著者
塩野 寛 清水 惠子 上園 崇
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

検屍における凍死事例152例、解剖における凍死事例69例の合計221例について法医病態学研究と診断確立のため以下の研究を行った。1)左右心臓血の色調差総事例数221例中左右心臓血の採取が行われたのは128例であった。その内訳は検屍152例中63例、解剖事例69例中65例である。●色調差がみれらたのは検屍例48/63(76.2%)解剖例62/65(95.4%)であった。2)第1度凍傷(紅斑)175例中84例(男性43例、女性41例)で認められ全体の48%であった。3)胃・十二指腸粘膜下出血(Wischnewski斑)解剖例69例中34例(男性16例、女性18例)、49.3%に認められた。4)矛盾脱衣(Paradoxical undressing)矛盾脱衣は221例中男性33例、女性12例の計45例で認められ、全体の20.4%であった。5)アルコールの関与アルコール濃度測定は検屍例120例中42例で測定が行われ20例で検出された。解剖例50例中38例で測定され19例に検出された。合計170例中39例の22.9%に検出された。6)薬毒物の関与凍死例170例中21例(検屍例4例、解剖例17例)に検出を試み7例に検出された。検出された薬物は、レボメプロマジン(精神神経剤)、フルラゼパム、ブロムワレリル尿素、ブロチゾラム、三環系抗うつ薬であった。7)各臓器の細胞内熱ショック蛋白(ubiquitin蛋白)の動態について剖検例20例について肝臓、腎臓、肺、心臓、膵臓、脾臓、大脳、小脳の各臓器についてubiquitin蛋白の存在を調べたところ、肝臓の胆管上皮、腎臓の尿細管に多くの出現をみた。
著者
清水 惠子 塩野 寛 上園 崇
雑誌
大和証券ヘルス財団研究業績集
巻号頁・発行日
no.25, pp.16-22, 2002-02
被引用文献数
1

出版社版平成8年度から5年間の北海道内における異状死体を対象に,社会医学的分析を行い,特に65歳以上の孤独死に関して,その実態と予防対策ついて考察した.北海道では年間の4000体以上の異状死体が発見されており,年々増加傾向にある.死因は,病死が全体の50%以上を超え,自殺がこれに続いた.病死では,心臓疾患が最も多く,次の脳・血管疾患と合わせて90%以上を占めていた.自殺は縊死が圧倒的に多く,投身がこれに続いた.独居高齢者の孤独死は,平成12年度,65歳以上の高齢者の異状死体の24.1%を占め,年々増加傾向にあった.孤独死した528名の生活状況は,年金生活者,生活保護受給者であり,生活苦が多かった.独居高齢者65歳以上の自殺は10.2%で,独居でない同年齢者よりも,むしろ低い傾向にあった
著者
清水 恵子 斉藤 修 小川 研人 水上 創 上園 崇 塩野 寛 粟屋 敏雄 藤田 育志 松原 和夫
雑誌
法中毒 (ISSN:09159606)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.122-123, 2001-05

雑誌掲載版これ迄に起きた標記犯罪例として,部活顧問の高校教師による猥褻事件,軟派した女性への強姦,眠剤服用者による放火,飲酒者に対する強姦の4事例を提示し,自施設で行った健忘機構の行動薬物学的・神経化学的研究を紹介した.この研究により酒とベンゾジアゼピン系薬物との併用による前向健忘の機構は,両薬剤がGABA神経の活性化を介して海馬におけるプレシナプティックなグルタミン酸放出を抑制することで記憶障害を惹起する可能性が示唆された
著者
清水 惠子 荒川 穣二 表 哲夫 岩崎 寛 塩野 寛 並木 昭義
雑誌
臨床体温
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.63-70, 1999-08
被引用文献数
1

出版社版救急外来搬入時に偶発性低体温症を伴っていた蘇生後脳症について,脳低温療法の有用性を検討した.対象は溺水3例,乳幼児突然死症候群1例,雪崩による窒息1例の計5例であった.温度の設定と期間は意識レベル,脳浮腫の程度,循環動態によって決定した.脳低温療法への導入は常温症例よりも速やかであった.脳低温療法中にCT所見の改善が認められた3症例は社会復帰したが,脳低温療法の途中からCT所見の悪化の認められた2例は植物状態及び脳死であった.常体温症例に比べ心肺停止時間が長くても意識回復の可能性が高いが,脳浮腫の進行を止められない場合もあることより,心拍再開後に脳浮腫が認められる場合には,偶発性低体温症であっても積極的に脳低温療法を試みてよいと思われる
著者
塩野 寛 清水 惠子 松原 和夫 浅利 優 安積 順一 清水 惠子 塩野 寛
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

除草剤として世界的に広く使用されているパラコート(PQ)は、急性毒性として肺及び肝腎障害を生じ、慢性毒性(環境毒性として)では中枢神経障害を生じることがしられている。マウスを用いた実験から得られた生存曲線より、各種抗酸化剤及びACE阻害薬は、PQ毒性を抑制し生存率の向上が認められた。一方、PQによる中枢神経障害を抑制したドパミン作動薬やドパミントランスポーター阻害薬は、肺障害にはむしろ促進的に作用した。ACE阻害薬は、抗酸化作用があることが知られている。ACE阻害薬によるPQ毒性軽減には、酸化的ストレス抑制が関与していると考えられる。そこで、この機構を解明するために、PQ投与後2日及び4日後の肺組織ホモジネートについて、SDS-PAGEを行った。Cleaved caspase-3及びnitrotyrosine抗体によって、ウエスタンブロットを行い、抗体で染色された蛋白量はアクチンを指標として半定量化した。PQによって、nitrotyrosine抗体に反応する蛋白質が著明に増加し、PQ肺毒性に一酸化窒素による酸化的ストレスの関与が示唆された。このnitrotyrosine抗体に反応する蛋白質を免疫沈降法を用いて精製したところ、Mn-SODと考えられた。Mn-SODは、活性中心tyrosine残基を有し、ニトロ化されると活性を消失することが知られている。従って、PQによる酸化ストレスはさらに増大されることが示唆された。一方、アポトーシスの指標であるCleavedcaspase-3は、PQによって、わずかに検出された。この変化はPQ投与後2日後から著明に観察された。Captoprilによって、これらの蛋白質の出現が著明に減少した。従って、ACE阻害薬はPQによる酸化障害を防御し、PQ中毒時の治療薬として期待できる可能性が示唆された。
著者
清水 惠子 浅利 優 奥田 勝博 田中 宏樹 塩野 寛 松原 和夫
雑誌
法医病理 (ISSN:13415395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-19, 2017-07

ここに掲載した著作物の利用に関する注意 本著作物の著作権は法医病理研究会に帰属します。本著作物は著作権者である法医病理研究会の許可のもとに掲載するものです。ご利用に当たっては「著作権法」ならびに「日本法医病理学会倫理綱領」に従うことをお願いいたします。 Notice for the use of this material: The copyright of this material is retained by the Japanese Society for Forensic Pathology (JSFP). This material is published on this web site with the agreement of the author(s) and the JSFP. Please be complied with Copyright Law of Japan and the Code of Ethics of the JSFP if any users wish to reproduce, make derivative work, distribute or make available to the public any part or whole thereof. All Rights Reserved, Copyright the Japanese Society for Forensic Pathology「酔っぱらって記憶が無い」という現象は、アルコール飲料による一過性前向健忘であり、誰もが知るところである。犯罪者達は、少量の睡眠薬単独で、又は少量のアルコールとの併用で、被害者に一過性前向健忘が生じることを知っている。この知識は、医療関係者にはよく知られているが、捜査関係者を含む日本の一般社会には普及していない。被害者は女性とは限らない。捜査機関は、「渡された飲料を飲んだ後の記憶がない。その間に被害(準強姦や準強制わいせつ、昏睡強盗)に遭ったようだ」という事件の相談に困惑する必要はない。"睡眠薬による一過性前向健忘により、事件当時の記憶が欠落する"という知識が、捜査機関及び法医学者に普及し、被害者の人権が適切に守られることを希求している。
著者
吉岡 尚文 石津 日出雄 勝又 義直 塩野 寛 中園 一郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

旭川、秋田、名古屋、岡山および長崎の5地域につき、自殺者と対照群(現在健康に生活している男女)を対象にセロトニンレセプター1A遺伝子(5HT1AR)多型およびトリプトファンハイドロキシレース遺伝子(TPH HTH)イントロン7の2つの多型(HTH A779C、A218C)検索を行った。これら多型の出現頻度は対照群において地域差や性差は認められなかった。各地域の自殺者サンプル数が少ないため、地域ごとの統計解析は行わず、5地域全体をまとめた2群間の解析を男女別、年齢区分別に行った。5HT1AR型では、男女別、年齢区分別に観察したが、自殺者群と対照群との間で有意差は認められなかった。HTH A779Cでは男性には両群間の有意差は認められなかったが、女性において自殺者群のUU型が有意に多く、UL型が有意に少なかった。また、60歳未満の女性自殺者群ではUU型が有意に多かった(P=0.017)。HTH A218Cでは、男性には両群間の有意差は認められなかったが、女性において自殺者群のAA型が有意に多かった(P=0.038)。HTH A779C型とA218C型のハプロタイプでみると、地域による差は見られず、男子での両群間の差は認められなかった。しかし、女性では自殺者群にIL-AC型が有意に多かった。また、女性を年齢区分でみると、60歳未満では自殺者群にUU-AC型が有意に多かった(P=0.02)。以上の結果から、男性には遺伝子型による両群間の差は見られなかったが、女性の自殺者群と対照群とを比較すると、HTH A779C型ではUU型が、A218C型ではAA型が自殺者群に多く見られた。また、ハプロタイプでも女性の自殺者群でLL-AC型や60歳未満でUU-AC型が対照群に比べ有意に多くみられた。本研究により、脳内アミンの遺伝子が何らかの形で自殺行動と関連性を有していることが示唆された。
著者
清水 恵子 斉藤 修 小川 研人 水上 創 上園 崇 塩野 寛 粟屋 敏雄 藤田 育志 松原 和夫
雑誌
法中毒 (ISSN:09159606)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.122-123, 2001-05

雑誌掲載版 これ迄に起きた標記犯罪例として,部活顧問の高校教師による猥褻事件,軟派した女性への強姦,眠剤服用者による放火,飲酒者に対する強姦の4事例を提示し,自施設で行った健忘機構の行動薬物学的・神経化学的研究を紹介した.この研究により酒とベンゾジアゼピン系薬物との併用による前向健忘の機構は,両薬剤がGABA神経の活性化を介して海馬におけるプレシナプティックなグルタミン酸放出を抑制することで記憶障害を惹起する可能性が示唆された