著者
大久保 直美 辻 俊明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.344-353, 2013 (Released:2013-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
12 34

チューリップの花の香りの質は,カンキツ様の香り,ハチミツ様の香り,青臭い香りなど,バラエティに富んでいる.そこで,チューリップの香りの質の多様性を化学的に明らかにするために,香りに特徴のある 51 品種のチューリップの香りを採取し,GC-MS を用いて解析した.チューリップの主要香気成分は,5 つのモノテルペノイド(ユーカリプトール,リナロール,d-リモネン,トランス-β-オシメン,α-ピネン),4 つのセスキテルペン(カリオフィレン,α-ファルネセン,ゲラニルアセトン,β-イオノン),6 つの芳香族化合物(アセトフェノン,ベンズアルデヒド,ベンジルアルコール,3,5-ジメトキシトルエン,サリチル酸メチル,2-フェニルエタノール),5 つの脂肪酸誘導体(デカナール,2-ヘキサナール,シス-3-ヘキサノール,シス-3-酢酸ヘキセニル,オクタナール)であった.主要香気成分の割合と生花の官能評価から,チューリップの香りは,アニス,シトラス,フルーティ,グリーン,ハーバル,ハーバル・ハニー,ロージィ,スパイシー,ウッディの 9 種類に分類された.
著者
大久保 直美
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.102-106, 2011-03-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
6

強い芳香を持つユリは,狭い空間に置くとにおいが充満するため,不快に感じられることがある.強い香りを持つ花の利用を広げるため,ユリ「カサブランカ」を用いて花の香りの抑制方法を検討した.「カサブランカ」の香気成分を分析した結果,不快臭を有する成分は芳香族化合物と考えられたことから,香気成分生成抑制剤としてフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL : phenylalanine ammonia-lyase)阻害剤を選択した. PAL阻害剤処理区において,香気成分量はコントロールの10〜20%程度となった.官能的にも,PAL阻害剤処理を行ったユリの香りは,無処理区に比べ弱まった.以上のことからPAL阻害剤は,「カサブランカ」の香りの抑制に利用できると考えられる.
著者
大久保 直美 鈴木 一典 近藤 雅俊 谷川 奈津 中山 真義 柴田 道夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.183-187, 2007 (Released:2007-04-23)
参考文献数
15

沖縄産ヒメサザンカ野生種13系統,芳香性ツバキの花粉親の一つであるヒメサザンカの系統1118(海外経由系統),芳香性ツバキ4品種の香気成分の比較を行った.ヒメサザンカの香気成分について,新たにリモネンおよび6種の芳香族化合物,安息香酸ベンジル,オイゲノール,サリチル酸メチル,o-アニス酸メチル,フェニルアセトアルデヒド,ベンズアルデヒドを同定した.沖縄産野生種13系統の香気成分量は,ほとんどのものが海外経由系統より多く,特に系統3と36が多かった.この二つを比較すると,花様の香調の2-フェニルエタノールやフェニルアセトアルデヒドの割合が多い系統36の香りの方が強く感じられた.ヒメサザンカを花粉親とする芳香性ツバキ‘姫の香’,‘港の曙’,‘春風’,‘フレグラントピンク’の香気成分の組成もヒメサザンカとほぼ同じであったが,組成比は品種ごとに大きく異なり,花様の香調を持つ成分の割合の多い‘姫の香’,‘港の曙’で香りが強く感じられた.
著者
大久保 直美
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.60-65, 2018 (Released:2018-06-22)
参考文献数
6

Oriental hybrid lily flowers have a nice fragrance. Especially in a confined space, however, the scent can be perceived as too strong and therefore unpleasant. Lilium cv. ‘Casa Blanca’, a typical oriental hybrid cultivar, has a large pure-white flower with strong smell. We clarified that the compounds responsible for the strong fragrance of ‘Casa Blanca’ are aromatics. We succeeded in decreasing the emissions of scent compounds and made the fragrance milder throughout the period of use as an ornamental by application of an inhibitor of PAL. Here I introduce the characteristics of floral scents, the scent suppression method of lily and the outline of development of fragrance suppressor for ornamental flower.
著者
大久保 直美
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.10, pp.55-63, 2010-12

11種のニオイゼラニウムの葉の発散香気成分をGC-MSで分析した。香気成分はほぼテルペノイドで構成され,主要香気成分は以下のとおりであった。ローズ(Pelargonium 'Rose'),スノーフレーク(P. 'Snowflake'),β-グアイエン,β-シトロネロール;レディプリマス(P. 'Lady Plymouth',ギ酸シトロネリル,β-シトロネロール;ドクターリビングストン(P. 'Dr. Livingston'),β-シトロネロール,イソメントン;スケルトンズユニーク(P. 'Skeleton's Unique'),β-グアイエン,β-カリオフィレン;ペパーミント(P. 'Peppermint'),チョコレートペパーミント(P. 'Chocolate Peppermint'),イソメントン,メントン;レモン(P.'Lemon'),ゲラニアール(α-シトラール),ネラール(β-シトラール);クロリンダ(P. 'Clorinda'),β-グアイエン,アロマデンドレン,ミセスキングスリー(P. 'Mrs. Kingsley'),β-グアイエン,ゲルマクレンD,スイートミモザ(P. 'Sweet Mimosa'),イソメントン,ゲルマクレンD。
著者
岸本 久太郎 中山 真義 八木 雅史 小野崎 隆 大久保 直美
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.175-181, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.
著者
大久保 直美 近藤 紫 平川 歩
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.34, pp.79, 2018

<p>一部の霊長類では,他個体の生んだアカンボウに接触する行動(infant handling: 以下IH)がみられる。私たちはボリビアリスザルのアカンボウの成長にともなう他個体との関わりの変化,特にIHについて明らかにするため本研究を行った。公益財団法人日本モンキーセンター内「リスザルの島」は広さ1500m2,シイ・カシ類などの常緑高木の森で,ボリビアリスザル(2018年5月現在16頭)が放飼されている。4家系あり,石垣島から来園した20才を超える個体から0才までさまざまな年齢の個体がいる。0才の個体,ハス(2016/7/18出生),オルガ(2017/6/16出生)について個体追跡を行い,接触個体,50cm以内の近接個体,授乳を連続記録,島内の位置(2m格子)を1分毎に記録した(10日間,計340分)。結果,アカンボウが乗っている個体は母から2~5才の個体へ移行していくこと,IHは家系に関わらず行うことがわかった。また,複数の0才個体がいる状況での他個体との関わりを明らかにするため,2017年生まれの3頭目が生まれた秋にハミル(2017/9/6出生)の個体追跡を行った(生後60日目,2017/11/5,計49分間)。結果,近接個体はハニワ(2017/8/13出生)が最も多く[観察時間の42.9%],ハニワとの近接時はハミルもハニワも他個体に乗っていなかったため,自発的に近接したと考えられる。乗っている個体はハロが最多であった[1分毎記録で16/49,他はハル・オメガ各1/49]。ハロはハス生後71日目の調査,オルガ生後59日目の調査でも最多だった個体である。ハロは2014年出生♂,ハミルと兄弟,ハス・ハニワといとこ,オルガとは別家系である。そこで,ハロの社会関係(成長したアカンボウやその母との関係)を明らかにするためハロの個体追跡調査を行っている(2018/5/3~)。5/6の調査の結果は,さまざまな個体と近接し,特に関係の多い個体はなかった。本研究はJST中高生の科学研究実践活動推進プログラム(~2017年度)の支援を受けた。</p>
著者
大久保 直美
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.10, pp.55-63, 2010-12

11種のニオイゼラニウムの葉の発散香気成分をGC-MSで分析した.香気成分はほぼテルペノイドで構成され,主要香気成分は以下のとおりであった.ローズ(Pelargonium 'Rose'),スノーフレーク(P.'Snowflake'),β-グアイエン,β-シトロネロール;レディプリマス(P.'Lady Plymouth' ,ギ酸シトロネリル,β-シトロネロール;ドクターリビングストン(P.'Dr.Livingston') ,β-シトロネロール,イソメントン:スケルトンズユニーク(P.'Skeleton's Unique'),β-グアイエン,β-カリオフィレン;ペパーミント(P.'Peppermint').チョコレートペパーミント(P.'Chocolate Peppermint'), イソメントン,メントン;レモン(P'Lemon'),ゲラニアール(α-シトラール),ネラール(β-シトラール);クロリンダ(P.'Clorinda' ),β-グアイエン,アロマデンドレン,ミセスキングスリー(P.'Mrs. Kingsley),β-グアイエン,ゲルマクレンD,スイートミモザ(P'Sweet Mimosa') .イソメントン,ゲルマクレンD.