- 著者
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石川 圭介
江口 祐輔
植竹 勝治
田中 智夫
- 出版者
- Japanese Society of Animal Science
- 雑誌
- 日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.10, pp.J594-J604, 2001-10-25
- 被引用文献数
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本研究では,イノシシへの嫌悪刺激としてイヌを利用することが有効か否かを検証するため,イヌとイノシシの対面テストを行った.供試犬には1頭の警察犬と4頭の家庭犬を用い,供試猪には10ヵ月間飼育管理された約16カ月齢の個体6頭を用いた.対面は供試犬および供試猪を実験施設に馴致した後,1日3回,8:00~9:00,12:00~13:00,16:00~17:00の時間帯に行い,各供試犬を2日間で6頭すべての供試猪に対面させた,供試犬は供試猪との対面が始まると,対面前と比較して有意に供試猪の方に視線を向け(P<0.01),供試猪に向かって吠えて(P<0.05),警戒を示した.また,吠えの頻度には個体によって差がみられた(P<0.01).供試犬の供試猪に対する注視と吠えは,供試猪が走って逃げる直前の3秒に有意に多くみられ(それぞれ,P<0.05,P<0.01),この二つの行動が供試猪にとって嫌悪刺激となっていることが示唆された.本研究の結果,イノシシに対して回避反応を引き起こさせるイヌの行動は,視線を対象に向ける,対象に向かって発声するなどであったが,これらの行動はイヌによって個体差が大きかった.このことから,イヌをイノシシに対する嫌悪刺激として効果的に用いるためには,それに適したイヌの行動を見極め,行動に基づいて個体を選択する必要があると考えられた.