著者
栗原 崇 伊藤 公紀 亀山 秀雄
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.61-72, 2012

世界の国々を取り巻く気候変動問題は、地球温暖化対策やカーボン市場などの環境ビジネスを牽引する西洋諸国が主導権を握る状況にある。背景にある「気候変動は人為的CO2排出が原因」という要因の単純化は、西洋メンタリティが関与していると考える。このような単純化は、非効率的かつ非効果的な対策に繋がり、社会のレジリエンスを低くする。本稿では、東洋的なリスクマネジメントを可能にするP2Mフレームワークの形成を目指して、西洋主導の気候政策にP2M手法を適用する。これにより、気候変動に対して高レジリエンスな社会の構築に資する。具体的には、方法論としてのアジア的アプローチに関する議論を通じて、西洋的及び東洋的アプローチの各利点を生かすことにより、気候変動政策に対する中庸的リスクマネジメントを従来のP2M線形モデルから導くための考察を行う。
著者
松原 崇 陳 鈺涵 谷口 隆晴
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.629-633, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
10

近年,ニューラルネットワークなどの機械学習手法を物理現象のモデリング・シミュレーションに応用する研究が注目されている.このような研究は,支配方程式が未知の現象をモデル化する以外にも,物理シミュレーションを高速化・高精度化できる可能性があり,期待されている.本稿では,そのような研究のうち,代表的な研究であるハミルトニアンニューラルネットワークと,それを改良したニューラルシンプレクティック形式,DGNetについて説明する.
著者
城 斗志夫 工藤 卓伸 田﨑 裕二 藤井 二精 原 崇
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.315-322, 2013-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

キノコにおいて香りは美味しさを構成する大事な要素である.そのために多くのキノコにおいて香気成分が分析されている.キノコの中にはマツタケや干しシイタケのように特徴香を持つものもあるが,大部分のキノコにおける香りの主成分は1-オクテン-3-オールや1-オクテン-3-オン,3-オクタノン,3-オクタノールなどの揮発性C8化合物である.C8化合物の生合成には,脂質過酸化酵素,過酸化脂質開裂酵素,酸化還元酵素が関与すると考えられているが,よくわかっていない部分も多い.そこで本稿ではキノコの香気とその生合成に関わる酵素について述べる.
著者
小川 隆雄 栗原 崇 伊藤 公紀
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.45-55, 2014

第18回気候変動枠組条約締約国会議(COP18)は2012年末に開催され、2020年から新たな枠組みを開始することが合意された。次期枠組みでは途上国の参加が鍵となるが、途上国の削減行動の実効性を高めるために導入されたのがMRV(測定・報告・検証)制度である。MRV制度については2007年から検討されてきたが、具体的な実施方法は未定である。本稿では、MRV制度の検討にはP2M理論によるアプローチが適していると考え、3Sモデルを適用しMRV制度の実行スキームモデルの構築を行った。具体的には、民間主導により世界で広く実施され、MRV制度と共通の構造(PDCAサイクル)を持つISO認証制度を利用することで、途上国にも受け入れが容易でかつ実効性の高い国際枠組み(ISO-MRV)の構築を試みた。
著者
鏡原 崇史
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.109-119, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
44
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児にとって理解しやすい表情素材(線画・イラスト・大人写真・幼児写真)とはどのようなものであるか,さらに,大人から見て幼児の意図表情は表情としてどの程度適切であり、理解しやすいものであるのかという点について明らかにすることである。実験の結果,表情理解に関しては,年少児頃には表情素材の種類を問わず基本的な表情の理解が可能であることが示された。表情表出に関しては,喜び表情では大人が理解しやすい表情を表出することができるものの,悲しみや怒り表情は大人から見て理解しにくい表情であることが明らかとなった。
著者
木村 拓人 柳本 卓 日高 浩一 上原 崇敬 大島 達樹 伏島 一平 酒井 猛
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.142-149, 2019-03-15 (Released:2019-04-02)
参考文献数
38
被引用文献数
2

外洋域に分布するヒラマサ3種(Seriola lalandi, S. dorsalis, S. aureovittata)の遺伝的差異から集団構造を明らかにするため,北西太平洋(日本沿岸,北西太平洋外洋,天皇海山)およびタスマン海で漁獲された個体を用いて,mtDNAのND4,CRおよびCOI領域の塩基配列を分析した。その結果,北西太平洋の4つの漁獲地点の個体間に遺伝的な差はなく,これらの北太平洋と南太平洋のタスマン海の集団間には有意な差があることがわかった。
著者
柏原 悠 松原 崇
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1F5GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

生成モデルによる異常検知は,正常画像のみで学習したモデルで,入力画像と再構成画像の差異により異常画像であるかどうかを判断する方法が一般的である.しかし,既存の生成モデルでは再構成画像が不鮮明であったり,元の画像から回転するなどの問題がありパッチベースのモデルや潜在変数空間を使用したモデルに比べて異常検知の性能が劣っている.工業用製品における欠陥品の検出など現実世界の異常検知では,検出対象の物体の向きが同一でないことや,再構成画像が不鮮明なことによる微小な傷の見逃しにより,既存の生成モデルでは異常の検出に失敗することがある. そこで,我々は鮮明な再構成が可能であるDenoising Diffusion Probabilistic Models(DDPM)をベースのモデルとして,異常検知で拡散過程を使用しない方法により,画像データの回転に対して頑健な異常検知を可能にした.本研究では工業用製品のデータセットであるMVTeC ADを使用しモデルの評価を行い,既存の生成モデルによる性能を大幅に上回る0.92のAUROCを達成した.
著者
安岡 愛理 佐藤 貴宣 青木 千帆子 松原 崇 秋風 千恵 Yasuoka Airi Sato Takanori Aoki Chihoko Matsubara Takashi Akikaze Chie ヤスオカ アイリ サトウ タカノリ アオキ チホコ マツバラ タカシ アキカゼ チエ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.30, pp.33-53, 2009

研究ノートDisability Studies(障害学)は、一九六〇年代後半から七〇年代中葉にかけて世界的規模で起こった、障害者による社会運動を背景として誕生した。九〇年代になって、日本にも学問として紹介されている。日本の障害学はイギリスの影響が強いことから、本稿ではイギリスの学術誌"Disability &Society"(以後DSとする)を対象として、国際的な障害学の動向を把握することを目的とする。一九八六年の創刊号から二〇〇八年二三巻四号までのDSに掲載された論文のうち、アブストラクトのある七八六件の論文を一次資料として採用し、各論文の主題を類型化しカテゴリーに分類して、そのトレンドを分析した。DSにおいて扱われる障害種別は次第に多様化する傾向にある。発刊当初から九〇年代半ばまでの間、障害を社会的文脈との関連において理論化していこうとする研究が盛んであった。それは障害学の核ともいうべき「障害の社会モデル」を精緻化するとともに、社会モデルの枠組みを用いて既存のさまざまな社会事象を分析する取り組みであった。しかし、それ以降は社会モデルを革新し、その射程範囲を広げていこうとする方向にある。また障害学の発展にともない、より多様な国と地域、より多様な障害種別がその論考の対象となってきている。したがって、今後は、エスニックマイノリティや女性障害者をも包摂し、多様化する障害種別にいかに対応していける理論を構築できるかが大きな課題となるだろう。Disability Studies have their roots in the social movement started by disabled people throughout the world from the late 1960s and until the 1970s. By 1990s Disability Studies was also introduced to Japan. The purpose of this paper is to find the trends of Disability Studies by reviewing the papers published in Disability & Society – a prominent British Journal of the field. We believe this review will be especially of interest in Japan, where Disability Studies are strongly influenced by research conducted in UK. As our primary source we have used the papers with abstracts published in "Disability&Society", starting from the inaugural issue of year 1986 and finishing with the volume 23 number 4 of year 2008. We have categorized the papers by subject and analyzed the tendencies. We have found that number of types of impairments appearing in "Disability&Society" grows increasingly year by year and that until the middle 90s many papers theorize disabilities through their connection with the social context. This tendency shows that during that period the Social Model of Disability – the key concept of Disability Studies – was increasingly used to produce more and more detailed understanding of the social phenomena of disabilities. From the second part of 90s the Social Model renews and starts to cover increasingly wider range of objects. Disability Studies gain more and more power, and papers on new types of impairments based on research in more and more countries and regions appear. We conclude that in future objects of inquiry should include disabled people from ethnic minorities and also disabled women, and that the ever growing number of types of impairments also needs theoretical innovations in the field.
著者
橋本 敦史 井上 中順 牛久 祥孝 濱屋 政志 松原 崇充 森 信介 VON・DRIGALSKI FELIX
出版者
オムロンサイニックエックス株式会社
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

生産年齢人口が減少する中,ロボットの産業活用は喫緊の課題である.ロボットによる作業代替を低コストで実現する方法として言語指示の活用が注目されている.しかし,「言語指示→ロボット制御」の従来型演算モデルは特定の作業に特化したものとなってしまっている.本研究では,多様な作業を対象とした汎用的な演算モデルを提案・検証する.言語・映像資源が豊富な調理を対象とし,サラダなどの比較的簡単な料理を言語指示に従って調理するロボットを最終年度までに実現することでコンセプト実証を目指す.
著者
立花 亮介 松原 崇 上原 邦昭
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

工業製品の製造現場において最も重要であることの一つは,製造された工業製品が期待される仕様を満たしていないときに,その製品を不良品であるとみなして取り除くことである.現状では異常な製品の発見や除去は人手で行うことが一般的であり,企業は異常製品の除去に対して高い人的コストを支払っている.そこで,異常検知の自動化によって製品の点検にかかるコストを削減することが求められている.最近では,画像から直接尤度を求めることが出来る深層生成モデルと呼ばれる確率モデルが提案されており,異常検知において一定の成果を達成している.しかし,工業製品はその構造が複雑かつ多様なため画像内における各部分の出現頻度が異なり,尤度が必ずしも異常度に対応せず,正しく評価できないという問題がある.そこで本論文では,深層生成モデルにおいて非正則化異常度を用いた異常検知を提案する.非正則化異常度はデータが潜在的に含有する複雑さに堅牢であり,画像内における各部分の出現頻度に依存せず評価を行える.提案手法の有効性を検証するために,工業製品の画像データに対して本手法を適用させ,異常検知性能においてその有効性を既存の手法と比較する.
著者
生田 宏一 谷一 靖江 原 崇裕 今井 久美子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

IL-7は胸腺や骨髄のストローマ細胞や上皮細胞が産生するサイトカインであり、リンパ球の増殖・生存・分化・成熟に不可欠である。しかしながら、リンパ組織におけるIL-7産生細胞の分布と機能については不明の点が多い。我々は、この問題を明らかにするために、まずIL-7-GFPノックインマウスを作製した。IL-7-GFPマウスでは骨髄ストローマ細胞、胸腺上皮細胞、腸管上皮細胞とともに、リンパ節やパイエル板のT細胞領域ストローマ細胞やリンパ管内皮細胞でGFPが発現していた。さらに、DSSにて大腸炎を誘導すると大腸上皮細胞におけるGFPの発現が上昇した。したがって、IL-7-GFPマウスは生理的ならび病的状態におけるIL-7産生細胞を明らかにするために有用であることがわかった。次に、我々はIL-7-floxedマウスを作製した。このマウスをFoxN1-Creトランスジェニック(Tg)マウスと交配し、胸腺上皮細胞でのみIL-7を欠損したコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを得た。FoxN1-Cre IL-7flox/floxマウスでは胸腺の全細胞数とγδT細胞数が1/15に減少した。一方、腸管上皮細胞でのみIL-7を欠損したVillin-Cre(Vil-Cre) IL-7flox/floxマウスでは、小腸のαβIELにほとんど変化がなく、またγδIELも30%程度減少しているもののかなりの数が残っていた。これらの結果から、胸腺上皮細胞が産生するIL-7が胸腺細胞の増幅と生存に大きなはたらきをしていることが明らかとなった。さらに、小腸のγδ型上皮内リンパ球が著しく減少したことから、この細胞集団が胸腺に由来することが示唆された。次に、Albumin-Cre(Alb-Cre) Tgマウスと交配し、肝細胞でのみIL-7を欠損したcKOマウスを得た。このマウスでは成体肝臓のNKT細胞とT細胞が減少し、胎児肝臓におけるB細胞の分化が低下していた。この結果から、肝細胞が産生するIL-7が肝臓におけるNKT細胞の維持やB細胞の分化に一定のはたらきをしていることが明らかとなった。
著者
伊藤 誠 須藤 哲也 高橋 暁史 原 崇文 岩野 龍一郎
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.143, no.5, pp.398-404, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
22

In this study, a direct drive in-wheel system is proposed as a high power density system for reducing the intermediate parts, such as a speed reducer by increasing the torque. We propose a design strategy to show that multipolarization and the improvement of the gap magnetic flux density can effectively increase the power density. A Halbach array magnet rotor that combines the main electrode magnets and spoke magnets with the core is adopted as a technique for improving the gap magnetic flux density. We compare the Halbach array type rotor to the conventional SPM type rotor by using both of magnetic circuit calculation and FEM analysis. Moreover, the actual sized in-wheel motor prototype with the developed Halbach array magnet rotor is fabricated and measures the no-load induced back EMF. The measured no-load induced back EMF agrees well with the analyzed waveform.
著者
茅原 崇徳
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,身体負担の総合評価関数の定式化について検討した.はじめに,身体部位ごとに任意の作業負荷をかけて負担感を計測する実験を行った.複数の近似モデルで負担感評価関数を作成し,ロジスティック関数を用いて負担感を高い精度で予測できることを確認した.さらに,上肢および全身の総合負担を予測する評価関数を定式化した.具体的には,すべての部位の負担が低い場合は平均値に影響され,一つ以上の負担感が高い場合には最大値に影響される関数として定式化した.提案した総合負担評価関数の有効性を実験により検証し,従来手法と比較して精度の高い評価指標であることを実証した.
著者
喜多 彩 中原 崇人 竹内 雅博 木野山 功 山中 堅太郎 峯松 剛 光岡 圭介 伏木 洋司 三好 荘介 笹又 理央 宮田 桂司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.4, pp.198-203, 2010 (Released:2010-10-08)
参考文献数
13
被引用文献数
6

正常細胞に何らかの異常が生じると,生体は異常な細胞を修復あるいは除去することによって,その恒常性を維持する.また,正常細胞において,アポトーシスによる細胞死誘導機構が破綻すると,異常な細胞は除去されることなく,がんに代表される様々な疾患の引き金となる.アポトーシス制御に重要な因子の1つとして,IAP(Inhibitor of Apoptosis)ファミリータンパク質が知られており,これまでに8つのIAPファミリーが同定されている.IAPファミリーの中でも特にサバイビンは,発現抑制による細胞死誘導の他に,がん特異的発現,細胞の有糸分裂制御,そして既存抗がん薬の感受性を増強させるという点で注目を集め,がん治療のターゲットとして今日まで多くの研究がなされている.YM155はアステラス製薬株式会社で創製されたサバイビン発現抑制薬であり,各種ヒトがん細胞株に対して増殖阻害作用を示した.またヌードマウス担癌モデルにおいて,体重に影響を与えることなく腫瘍の退縮をともなう抗腫瘍作用を示した.siRNAやリボザイムによるサバイビンの機能抑制によって,既存抗がん薬の感受性が増強することが知られているが,YM155は既存抗がん薬との併用投与により,毒性の増悪化なく既存薬の薬効を増強させた.さらに,臨床で広く診断に用いられているpositron emission tomography(PET)を用いた評価においてはYM155の薬効が非侵襲的に検出でき,臨床におけるPET診断の有用性が確認された.以上から,YM155はサバイビン発現抑制作用により,がん細胞に対し選択的に抗腫瘍効果を発揮するユニークな新規抗がん薬となることが期待される.