著者
高木 浩一 齋藤 達也 日下 智博 坂本 裕一 高橋 久祐 成松 眞樹 長根 健一 山口 諒
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.483-489, 2012-11-01 (Released:2014-02-20)
参考文献数
11

食用きのこの増収を目的に,電気刺激用パルス電源の開発と,それを用いて増収効果を検証した。木材腐朽菌のシイタケ,ナメコ,クリタケ,ハタケシメジの4種類を実験に用いた。パルス電源は,軽量コンパクト化が可能な誘導性エネルギー蓄積方式で構成した。電源出力は100kV以上,パルス幅は約100nsである。この電源でホダ木や菌床に高電圧を印加し,収量を調べた。電圧印加により,収量は1.3∼2.0倍に増加した。シイタケの4シーズンの累積収量は,電圧50または100kVの1回印加で,160から320gへ増加した。しかし電圧130kVでは240gに減少した。他のきのこも,50∼100kVで増収となった。
著者
金野 尚武 木村 茉穂 奥澤 里奈 中村 泰隆 池 正和 林 徳子 小原 あゆみ 坂本 裕一 羽生 直人
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.157-164, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3

木材腐朽性食用きのこ類の菌床栽培において,大量の廃菌床が発生している。廃菌床には腐朽木材が含まれているが現在のところ有効な活用方法がない。成分分析の結果,シイタケ栽培後の廃菌床には25.4%のセルロースが主要成分として含まれていた。そこで本研究では,シイタケ廃菌床にTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)触媒酸化を適用することで,セルロースナノファイバーを調製した。廃菌床(1g)を,3つの次亜塩素酸ナトリウム添加量条件下(20,40,80mmol)において,触媒量のTEMPO と臭化ナトリウムと共に酸化処理した。TEMPO 触媒酸化反応後,水不溶性画分を水中で懸濁させ,超音波処理によりセルロースナノファイバーを個々に分散させた。透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ,これらセルロースナノファイバーは幅2~3nm,長さ数μmであった。得られたセルロースナノファイバー分散液をキャストすることで透明なフィルムを作製した。セルロースナノファイバーフィルムの収率は次亜塩素酸ナトリウム添加量80mmol 条件下において最も高く,廃菌床1gに対して0.18gであった。また,廃菌床中に含まれるセルロースに対しての収率を算出したところ,71%であった。
著者
高木 浩一 齋藤 達也 日下 智博 坂本 裕一 高橋 久祐 成松 眞樹 長根 健一 山口 諒
出版者
農業機械學會
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.483-489, 2012-11-01
参考文献数
11

食用きのこの増収を目的に,電気刺激用パルス電源の開発と,それを用いて増収効果を検証した。木材腐朽菌のシイタケ,ナメコ,クリタケ,ハタケシメジの4種類を実験に用いた。パルス電源は,軽量コンパクト化が可能な誘導性エネルギー蓄積方式で構成した。電源出力は100kV以上,パルス幅は約100nsである。この電源でホダ木や菌床に高電圧を印加し,収量を調べた。電圧印加により,収量は1.3∼2.0倍に増加した。シイタケの4シーズンの累積収量は,電圧50または100kVの1回印加で,160から320gへ増加した。しかし電圧130kVでは240gに減少した。他のきのこも,50∼100kVで増収となった。
著者
小畠 靖 白井 伸生 河合 昌孝 村口 元 坂本 裕一 松本 晃幸
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2021-05-01 (Released:2021-06-16)
参考文献数
34

紫外線照射により胞子落下量が元株(野生型)の1/10,000程度に低下したシイタケ胞子欠損性変異体B682を分離した.SEM観察において変異体ヒダ表面には成熟胞子がほとんど認められず,未熟な球状胞子が観察された.変異体の子実体ヒダ組織をギムザ染色したところ,担子器の多くで8個の核が観察され,減数分裂後の担子器内4娘核の体細胞分裂が推察された.検定集団(98115A population)を用いた遺伝性解析で,本変異形質は一因子性の顕性変異によるものと推察された.次世代シーケンス解析に基づく元株と変異体ゲノムの配列比較により,変異体の推定遺伝子領域にナンセンス変異を生じる一塩基多型(SNP)を見出した.本SNP特異的なPCR増幅の有無は検定集団(32D population)の表現型と完全に一致した.B682はシイタケで初めて確認された顕性の胞子欠損性変異体であり,育種利用を進める上で本SNPはマーカーアシスト選抜を可能にする有効な変異点と考えられる.
著者
宮崎 安将 金子 真也 坂本 裕一
出版者
国立研究開発法人 森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

シイタケの子実体形成には光が必要である。現在までに光受容体をコードする遺伝子phrA, phrB, Le.cryを単離・同定しているが、光受容体は光を一番最初に受け取る分子であるため、これらの発現は分化ステージによらず、構成的であることが多い。そこで、きのこ類に存在する光応答メカニズムを含めた関連因子(タンパク質)を網羅するため、シイタケにおける子実体形成過程を①栄養増殖菌糸、②子実体原基、③成熟子実体に分け、各々の試料から細胞内タンパク質を抽出し、二次元電気泳動に供した。3種の蛍光染色(全タンパク質染色、リン酸化タンパク質染色、糖鎖付加タンパク質染色)を行い、モレキュラーイメージャーにて解析した。検出されたタンパク質は、各々の分化ステージにおいて約6000種類、リン酸化タンパク質は約300種類、糖鎖付加タンパク質は約30種類存在することが明らかとなった。発現に差異のあるスポットをゲルから切り出した後プロテアーゼ処理を行い、目的タンパク質の分解産物(ペプチド)画分を得た。サンプルはLC-MS/MSにてアミノ酸配列解析を行った後、タンパク質質量分析器データベース(マスコット・サーバー)に対し相同性検索を行い、目的産物タンパク質を同定・機能推定を行った。その結果、子実体形成期に特異的に発現するタンパク質は、その発現が上昇するもの(脂肪酸分解酵素、ATP合成タンパク質、G-タンパク質ファミリー、細胞骨格タンパク質、シグナル伝達関連因子等)と、一方減少するもの(カタラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、オキシドレダクターゼ等)が同定された。これらタンパク質は、現在までのトランスクリプトーム解析によるデータと照らし合わせ、きのこの子実体形成期間に細胞内で起こっている代謝やシグナル伝達経路を如実に反映しているものと示唆された。
著者
坂本 裕一 小倉 健夫
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本応用きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13453424)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.85-91, 2003-07-25

アミガサタケの栽培方法を確立するために,菌核の形成方法を検討した.アミガサタケは腐生菌の培養に用いられているバーク堆肥よりも,穀物を用いた培地の方が良好な菌核発生を示した.また,穀物培地を用いた場合,培地中に空隙があることが重要であることが明らかとなった.さらに,上段に貧栄養の土壌培地,下段に富栄養の穀物培地を重ねた二段培地上に菌核を移したところ,菌核がより大きく生長することが確認できた.菌核の生長は上段の培地がpH7.5の時が最も良かった.菌核は土などを巻き込みながら近くの菌核と融合して直径3〜4cm程度の大きさに生長し,子実体の発生には充分であると期待される大きさに達した.