著者
大久保 直美 鈴木 一典 近藤 雅俊 谷川 奈津 中山 真義 柴田 道夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.183-187, 2007 (Released:2007-04-23)
参考文献数
15

沖縄産ヒメサザンカ野生種13系統,芳香性ツバキの花粉親の一つであるヒメサザンカの系統1118(海外経由系統),芳香性ツバキ4品種の香気成分の比較を行った.ヒメサザンカの香気成分について,新たにリモネンおよび6種の芳香族化合物,安息香酸ベンジル,オイゲノール,サリチル酸メチル,o-アニス酸メチル,フェニルアセトアルデヒド,ベンズアルデヒドを同定した.沖縄産野生種13系統の香気成分量は,ほとんどのものが海外経由系統より多く,特に系統3と36が多かった.この二つを比較すると,花様の香調の2-フェニルエタノールやフェニルアセトアルデヒドの割合が多い系統36の香りの方が強く感じられた.ヒメサザンカを花粉親とする芳香性ツバキ‘姫の香’,‘港の曙’,‘春風’,‘フレグラントピンク’の香気成分の組成もヒメサザンカとほぼ同じであったが,組成比は品種ごとに大きく異なり,花様の香調を持つ成分の割合の多い‘姫の香’,‘港の曙’で香りが強く感じられた.
著者
小野崎 隆 池田 広 山口 隆 姫野 正己 天野 正之 柴田 道夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-16, 2002-04-01
被引用文献数
2 14

Burkholderia caryophylliにより発生するカーネーション萎凋細菌病は, 日本でのカーネーション栽培上最も重要で問題となっている病害である.カーネーション品種'スーパーゴールド'×強抵抗性野生種D. capitatusの種間雑種系統の中から, 強度の萎凋細菌病抵抗性を有する系統91B04-2を選抜し, 中間母本'カーネーション農1号'として品種登録した.'農1号'は定植から約3か月で開花する極早生性を示し, 調査期間中の全収量は11.5本/株と対照として供試したカーネーション3品種をいずれも上回る多収性を示した.フローサイトメトリーによる相対的な核DNA量の測定により, '農1号'は'スーパーゴールド'とD. capitatusの雑種であることが確認され, 二倍体と推定された.本系統は, 抵抗性育種素材として, カーネーションおよびダイアンサスの実用品種の育成に利用できる.
著者
田中 孝幸 水谷 高幸 柴田 道夫 谷川 奈津 Parks Clifford R.
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.464-468, 2005-11-15
被引用文献数
2

これまでに, ハルサザンカCamellia×vernalis T. Tanaka et al.は, 形態, 染色体およびアイソザイム分析からサザンカとヤブツバキ間の交雑により成立したと報告されている.ツバキ属の葉緑体DNAは, 他の被子植物と同様に, 細胞質(母系)遺伝をすることが示されており, ハルサザンカにサザンカの葉緑体が存在すれば, サザンカがこれらの雑種の種子親であると考えられる.atpI atpH遺伝子領域のPCR産物は, サザンカおよびハルサザンカではすべて約800bpの位置に, ヤブツバキでは約1200bpの位置に単一のバンドを示した.これらの結果は, 1)一次雑種と推定されたハルサザンカ'凱旋'の種子親はサザンカである, 2)ヤブツバキへの戻し交雑第一世代と考えられるハルサザンカ三倍体品種群の種子親は'凱旋'と考えられる, さらに, 3)戻し交雑第二世代と考えられる'笑顔型'四倍体品種群の種子親はハルサザンカ三倍体品種群に由来する, ことを示唆している.ハルサザンカは, 平戸島にある古木の樹齢および1630年に出版された本の記録'鷹の爪'などから判断して約400年前にその起源があると推定されている.したがって, 本研究の結果, ハルサザンカの種子親は400年前に遡ってサザンカであると示唆された.
著者
小野崎 隆 吉成 強 吉村 正久 八木 雅史 能岡 智 種谷 光春 柴田 道夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.363-367, 2006-12-15
被引用文献数
3

一重咲き,八重咲きの花型はカーネーションの重要形質の一つである.カーネーション連鎖地図作成に用いた集団を材料に,バルク法により一重咲き,八重咲きの形質に関与するRAPDマーカーを探索した.その結果,野生種Dianthus capitatus ssp. andrzejowskianus由来の劣性一重咲き遺伝子と連鎖する4つのRAPDマーカーが見いだされた.特に,同一のバンドパターンを示したOM19-800,AT90-1000,DT52-700は,一重の45個体で存在し八重の82個体で存在せず,一重八重の形質とマーカーバンドの有無が完全に一致し,一重咲き遺伝子に密に連鎖することが示された.これらのうちAT90-1000のSTS化に成功した.連鎖解析の結果,この一重咲き遺伝子は作成したカーネーション連鎖地図において第16連鎖群に座上することがわかった.得られたSTSマーカーの汎用性を検証するため,一重のカーネーション4品種からDNAを抽出してマーカーの有無を調べたが,4品種ともマーカーは存在せず,本分離集団以外への汎用性は認められなかった.