- 著者
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渡辺 秀文
鍵山 恒臣
大久保 修平
纐纈 一起
中田 節也
平林 順一
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
最初の山頂陥没に関連した周期約10秒の地震波およびカルデラ形成過程で繰り返し発生した周期50秒の長周期パルス波を解析し,前者は巨大な岩体の落下,後者は火道内熱水溜りの増圧により岩体がマグマ溜り間欠的にへ押し下げられるモデルで説明できることが分かった。また.三宅島島内に稠密地震観測網を設置し,島外で発生する地震の観測記録から,三宅島山頂から南山腹にかけて,マグマ溜りを示唆する強い地震波減衰域を見い出した.GPS観測データの解析により,陥没カルデラ形成以降の三宅島の収縮変動の原因として,マグマ溜りに含まれる火山ガスが山頂火口から放出されるのに伴い収縮するというモデルを提唱した.実際,2001年6月以降の収縮率の鈍化に対応し,火山ガス放出量も減少した.絶対重力測定連日観測を開始し,火道内マグマの昇降による重力変動シグナルを捉えた.特に,2001年10月頃から始まった顕著な重力増加の後,11月-12月頃に火映現象が観測された.火口南山腹での全磁力観測により,最近1年間火口地下の比較的浅い部分の温度が上昇しているが,2001年3月下旬〜4月には一時的に温度が低下したことを検知した.比抵抗構造調査により,海水面の深さに帯水層の存在を確認した.自然電位調査により,三宅島中腹付近で若干の変化を見出した.山頂火口からの二酸化硫黄放出量が徐々に低下し,現在は10000〜20000トンに減少していることを観測した.吸収液による火山ガス観測から,活動開始から2001年9月にかけて,マグマの上昇や火口直下の地下水の減少などに起因すると考えられるCl/S比の若干の増大が検知された.また,雲で散乱した太陽光を光源とする赤外吸収遠隔測定を実施し,HClとSO2の組成比0.05-0.1を得た.噴出物の古地磁気学的,堆積学的および岩石学的解析を行い,2000年8月18日の火山弾は600℃以上の高温で着地したこと,8月初旬までと8月中旬以降とでは噴火に関与したマグマの組成が異なることが分かった.