytisellaと誤同定されたものであるが,更に多くの標本を得て,ヨーロッパ産のM.cytisellaと比較したところ,単眼が痕跡的になっていること,labial palpusの第2節に毛髪状に発達した鱗片群がほとんどないこと,前翅の地色がより薄く前縁の中央部から翅頂部に向けて不明瞭ながら,暗褐色の帯が走ること,雄交尾器aedeagusのcornutiがM.cytisellaよりも少なく30程度であることなどから,新種であると判断された.寄主植物は不明.北海道と本州に分布し,成虫は7月中旬から8月下旬に出現する.Monochroa pentameris(Meyrick,1931),n.comb.(新結合)(Figs 6,8-F,9-L,11)イツボシマダラキバガ(新称)本種は前翅に4-6個の暗褐色の斑紋が現れ,外部標徴による判別は容易である.寄主植物は不明.本州(奈良県と広島県)で6月下旬から8月上旬にかけて成虫が採集されたのみである.
著者
坂巻 祥孝 小木 広行
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.209-215, 1999-06-30

Sakamaki(1996b)において日本産Monochroa属11種がまとめられたが,その後の筆者らの調査でさらに2種類が採集された.また,その他にも新たな標本を加えて検討をしたところ,これまで未知であったウスイロフサベリキバガの雄と判断される標本を2頭得た.これらの形態・生態的特徴は以下のとおりである.Monochroa lucidella(Stephens)(Figs 1,3,4)キモンキバガ(新称)本種は外見上,Eulamprotes属のキモンアカガネキバガに似るが,前翅中央部から基部を占める不明瞭な黄色い斑紋があることや開張が一回り大きい(開帳13.5-14.3mm)ことからも一見して,判別可能.同属内に外見が類似した種はなく,特徴的な前翅斑紋および無地褐色の触角等からも容易に識別される.雌雄交尾器の形状からはイグサキバガに近縁と考えられる.日本で幼虫は見つかっていないが,ヨーロッパではカヤツリグサ科のハリイ属(Eleocharis),ホタルイ属(Scirpus)の茎に潜っていることが知られている.旧北区全体に広く分布し,日本では北海道に分布.Monochroa leptocrossa(Meyrick)(Fig.5)ウスイロフサベリキバガ原記載以来本種は雌しか知られていなかったが,今回,外見上の特徴が本種の雌個体と一致する雄個体を2頭得たのでここに雄交尾器の特徴を示した.雄交尾器においては把握器の幅が広く,えぐれがどこにもないことから近縁のホーニッヒチャマダラキバガやミゾソバキバガなどと区別可能.Monochroa conspersella(Herrich-Schaffer)(Figs 2,6,7)サクラソウキバガ(新称)本種は外見上クマタシラホシキバガに似るが,一回り小さく(開帳9.5-11.8mm),暗褐色の触角は末端節にのみ黄土色の輪環を持つことで区別できる.春(5月)にエゾオオサクラソウに潜葉している幼虫を採集した.ヨーロッパでの食草はサクラソウ科のサクラソウ属,およびクサレダマである.旧北区全体に広く分布し,日本では北海道に分布.
著者
立田 晴記 坂巻 祥孝
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.194-205, 2011-07-05 (Released:2018-09-21)

近年の幾何学的形態測定学の発達によって,生物の形態的特徴を「シェイプ」と「サイズ」に明確に区分して解析できるようになり,多数の標識点間の相対的な位置関係の変異(歪み)も評価できるようになった.そのため,従来検出が難しかった微妙な形態の違いや部分的な形態の歪みなどを量的に検出する精度が飛躍的に向上した.ここでは利用頻度が高い 1)多変量形態測定学,2)標識点の配置に基づく形態測定学,3)輪郭記述法の特徴を大まかに解説し,特に利用価値が高いと考えられる昆虫およびクモ・ダニ類を材料とした近年の幾何学的な標識点測定法と輪郭記述法の研究例を総説した.
著者
坂元 志帆 坂巻 祥孝 大迫 昭平 津田 勝男
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.59-65, 2012 (Released:2013-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

We examined the effects of trichomes and the glandular trichome exudate on the survival of the predatory mite Amblyseius swirskii on young potted tomato plants. Removing the trichomes from the plant surface increased the survival rate from 0.8% (untreated plants) to 12.2% and decreased the mortality on plants from 63.3% ( untreated plants)to 0%. Almost all of the dead mites on untreated plants were observed adhering to the sticky secretions from trichome glands. To evaluate the toxicity of the secretions, we tested the effects of its main components (2-tridecanon and 2-undecanon) on A. swirskii by exposing mites to these chemicals for 48 h. All mites survived treatments with either of the chemical concentrations alone or a blend of these two chemicals. These results suggest that the main cause of the mortality of A. swirskii on tomatoes is not the toxicity of the secretions, but rather adhesion to the sticky secretions from the glandular trichomes.
著者
〓 良燮 坂巻 祥孝
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.263-268, 1995-01-20 (Released:2017-08-10)
参考文献数
11

北海道産のハマキガ科9種とシンクイガ科1種について,その寄主植物に新たな知見が得られたので報告する.特にフタオビホソハマキ,コナミスジキビメハマキについては,これまで寄主植物がまつたく知られていなかつたものである.また,ゴトウヅルヒメハマキ,クワヒメハマキ,ネギホソバヒメハマキはいままで単食性(monophagous)と考えられていたが,2科以上を寄主とする漸食性(pleophagous)または多食性(polyphagous)の可能性があることがわかつた. T0rtricidaeハマキガ科 Eupoecilia citrinana Razowskiフタオビホソハマキ いままでに食草についてはまつたく知られていなかつたが,今回初めてナガボノシロワレモコウの花床(バラ科)に潜入し加害することが明らかになった.本種の所属するホソハマキガ族は独立の科ホソハマキガ科として扱われていたが,最近ではTortricinae亜科の1族として扱われている(Kuznetsov and Stekolnikov(1973), Razowski(1976)。ホソハマキガ族は,ブドウホソハマキのようにヨーロッパでブドウの大害虫となっているものも含んでおり,日本では現在のところ42種が知られている.しかし,日本では幼虫の寄主植物に関する知見は少なく今後,幼生期を用いた分類学的,生態学的研究が要望されるグループである.本族の幼虫はほとんどが狭食性で,根,茎,花床などに潜入するが,まれには草木の葉を巻くものもある. Eudemis profundana([Denis & Schiffermuller])ツママルモンヒメハマキ これまでにエゾノウワミズザクラ,ズミ,コナラ(ブナ科)などが寄主植物として知られていたが,シウリザクラ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes siderana(Treitschke)ギンボシモトキヒメマハマキ チダケサシ,トリアシショウマ,ウツギ(ユキノシタ科)やシモツケソウ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,エゾノシロバナシモツケ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes hydrangeana Kuznetsovゴトウヅルヒメハマキ 模式産地の南千島ではツルアジサイ(ゴトウツル)(ユキノシタ科)の花芽を食するが,今回初めてシナノキ(シナノキ科)も食草とすることが明らかになった. Olethreutes mori Matsumuraクワヒメハマキ クワ(クワ科)の大害虫として知られ,これまで単食性と考えられていたが,今回バラ科のアズキナシの葉も食害することがわかった. Lobesia (Lobesia) yasudai Bae et Komaiハマナスホソバヒメハマキ(新称)ノリウツギ(ユキノシタ科),ハマナス,シウリザクラ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,キク科のハンゴンソウの花床,ヨブスマソウの花床やゴボウの実も食害することがわかった. Lobesia(Lobesia)bicinctana(Duponche1)ネギホソバヒメハマキ ヨーロッパで100年前に単子葉植物の数種のネギ属(ユリ科)の加害記録があるのみだったが,今回双子葉植物のナガボノシロワレモコウ(バラ科)の花床を加害することが明らかになった. Enarmonia flammeata Kuznetsovコナミスジキヒメハマキ 成虫はササ群落で多数の個体が観察されるが,食草は不明であったが(川辺,1982),今回初めて幼虫がチマキザサ(クマイザサ)の幼鞘に潜って加害することが明らかになった. Rhopobota neavana(Hubner)クロネハイイロヒメハマキ これまでにリンゴ,ズミ,ナナカマドなどバラ科植物を加害することが知られていたが,今回モクセイ科のヤチダモも食することがわかった. Carposinidaeシンクイガ科 インド・オーストラリアを中心に世界に広く分布するが,世界に約200種,日本で13種が記録されている小さな分類群である. Copromorphidae(インド・オーストラリアを中心に約60種記載)と本科の2科でシンクイガ上科(Corpomorphoidea)を構成し,幼虫は樹皮,花,果実などに穴をあけ食入するものが多い(Scoble,1992). Carposina sasakii Matsumuraモモノヒメシンクイ これまでリンゴ,モモ,ナシなどの果実を加害する著名な害虫として知られていたが,今回ハマナス(バラ科)の果実も食することがわかった.
著者
〓 良燮 坂巻 祥孝
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.263-268, 1995
参考文献数
11

北海道産のハマキガ科9種とシンクイガ科1種について,その寄主植物に新たな知見が得られたので報告する.特にフタオビホソハマキ,コナミスジキビメハマキについては,これまで寄主植物がまつたく知られていなかつたものである.また,ゴトウヅルヒメハマキ,クワヒメハマキ,ネギホソバヒメハマキはいままで単食性(monophagous)と考えられていたが,2科以上を寄主とする漸食性(pleophagous)または多食性(polyphagous)の可能性があることがわかつた. T0rtricidaeハマキガ科 Eupoecilia citrinana Razowskiフタオビホソハマキ いままでに食草についてはまつたく知られていなかつたが,今回初めてナガボノシロワレモコウの花床(バラ科)に潜入し加害することが明らかになった.本種の所属するホソハマキガ族は独立の科ホソハマキガ科として扱われていたが,最近ではTortricinae亜科の1族として扱われている(Kuznetsov and Stekolnikov(1973), Razowski(1976)。ホソハマキガ族は,ブドウホソハマキのようにヨーロッパでブドウの大害虫となっているものも含んでおり,日本では現在のところ42種が知られている.しかし,日本では幼虫の寄主植物に関する知見は少なく今後,幼生期を用いた分類学的,生態学的研究が要望されるグループである.本族の幼虫はほとんどが狭食性で,根,茎,花床などに潜入するが,まれには草木の葉を巻くものもある. Eudemis profundana([Denis & Schiffermuller])ツママルモンヒメハマキ これまでにエゾノウワミズザクラ,ズミ,コナラ(ブナ科)などが寄主植物として知られていたが,シウリザクラ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes siderana(Treitschke)ギンボシモトキヒメマハマキ チダケサシ,トリアシショウマ,ウツギ(ユキノシタ科)やシモツケソウ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,エゾノシロバナシモツケ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes hydrangeana Kuznetsovゴトウヅルヒメハマキ 模式産地の南千島ではツルアジサイ(ゴトウツル)(ユキノシタ科)の花芽を食するが,今回初めてシナノキ(シナノキ科)も食草とすることが明らかになった. Olethreutes mori Matsumuraクワヒメハマキ クワ(クワ科)の大害虫として知られ,これまで単食性と考えられていたが,今回バラ科のアズキナシの葉も食害することがわかった. Lobesia (Lobesia) yasudai Bae et Komaiハマナスホソバヒメハマキ(新称)ノリウツギ(ユキノシタ科),ハマナス,シウリザクラ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,キク科のハンゴンソウの花床,ヨブスマソウの花床やゴボウの実も食害することがわかった. Lobesia(Lobesia)bicinctana(Duponche1)ネギホソバヒメハマキ ヨーロッパで100年前に単子葉植物の数種のネギ属(ユリ科)の加害記録があるのみだったが,今回双子葉植物のナガボノシロワレモコウ(バラ科)の花床を加害することが明らかになった. Enarmonia flammeata Kuznetsovコナミスジキヒメハマキ 成虫はササ群落で多数の個体が観察されるが,食草は不明であったが(川辺,1982),今回初めて幼虫がチマキザサ(クマイザサ)の幼鞘に潜って加害することが明らかになった. Rhopobota neavana(Hubner)クロネハイイロヒメハマキ これまでにリンゴ,ズミ,ナナカマドなどバラ科植物を加害することが知られていたが,今回モクセイ科のヤチダモも食することがわかった. Carposinidaeシンクイガ科 インド・オーストラリアを中心に世界に広く分布するが,世界に約200種,日本で13種が記録されている小さな分類群である. Copromorphidae(インド・オーストラリアを中心に約60種記載)と本科の2科でシンクイガ上科(Corpomorphoidea)を構成し,幼虫は樹皮,花,果実などに穴をあけ食入するものが多い(Scoble,1992). Carposina sasakii Matsumuraモモノヒメシンクイ これまでリンゴ,モモ,ナシなどの果実を加害する著名な害虫として知られていたが,今回ハマナス(バラ科)の果実も食することがわかった.
著者
津田 勝男 山下 紘平 坂巻 祥孝 櫛下町 鉦敏 青木 智佐 飯山 和弘 岡田 斉夫 河原畑 勇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.119-122, 2005
被引用文献数
2

長期間保存されたNPVについて、その病原性を確認するためにハスモンヨトウ幼虫により生物検定を行った。多角体を水に浮遊して4℃の条件下で24年から34年間保存した7種類のNPVウイルス株を供試した。この結果、6種類のウイルス株が病原性を保持していることが確認された。病原性が確認された各ウイルス株のLC50値(PIB/ml)は、ハスモンヨトウNPV福山株は5.5-6.1×10(5)、ワタヨトウNPVエジプト株は6.1-8.6×10(5)、ヨトウガNPV芸北株は1.5-2.0×10(9)、ヨトウガNPV東京株は1.9-4.3×10(8)、シロモンヤガNPVは3.9-4.7×10(8)、アワヨトウNPVは3.6-5.7×10(7)で、24年から28年間の長期保存の間に病原力は低下したが、病原性が残存していることが明らかになった。一方、保存期間が34年であったクサシロキヨトウNPVでは病原性が消失していた。また、長期間の保存によって病原力が低下した場合でも、再接種を行い虫体によりウイルスを増殖させることによって病原力が回復することが確認された。
著者
島内 円夏 上和田 秀美 福田 健 津田 勝男 坂巻 祥孝 櫛下町 鉦敏
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究 (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.13-21, 2010

The relationship between the number of male Spodoptera litura caught by a pheromone trap and the hourly mean wind velocity was studied for four months in the field using an automatic counting system. The maximum number of males trapped per hour was observed at wind velocities of 1-4 m/sec. Slightly fewer male moths were trapped when the wind blews strong, although more than 60 males/trap/h were still caught during the daily peak hours (0200-0400h) during very strong wind blews, when a typhoon was approaching. In order to monitor the field occurrence of the adult moth using pheromone traps, the mating activity of the moth and the numbers of males may be more important factors than wind velocity. Key words: automatic counting system, sex pheromone trap, Spodoptera litura, typhoon,