著者
相田 潤 小林 清吾 荒川 浩久 八木 稔 磯崎 篤則 井下 英二 晴佐久 悟 川村 和章 眞木 吉信
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.308-315, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
41

フッ化物配合歯磨剤は成人や高齢者にも,う蝕予防効果をもたらす.近年,一部の基礎研究の結果をもとに,フッ化物配合歯磨剤がインプラント周囲炎のリスクになる可能性が指摘されている.しかし,実際の人の口腔内やそれに近い状況での検証はない.本レビューではフッ化物配合歯磨剤がインプラント周囲炎のリスクになるか評価することを目的とした.疫学研究および6つの観点から基礎研究を文献データベースより収集した.疫学研究は存在しなかった.基礎研究の結果から,1)pHが4.7以下の酸性の場合,フッ化物配合歯磨剤によりチタンが侵襲されうるが,中性,アルカリ性,または弱酸性のフッ化物配合歯磨剤を利用する場合,侵襲の可能性は極めて低い,2)歯磨剤を利用しないブラッシングでもチタン表面が侵襲されていた.歯磨剤を利用するブラッシングでフッ化物の有無による侵襲の程度に差はない,3)チタン表面の侵襲の有無で,細菌の付着に差はなかった.フッ化物の利用により細菌の付着が抑制された報告も存在した,4)実際の口腔内では唾液の希釈作用でフッ化物濃度は低下するため侵襲の可能性は低い,5)フッ化物配合歯磨剤の利用により細菌の酸産生能が抑制されるため,チタンが侵襲されるpHにはなりにくくなる,6)酸性の飲食物によるpHの低下は短時間で回復したことがわかった.これらからフッ化物配合歯磨剤の利用を中止する利益はなく,中止によるう蝕リスクの増加が懸念される.
著者
石黒 梓 川村 和章 石田 直子 神谷 美也子 中向井 政子 晴佐久 悟 田浦 勝彦 広川 晃司 串田 守 荒川 勇喜 田中 元女 鈴木 幸江 荒川 浩久
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.190-195, 2017 (Released:2017-08-08)
参考文献数
22

健康日本21(第2次)に歯・口腔の健康目標が示され,歯・口腔の健康が健康寿命の延伸と健康格差の縮小に寄与することが期待されている.学校保健教育は生涯を通じた口腔保健の取り組みの土台をなすものである. 本研究では,今後の子どもたちの保健教育の改善を目的に,平成28年度に使用されている小学校から高等学校の学習指導要領,学習指導要領解説および学校で使用されているすべての保健学習用教科書を資料に,口腔関連の記載内容を調査し,「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」の歯科疾患の予防計画の学齢期の内容と照合した. 小学校では大半が「むし歯」と「歯周病」に関する原因と予防について記載されていたが,フッ化物応用,シーラント,定期的な歯科検診の記載はほとんどなかった.中学校では「むし歯」と「歯周病」の記載はほとんどなく,「口腔がん」や「歯と栄養素」,水道法基準として「フッ素」の記載に変化していた.高等学校になると「むし歯」に関する記載はまったくなく,「歯周病」や「口腔がん」の記載が中心であったが,歯口清掃に関する記載はなかった. 現在の小・中学校および高等学校で使用されている保健学習用教科書は,「歯科口腔保健の推進に関する基本事項」の学齢期に示されている保健指導,う蝕予防,歯周病予防に関連する記載内容は不十分であり,学習指導要領を見直すとともに,子どもの発達に応じた表現で収載することを提言する.
著者
石黒 梓 荒川 勇喜 田中 元女 鈴木 幸江 荒川 浩久 川村 和章 石田 直子 神谷 美也子 中向井 政子 晴佐久 悟 田浦 勝彦 広川 晃司 串田 守
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.190-195, 2017

<p> 健康日本21(第2次)に歯・口腔の健康目標が示され,歯・口腔の健康が健康寿命の延伸と健康格差の縮小に寄与することが期待されている.学校保健教育は生涯を通じた口腔保健の取り組みの土台をなすものである.</p><p> 本研究では,今後の子どもたちの保健教育の改善を目的に,平成28年度に使用されている小学校から高等学校の学習指導要領,学習指導要領解説および学校で使用されているすべての保健学習用教科書を資料に,口腔関連の記載内容を調査し,「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」の歯科疾患の予防計画の学齢期の内容と照合した.</p><p> 小学校では大半が「むし歯」と「歯周病」に関する原因と予防について記載されていたが,フッ化物応用,シーラント,定期的な歯科検診の記載はほとんどなかった.中学校では「むし歯」と「歯周病」の記載はほとんどなく,「口腔がん」や「歯と栄養素」,水道法基準として「フッ素」の記載に変化していた.高等学校になると「むし歯」に関する記載はまったくなく,「歯周病」や「口腔がん」の記載が中心であったが,歯口清掃に関する記載はなかった.</p><p> 現在の小・中学校および高等学校で使用されている保健学習用教科書は,「歯科口腔保健の推進に関する基本事項」の学齢期に示されている保健指導,う蝕予防,歯周病予防に関連する記載内容は不十分であり,学習指導要領を見直すとともに,子どもの発達に応じた表現で収載することを提言する.</p>
著者
晴佐久 悟 筒井 昭仁 境 憲治 劉 中憲 金崎 信夫 埴岡 隆 柏木 伸一郎 三島 公彦 鎮守 信弘 小川 孝二
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.122-131, 2004-04-30
被引用文献数
9

産業歯科健診に,口腔健康教育の効果および歯科保健意識と行動変容因子との関連性を検討した.事業所従業員208名に対し,口腔内診査後,歯肉辺縁部清掃技術,歯間部清掃用器其の使用法の指導,定期管理受診の説明を行い,介入前,直後,1ヵ月後,1年後に質問紙による調査を行った.歯肉近縁部を磨く認識のある者の割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,55,62%であり,介入前の35%と比較して有意に増加した.歯間部清掃用器其の使用割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,40,31%であり,介人前の24%と比較して,1ヵ月後には有意に増加したが,1年後では有意差は認められなかった.介入直後,歯科医院での定期管理受診希望者は87%であったが,1ヵ月後,定期管理受診者は15%であった.ロジスティック解析の結果,歯肉近縁部を磨く行動と歯肉近縁部を磨くという行動変容の定着には汁その部位を確実に磨く」という自信の因子が単独で関連した.歯間部清掃用器具を用いる行動では,「むし歯を予防できると思う」,「爽快感が感じられる」,「歯間ブラシ人手容易」が単独で関連した.口腔保健教育の目的とする行動変容の程度,それぞれの行動に影響を及ぼす要因について違いがみられた.このことから,変容を期待するそれぞれの行動に対する効果的な教育・指導内容を用いて,介入を行う必要性が示唆された.
著者
晴佐久 悟 筒井 昭仁 境 脩 西山 葉子 松鶴 さゆり 山根 奈々
出版者
福岡歯科大学学会
雑誌
福岡歯科大学学会雑誌 (ISSN:03850064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.141-149, 2001-12-30
被引用文献数
4

We investigated toothbrushing habits and toothpaste use, especially of fluoride toothpaste, of Japanese young children in Fukuoka. Parents of 767 young children aged between 1.5 and 4 years completed the questionnaire we distributed. The total response rate was 90.0%. The present findings were compared with those of a similar investigation in 1992. The findings were as follows: 1. Most young children brushed their teeth at least once a day assisted by their parents. 2. Few young children aged 1.5 years used toothpaste. About 65%-70% of young children aged 3 and 4 years used toothpaste. There was little change in these findings in 1992 and 2000. 3. Few children aged 1.5 years used fluoride toothpaste. About 50% of young children aged 3 and 4 years used fluoride toothpaste. The annual market share of fluoride toothpaste in Japan had increased from 39% in 1992 to 77% in 1999. It is still less however, than those of other highly developed countries. The percentage of young children who use fluoride toothpaste may be passive due to the little information available on the effects of fluoride toothpaste. Dentists, dental hygienists and other dental personnel should provide information fluoride toothpaste and strongly recommend its use among parents in Japan.