著者
山本 光夫 加藤 孝義 多部田 茂 北澤 大輔 藤野 正俊 小豆川 勝見 松尾 基之 田中 潔 道田 豊
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.243-255, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

東日本大震災後の沿岸環境変化の評価を目的とし,岩手県釜石湾において,海水中の栄養塩と重金属濃度,底質の放射性物質含有量に着目した海域環境調査を行った。栄養塩は冬期に高く夏期に低い傾向がみられ,震災前と必ずしも一致しなかった。これは湾口防波堤破壊による湾内環境変化の影響と考えられる。一方で重金属は津波の影響と予想される濃度変化はみられなかった。放射性物質も最大で 60 Bq/kg 以下と他の海域に比べ特に高い値ではない上に現在は減少傾向にあり,安全性の面で海域環境は震災前に戻りつつあることが示唆された。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

海底熱水鉱床開発の社会受容性に関してアンケート調査を行ない、非専門家は専門家より開発による波及的なリスクをより大きく感じていることなどを明らかにするとともに、環境影響と経済性を統合的に評価する指標を用いて許容しうる環境影響の大きさを求めた。また、環境リスクを専門家アンケートに基づいて定量化し、開発事業のリスクを定量的に分析した。さらに、リアルオプション分析により、意志決定の柔軟性を考慮した事業性評価が有効であることや、環境調査を早い段階で行い不確実性を減少させた場合のほうがより事業が継続する確率が高いことを示した。
著者
徳永 朋祥 片山 浩之 知花 武佳 福士 謙介 多部田 茂 原口 強 浅井 和見 松岡 達郎 井上 誠 秋山 知宏 茂木 勝郎 端 昭彦 甲斐荘 秀生 LUN SAMBO 後藤 宏樹 本宮 佑規
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

カンボジア王国のシエムリアップ市、バッタンバン市周辺を対象とし、地下水環境並びに地表水環境、地表水と地下水の関連について検討を行った。シエムリアップ市では、地下水と表流水との交流が比較的活発であり、また、地下水の利用も相対的に容易である一方、バッタンバン市周辺においては、表流水と地下水との交流は活発ではなく、地下水利用も一部の地域を除いてそれほど容易でない状況が見られた。このような違いは、両都市の地質学・地理学的位置づけに依存していることが考えられた。また、トンレサップ湖の堆積物を用いた古環境解析や水中に存在するウイルスの定量化に関する検討も実施し、成果を得た。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

海洋生態系における炭素や窒素の循環をシミュレーションするための生態系モデルを構築した。低次生態系の窒素循環を扱うときに広く用いられているKKYSモデルをベースとし、植物プランクトンの分解実験に基づいて構築されたPDP(Phytoplankton Decomposition Process)モデルを参考にして拡張した。構築した生態系モデルを海域の流れや成層を再現する物理モデルと結合し、人工湧昇流を対象とした実海域の計算を行って観測値との比較により再現性を確認した。その際、長期間の炭素収支の推定には、準難分解性有機物の分解に支配される物質循環が重要であることが示唆された。そこで、3次元モデル(短期モデル)では易分解性有機物の分解に支配される物質循環がほぼ定常になるまでの時間スケールの計算を行い、その結果を用いて鉛直1次元モデルで長期の炭素収支を計算することによって、対象海域における長期間の炭素収支を推定するスキームを構築した。海底マウンドによる人工湧昇流に関して炭素隔離量評価モデルを用いたシミュレーションを実施し、炭素/窒素比の鉛直プロファイルが準難分解性有機物の生成・分解の影響によって徐々に変化し,それに伴って大気一海洋間の炭素収支が変動することを示した。また、オホーツク海沿岸や沖ノ鳥島周辺海域など日本近海のいくつかの海域において、海域の特徴を考慮した生態系モデルを構築し、物質循環のシミュレーションを実施した。さらに、海域肥沃化技術を導入したときの社会経済的な影響を評価するために、水産物を考慮した食料経済モデルを開発した。それを用いた日本の将来の動物性タンパク源食料(肉類・水産物)の需給予測、および海域肥沃化による水産物増産がこれらの需給に与える影響の予測を行ない、日本の食糧自給率に及ぼす水産物の重要性を示した。