著者
城 斗志夫 工藤 卓伸 田﨑 裕二 藤井 二精 原 崇
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.315-322, 2013-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

キノコにおいて香りは美味しさを構成する大事な要素である.そのために多くのキノコにおいて香気成分が分析されている.キノコの中にはマツタケや干しシイタケのように特徴香を持つものもあるが,大部分のキノコにおける香りの主成分は1-オクテン-3-オールや1-オクテン-3-オン,3-オクタノン,3-オクタノールなどの揮発性C8化合物である.C8化合物の生合成には,脂質過酸化酵素,過酸化脂質開裂酵素,酸化還元酵素が関与すると考えられているが,よくわかっていない部分も多い.そこで本稿ではキノコの香気とその生合成に関わる酵素について述べる.
著者
ラフマン・アイラ 城 斗志夫 伊東 章 片岡 龍磨 大西 真人 渡辺 敦夫 Rahaman Aila Jyou Toshio Itou Akira Kataoka Tatsuma Oonishi Masato Watanabe Atsuo
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.151-160, 2005-06

包装餅工場を対象に繁忙期と閑散期について紅場内の用水使用量の調査を行った, 洗米工程と浸漬工程ともに, シーズンによる違いはなく.米1トンあたり約5m3の絹水が使用されており.両工程で工場全体の用水使用量の約60%に相当することがわかった,そこで, 包装餅の品質.とくに微生物による保蔵安定性を損なうことなく.餅製造工場の洗米等用水 (ここは、洗米用水と浸漬用水の両者を併せて洗米等用木とする.以下洗米等排水、洗米等工程についても同様の意昧で用いる) 費用と排水処理コストの低減を目的に洗米等排水を膜分離技術により毒生し, 洗米等用水としてリサイクルすることを目的に本研究を行った.排水の再生には.予備試験の結果等からUFにより再生することとし, 分画分子量3万.10万および15万の3種の中空糸UF膜モジュールを用い, 膜モジュールの選定を行った.また, 洗米等排水の成分分析結果から, 1次・2次洗米排水には溶質等戒分 (溶質と懸濁成分を合わせて溶質等成分とする) の濃度が高く, また予備実験の結果UF処理におけろ透過流束が著しく低いことがわかった.したがって, 1次・2次洗米排水は活性汚泥法で処理することにし, 溶質等成分の少ない3次洗米排水以降のものを再生することにした.3次洗米以降の洗米排水と浸漬排水を混合した洗米等排水を試料とし.UF処埋による再生とリサイクルに関する研究を行った.透過流束.高分子成分としてのタンパク質と低分子量成分としての脂肪酸阻止性能, さらに.膜の洗浄回復性の点から分画分子量15万の膜が洗米等排水の処理に適していることがわかった.In a packed rice cake niariufacturing plant, about 5 m3 fresh water to one Lori of raw rice is used in each process of the rice washing and soaking process. The amount of water used ini both processes accounted for about 60% of that in the whole plarit regardless of season. The purpose of this study is to clarify the rice washing drainage by inernbrane separation techriictue and to reuse the clarified water in the rice washing and soaking processes in order to decrease the costs of fresh water and wastewater treatirient without spoiling product quality. especially storage stability related to rrucroorganisins. Because the results of the preliminary experiments suggested that UF membrane is suitable fur clarification of rice washing drainage, three types of hollow fiber CF riiembrane modules were tested nominal molecular weight cut off. 30kDa, 100kDa. and 150kDa. The analysis of drainage from the rice washing and soaking processes revealed that the first and second rice washing drainage contained a lame quantity of solutes and suspended substances. and permeation flux were very low. Therefore, we decided that the first and second drainage should be treated by active sludge method. and the other drainage should be clarified by UF membrane for recycling. A mixture of third to fifth rice washing drainage and rice soaking drainage was used for clarification and recycling experiments. The membrane modules far clarification of rice washing drainage was evaluated from the viewpoint of peririeation tiux, rejection rate of solutes. which were protein as high molecular weight substance and fatty acid as low molecular weight substance, and tiux recovery by riiembrane washing. It was concluded the meiribraiie module of 150 k was the most suitable for the clarification and recycling of rice washing drainage.
著者
野村 章子 野村 修一 山田 好秋 河野 正司 高橋 肇 江川 広子 植田 耕一郎 城 斗志夫
出版者
明倫短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、流動性に富みかつ凝集性のよい食品について物性試験を行うことにより、摂食・嚥下機能に障害のある要介護者のための食品としての有効性を評価することにあった。そのために明確にしなければならなかった具体的な事柄は、食品としての物性(硬さ、付着性、凝集性)であった。研究計画の初年度は主に、高たんぱく、低カロリーとして注目されているグルテンの構成要素である2つのタンパク(グリアジン、グルテニン)に着目し、小麦粉からのグリアジンおよびグルテニンの分離を試みたものの、高純度なグリアジンとグルテニンを調整することはできなかった。次年度は、高純度ではないが食品会社から入手したグルテニンとグリアジンを配合したクッキーの物性測定を行った。その結果、嚥下補助食として適正な配合比率を見出した。最終年度は、今までの研究成果に基づき、調整する試験食品の種類を増やして物性測定を行った。臨床試験により、咀囑性・食塊形成性との対応を見出した。さらに、本研究に関連して調査した要介護者の口腔機能と全身状態が、要介護者の食事形態におおいに影響することもわかった。本研究成果は、第15回日本老年歯科医学会学術大会、第10回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会、第3回明倫短期大学学会学術大会で報告した。今後は、要介護度の重度化防止を目的とし、要介護者の食事摂取を向上させるために、義歯治療口腔ケアを実施するための訪問診療機器の開発に繋げる予定である。
著者
城 斗志夫
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

食用キノコの主要香気成分、1-オクテン-3-オールの生合成機構の解明を目的として、その生合成に深く関与すると考えられるリポキシゲナーゼ(LOX)を香り高いことで知られているヒラタケ(Pleurotus ostreatus)から単一に精製し、合成機構との関連を検討した。ヒラタケの傘をブレンダーと超音波破砕機でホモジナイズ後、遠心して粗酵素液を調製した。これをセファクリルS-400ゲルろ過カラム、ダイマトレックスグリーンAアフィニティーカラム、DEAE-トヨパールイオン交換カラムの3つのステップで精製した。その結果、LOXは126倍に精製され、回収率は5%、比活性33U/mgの蛋白質が得られた。精製酵素をSDS-PAGEで分析したところ一本のバンドしか検出されず、上記の方法でLOXは均一に精製されたことがわかった。精製酵素のゲルろ過による分子量は72,000で、SDS-PAGEでの分子量が67,000であったことから同酵素は単一のサブユニットから構成されていると考えられた。酵素反応の最適条件は25℃、pH8.0であり、本酵素は40℃以下、pH5〜9で安定だった。また、原子吸光分析と吸光スペクトル分析により本酵素は非ヘム型のFe原子を持つことがわかった。精製酵素は脂肪酸のうちリノール酸に高い特異性を示し、その反応生成物を調べた結果、13-ヒドロペルオキシドを特異的に生成していた。キノコの1-オクテン-3-オール生合成経路には9-ヒドロペルオキシドを経た経路と13-ヒドロペルオキシドを経た経路の2つの説があり、ヒラタケの結果は後者により1-オクテン-3-オールが合成されることを示唆している。さらに、露地栽培されたヒラタケのLOX活性を収穫時期である秋から冬にかけ測定したところ、収穫初期の10月頃で最も高く、寒くなるにつれ低下することがわかり、人が感じる香りの強度変化と一致していた。