著者
大出 訓史 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.100, pp.55-60, 2009-06-18

視聴者満足度といった観点から音や音楽を評価する場合,その音が大きいか小さいかといった物理的な特徴量と,その結果としてどう思ったのかという聴取者の心理状態を評価する必要がある.本稿では,音の物理的な特徴量と聴取者の受け止め方という2つの観点から音や音楽を評価することを目的に,アンケート調査を実施し,「迫力のある」などの印象語に対するそれぞれの反意表現(「繊細な」や「騒々しい」)を抽出した.次に,これらの印象語を用いて評価実験を行った.対となる反意表現を変えると評価値も変わるが,どの印象が変わるかは音源に依存した.また,要因を分離するために,各印象を2次元で表記する検討も行った.従来から用いられる評価語対(「迫力のある-ものたりない」など)は,どちらの観点でも反対の意味の言葉が使われていることが多く,その評価値には,音の物理的な特徴量だけでなく,聴取者の受け止め方も含まれている可能性が高いことが分かった.
著者
大出 訓史 今井 篤 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.81-97, 2007
被引用文献数
1

日常生活の様々な体験において, その体験の素晴らしさを表現する言葉として, 『感動』という言葉がしばしば用いられる.感動とは, 『美しいものや素晴らしいことに接して強い印象を受け, 心を奪われること』 (大辞林 (松村1995)) であり, 体験に対する肯定的な評価であると共に, 記憶の定着や感情の喚起を伴った心理状態の大きな変化である.感動を喚起する対象としては, マスメディアが提供するドラマや映画, 音楽などの割合が高いとされている (三菱総合研究所2003).しかし, 感動という心理状態の定義については, 研究者の中でも曖昧である.<BR>我々の目的は, 放送番組の品質評価, 特に音の評価に, 『感動』をキーワードとした評価指標を導入するために, 感動という心理状態を明確にすることにある.まず, アンケート調査を実施し, 感動という言葉で表現される体験と, 感動を表現する言葉 (以下, 感動語) を収集した.次に, 感動語同士の一対比較による主観評価実験を行い, 感動語から連想される心理状態の類似度を求めた.他の感動語との類似度によって表現される類似度ベクトルの距離に基づいて, 感動語の分類を行った.その結果, 感情とは, 特定の感情そのものではなく, 大きく心が動かされたという体験に対して, 肯定的な印象を持っているという個々の心理状態の総称であり, 感動という心理状態が, 感動の対象と感情の種類, 感情の動きの組み合わせによって分類できることが分かった.
著者
大出訓史 今井 篤 安藤 彰男 谷口 高士
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1111-1121, 2009-03-15
被引用文献数
1

音楽や音響システムの評価に人の嗜好や感性を加えることを目的として,心に何らかの良さを強く感じたときに用いられる"感動"という観点から音を評価することを検討している.著者らは,これまでに心理実験によって感動を表現する言葉(以下,感動語)を分類し,"感動"に含まれる心理状態が一意ではないことを示した.本稿では,分類した感動語を感動評価尺度として,音楽聴取における"感動"を評価させた.その結果,楽曲によって感動評価尺度の評価の傾向は異なり,音楽によって喚起される感動にも種類があることが分かった.また,同じ楽曲を評価した場合に,「感動」を高く評価した実験参加者と低く評価した実験参加者では,音楽の持つ感情価測定尺度の評価値よりも感動評価尺度の評価値にグループ間で大きな差異がみられた.「感動」の評価値は,感動評価尺度の評価値の重み付き線形和で近似できた.Our main purpose was to evaluate acoustical reproduction system or musical broadcast programs from the viewpoint of not only impressions of them but also Kandoh, "emotional affect". Some impressionably pleasant or deeply moving experiences are expressed in Japanese by the term "Kandoh", which is generally accompanied by strong emotion. Words describing the experience of Kandoh were collected and classified. The various types of feelings were included in Kandoh categories. The Kandoh Evaluation Scale was made from these Kandoh categories. In this paper, participants listened to music, and then described their feelings using the Kandoh Evaluation Scale. The results showed different types of Kandoh were evoked by music. The Kandoh Evaluation Scale could explain more adequately than the conventional Affective Value Scale of Music the differences between participants who felt Kandoh or not. The evaluated value of Kandoh was approximately estimated by both the types of Kandoh category and the values of the Kandoh Evaluation Scale.
著者
大出 訓史 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J97-A, no.4, pp.323-331, 2014-04-01

近年,様々な音響再生方式が提案されており,評価手法の確立が求められている.著者らは,体験品質という観点から,体験の肯定的な評価に使われる“感動”という言葉に着目し,感動評価尺度を提案した.これまでに著者らが実施した音楽聴取実験の結果,感動の評価値が高い評価者群と低い評価者群の印象の差が,感動評価尺度では大きく,音楽の感情価では小さいことがわかった.これは,感動の要因となる印象が,音楽の感情価とは異なることを示唆する.そこで,本研究では,音楽聴取時の感動の要因を探るため,感動の度合いに応じて差が生じる音楽や音響の印象を調べた.まず,感動評価尺度の一般化を目的に,118名による評価実験に基づいて感動評価尺度の再構成を行い,次に,音楽や音色,音響機器の評価に用いられる評価語80語を用いた音楽聴取実験を行った.その結果,感動の度合いによる評価者間の印象の差は,「音色がよい」や「艶がある」などの音響の印象で大きいことがわかった.感動の種類によって相関の高い音楽や音響の印象が異なることから,音楽の印象と音響の印象の組み合わせによって感動が促進される可能性が示された.
著者
大出 訓史 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.71, pp.1-6, 2010-06-03

近年,臨場感という観点から映像・音響メディアの研究が行われている.臨場感という言葉は,再生品質の評価において「リアリティ」の同義語として用いられるが,現実場面では心を揺さぶる体験にも用いられ,その定義は定まっていない.臨場感の要因を探ることを目的に著者らが行ったアンケート調査の結果では,臨場感の定義として「目の前に」といった近さを挙げる例が多かった.本報告では,臨場感と近さの関係を調べるため,音源との距離を変えて音楽聴取実験を行った.その結果,生演奏という現実場面でも,演奏者に近づいて聴取することで臨場感が高まることが分かった.また,収音位置の異なる再生音を聴取した場合,臨場感は主観的な近さと相関は高かった.「迫力のある」,「はっきりした」,「動きの大きい」といった印象が高い場合に,再生音に対する臨場感の評価が生演奏を上回ることがあった.これらの結果より,忠実に再現されているかというよりも特定の印象が強調されているとき,臨場感が高く評価される可能性が示された.
著者
杉本 岳大 入江 健介 大出 訓史 中山 靖茂 渡辺 馨
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.10-3-1_-_10-3-2_, 2014

Downmixing method of 22.2 multichannel sound signal which can provide 2 channel stereo signal by way of 5.1 channel surround signal in receiver was investigated for 8K Super Hi-Vision broadcasting. Proposed downmixing methods were examined by subjective evaluation and the appropriate method was determined consequently.
著者
大出訓史 今井 篤 安藤 彰男 谷口 高士
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1111-1121, 2009-03-15

音楽や音響システムの評価に人の嗜好や感性を加えることを目的として,心に何らかの良さを強く感じたときに用いられる"感動"という観点から音を評価することを検討している.著者らは,これまでに心理実験によって感動を表現する言葉(以下,感動語)を分類し,"感動"に含まれる心理状態が一意ではないことを示した.本稿では,分類した感動語を感動評価尺度として,音楽聴取における"感動"を評価させた.その結果,楽曲によって感動評価尺度の評価の傾向は異なり,音楽によって喚起される感動にも種類があることが分かった.また,同じ楽曲を評価した場合に,「感動」を高く評価した実験参加者と低く評価した実験参加者では,音楽の持つ感情価測定尺度の評価値よりも感動評価尺度の評価値にグループ間で大きな差異がみられた.「感動」の評価値は,感動評価尺度の評価値の重み付き線形和で近似できた.